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危機

ここは宮廷騎士団の幹部候補生訓練所だ、騎士や魔導士の中でもエリートが通う国営の施設だった。


別に騎士団に入団するわけでは無いが、セキュリティのしっかりした国営の研修施設と言う事でここに通っている。


私はクラウディアに呼び出され、新人研修の名目で1週間ぐらい連続で聖女の役割や基本知識を叩きこまれていた。


(そう言えばキャサリンとウェンディも1週間の新人研修があったって言ってたっけ)


聖女が修得する魔法は治癒(ヒール)浄化(プリフィケーション)、あとは保護魔法(プロテクション)等がある、だけど私は全部使えない。


ソフィーとマイラは高レベルまで修得しているそうなので、本来なら私はスタートラインにすら立てないはずなのだ。


クラウディアの治癒(ヒール)は突出してレベルが違うらしい、勇者との模擬戦の時、体に穴が開いても治せると言った通り、体の欠損まで再生できるようだ。


(聖女の要求スペックって高くない?)


私は聖女見習いとしては落ちこぼれも良い所だ。


(攻撃魔法なら四大元素を全て使えるんだけどなあ……)


「お主研修の最終日なのに、だらけすぎじゃぞ、全然違う事を考えておったじゃろう」

「えーと魔物が活性化してるって話でしたっけ?」


「そうじゃ、200年前と同じ事が起きるかもしれぬ」

「200年前に何があったのですか?」


「当時の勇者と妾で魔物大群と、魔王の格付け(クラス)を持つ魔人と戦ったのじゃ」

「勝ったのですか?」


「勝ったとはい言えぬな、勇者と魔王は相打ちになって双方消滅したのじゃ、じゃが魔王を滅ぼす事はできぬ、長い年月をかけて復活するであろう」


「つまり、そろそろ復活しそうって事なのですね」

「そう言う事じゃな」


「それで優秀な人材を集めてたのですか?」

「その通りじゃ、お主たちと巡り会えたのは神の導きかもしれぬ……」


クラウディアは感慨深げにそう言った。


「もうこんな時間じゃな、これで研修は全て終わりじゃ、明日からは学業に励むが良い」


研修も終わりやっと解放された私は、クラウディアに一礼をして部屋を出た。


「さてと明日からまた忙しくなりそうじゃ」


クラウディアはそう呟くと椅子に深く腰かけた。


ふと、無人であるはずの室内に人の気配を感じる。


「誰かおるのか?」


人の形をした影のようなものが、スーっと実体化する。


クラウディアの前でリリスが実体化したのだ。


「サキュバスの女王(クイーン)か、久しいのう」


クラウディアはリリスを見てそう言った。


「200年ぶりくらいかしら」


「お主も変わらぬな」


「貴女はそろそろ限界みたいね」


「5年……いや4年くらいじゃろうて、それが妾の余命じゃ」


「人間はいつもそうやって、私を残して旅立って行くのね」


「古き良き友よ、辛気臭い話はやめにせぬか」


「そうね、200年ぶりに貴女に報告があるわ」


「逆に言えば200年もの間、妾には用がなかったと言う事じゃろ、お主の話はだいたい見当はついておる」


「ええそうね、貴女の考えている通りよ」


「ついに復活したか……」




施設を出て正門へ向かう、正門には帰りの馬車を待たせてあるからだ。


(さすがエリート様の施設は待遇が違うわね)


門番に帰宅する旨を告げると開門してくれた。


私が馬車に乗り込むと馬車はゆっくりと動き出す。


しばらくは室内のシートにもたれかかってウトウトしていたが、気が付くと周りはすっかり暗くなっていた。


馬車に掲げられた灯りで照らされた範囲しか見えない。


ふと違和感を感じた、いくらなんで暗すぎる、街ならば家の灯りが見えても良いはずだ。


どう考えても街と逆方向に向かっている。


「御者さん、道を間違えていませんか?」

「……」


「御者さん?」

「ちゃんと聞こえてるわ」


今度は返事があった、若い女の声だった。


「女の人なの?」

「そうよ」


「街に向かってもらいたいんだけど?」

「それは無理ね」


「どうして?」

「エリス・バリスタ、貴女は人質なの」


「私が人質?」

何を言っているのか理解できなかった。


「そう、貴女は聖女をおびき寄せるためのエサよ」


「どうして貴女はそんな事をするの?」

「私は人間じゃない、それが全ての答え」


魔王の先兵と言う所だろうか、割と危機的な状況かも知れない。


「大人しくしていれば命までは取らないわ、人質ですもの」


命は保障されるみたいなので、ちょっとだけ安心した。


どれだけの時間が経ったのだろうか、ようやく馬車は(つた)の絡まった古城についた。


こんな城があるなんて聞いた事が無かった、人里から遠く離れており、森の中の奥深くと言った立地なのでまだ発見されていない城なのかもしれない。


「降りなさい」


私は馬車を降りると、不気味な古城を見上げる。


「なんか、吸血鬼が住んでそうな城だわ」


「あら良くわかったわね、住んでるわよ吸血鬼」


「え?」


「私はリーゼロッテ・ドロッセル、この城の主」


「じゃあ貴女が……」


「そう吸血鬼よ」


雲の隙間から月明りが出て来たので彼女の容姿がはっきりとわかった。


銀色の髪に赤い目をしている、見た目高校生ぐらいの美少女だ。


ただ、リリスでさえ何百年も生きてるって言うぐらいだから、この美少女も数百歳なんだと思う。


城内に連行されて、部屋の一室に閉じ込められた。


ベッドや机、長椅子もあり、人質だと言う割に上等な部屋である。


「人質にしては随分良いお部屋ですわ」

「人質は丁寧に扱うわ……と言うのは建前だけど」


「この城に地下牢とかそんな設備は無いのよ、貴女を空き部屋に押し込むしか方法が無いわ」


「私をロープで縛ったりしないの?」

「吸血鬼を舐めないでくれる? いつでも殺せるもの、ロープで縛る必要が無いし面倒だわ」


彼女の態度は自信の現れなのだろう。


リーゼロッテが手の平を上に向けると、ポフンと言う擬音と共にコウモリが出現した。


「吸血コウモリのQちゃんよ、貴女の監視に置いていくわ」


Qちゃんはパタパタと羽ばたくと、ピタっと天井にくっついてそのまま動かなくなった。


「今日は大人しくしててね、食事はテーブル上に置いておいたから」


そう言うとリーゼロッテはドアをロックして出て行ってしまった。


私はテーブルの上にある食事をとる事にした。


カチカチの硬いパンと干し肉が皿の上に載っている。吸血鬼は人間の食事をしないので、人間用の食べ物をわざわざ用意したのだろう。


一般庶民レベルの食事はクリアしてるのだが貴族の食事にはちょっと物足りない。


私はアイテムボックスから熱々のスープを取り出すと、硬いパンと干し肉をスープに浸して食べた。


食事が終わると、アイテムボックスからデザートのお菓子とカットフルーツ取り出して、テーブルの上にずらりと並べる。


最後にティーセットを取り出し、お茶を入れると良い香りが部屋に漂う。


リリスに呼びかけてみたものの応答が無い。

なんらかの結界で妨害されている可能性がある。


夜は吸血鬼の活動時間だ、夜明けまでは大人しくしていよう。


私は腹をくくると、ベットにゴロンと横になる。

アイテムボックスから大量の本を取り出すと読書をして時間を潰す。


しばらく時間を忘れて本を読みふけっていた時、リーゼロッテの声がした。


「ねぇ貴女、寝ないの?」


キョロキョロと周りを見回し、あっそうだと思い出して天井を見上げる。


声の主はコウモリだった。

このコウモリ、リーゼロッテとの連絡役も兼ねてるらしい。


「もうすぐ夜が明けるわ」

「えっもうそんな時間なの?」


「あきれたわね、貴女、人質生活エンジョイしすぎじゃないかしら」

「意外と快適だったものでつい……」


「貴女もそろそろ寝なさい」

「わかったわよ」


よしチャンスだ、日が昇れば吸血鬼は活動を停止するはずだ。


(脱出方法を考えよう……考え……か…ん…)


そのまま私はぐっすり眠ってしまったらしい、目が覚めたら夜だった。


「しまったぁあああああ、寝過ごしたああああ!」

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