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進路

あれから数週間が過ぎたが、何も変わらない学園生活を過ごしている。

いつものようにお昼休みにシートを広げ、皆と昼食をとっていた。


「それで、3人は軍属になったと言う認識でいいのかしら」

とローラが訪ねて来た


「軍属と言っても卒業するまでは予備兵役よ」

とキャサリンが答える


「予備兵役って?」


「一般社会で普通に生活して、有事の際や訓練の時に召集されて軍務に服するって事なの」


「今のところ、呼び出されたのは新人研修の1週間だけね」


キャサリンやウェンディは騎士の家系だ、国家直属の騎士団所属となったので卒業後の進路と一致していたようだ。


私も本来なら魔道士団所属なのだろう、でも軍属なんて考えてなかったので、所属先は保留にしてもらっている。


もともと志願したわけじゃないし、私のせいで校長の首が飛ぶから従っているだけだし。


「卒業するまでは学生で居なさいって事なのよね」


「よかったわ、皆と離れ離れになるのは辛いもの……」

とローラは安堵した表情で言った。


しばらくは普通に学園生活が過ごせそうで何よりである。



そんなある日、クラウディア直々に呼び出された。


「進路で悩んでおるようじゃの」

「私は騎士の家系でも魔導士の家系でもないので、所属できるような機関はありませんわ」


「気にしすぎじゃな、家系にこだわった結果が質の低下じゃった、その反省もあって今は能力主義になっておる」

「それでも今なお、家系信仰は根強いですわ」


「家系だけで出世した上層部の影響じゃろ、妾より年下の癖に権力だけは持ってるからのう」


(そりゃまぁ230歳の聖女様に比べたら全員年下よね)


「さて、お主の配属先じゃが、魔道士団は既に定員を満たしていると聞いておる」


「じゃあ私はクビですね! 追放モノが今の流行ですわ、さぁご決断を」

「なんでそう追放されたがるかのう……」


「既にお主は、妾が面倒を見る事が決まっておるのじゃ」

「それは初耳ですが」


「エリス・バリスタ、本日をもって聖女見習いとして任命する」


「はいいいい!?」


「お主は妾の手元に置くのが良いと判断したのじゃ」


「せ……聖女おぉ?」


突然の事で頭の中が真っ白になった。


「慌てるでない、あくまで候補者の一人じゃ、候補者は他にも2名在籍しておる」


その時、ドアをノックする音がした。


「入って良いぞ」


「お呼びでしょうか、聖女様」


「うむ、皆に新しく聖女見習いとなった者を紹介するぞ」


入口から入って来たのは、どこか清楚を思わせる2人の若い女性だった。


「お主、(ほう)けていないで自己紹介せぬか」


「エ…エリス・バリスタです……ヨロシクオネガイシマス、ミナ=サン」

例によって棒読みの挨拶をしてしまった。


「聖女見習いのソフィー・シトリンです」


ソフィーは修道院出身で幼少の頃、治癒魔法に目覚めた時から、数多くの人々を救ってきたらしい。


それこそ魔力が尽きて気絶する事もあったと言う、その献身的な姿勢が評価され、彼女こそ聖女にふさわしいと推薦されたのだそうだ。


「シスターソフィーと呼ぶ人もいらっしゃいますが、今は修道院を離れた身です、ソフィーと呼び捨てにしてくださいね」


なんとなく神々しい雰囲気を(まと)っていた、聖女見習いってこのレベルの人じゃないと駄目なんじゃないだろうか。


「同じく聖女見習いのマイラ・フラトンです」


マイラは慈善事業を立ち上げて、多くの貧しい人々を救済してきたらしい。


国家を超えての支援を行った結果、他国でもその名が知れ渡り、国際的な集会でも何度か演説を行っている。


こちらはソフィーと違って、どちらかと言うと世渡り上手と言うイメージの方が強い。


おそらく国のお偉いさんから聖女見習いの枠に押し込まれた類だ。


「恐れながら聖女様、エリス・バリスタは聖女見習いに相応しくないのではないでしょうか」


マイラがクラウディアにそう進言した。


「何故そう思うのじゃ?」


「彼女には何の実績もありません」


「聖女を選ぶのは聖櫃(せいひつ)じゃ、選定の儀式で選ばれたものが聖女となる」


「心得ております」


聖櫃(せいひつ)ってあのランドセルよね、聖女に選ばられたら背負わされるんだろうか……)


女子高生が赤いランドセルを背負っている図とかマニアックすぎるだろう、そんな恰好で大衆の目に晒される事態だけは避けたい。


「しかし、大衆が納得しないでしょう、混乱を招くだけかと」


「マイラさんGJ(グッジョブ)! 私もマイラさんの意見に賛成です!」

私はマイラにサムズアップして意見に乗っかろうとした。


「お主は追放マニアか何かか? 普通、追放されない方向で必至になるものじゃぞ」


「このような者に聖女見習いなど……」


「資格が無ければ聖櫃(せいひつ)に選ばれぬ、それだけの話じゃな」


こうして拒否権の無い私はクラウディアの直轄の聖女見習いと配属されてしまったのだ。


「今日は顔合わせのために召集されただけじゃ、もう下がってよいぞ」


マイラがこちらを睨むように見ていた。


「貴女、聖女様にとんでもない無礼を働いたそうじゃない、私は貴女を絶対に認めないわ!」


マイラが私にそう言うと、クラウディアに一礼して退出して行った。


一方、ソフィーはと言うと


「わからない事がありましたらいつでも聞いてくださいね」


と私の手を取りそう言った、ソフィーは特に不満はないらしい。


「聖女様の御心のままに」

と言って、同じように礼をして退出して行く。


「やはりマイラでは無理かのう……」

とクラウディアが呟く


「何か問題でも?」

私は気になったので聞いてみる。


「お主の事が許せぬようでは聖女の資格から程遠い、おそらくお主の方が、マイラより選ばれる確率が上じゃと思うぞ」


「それは困りますわ」

マイラより私が上と言う、まさかの高評価だった。


「その時がくればわかるじゃろう」


そうなるとソフィーが唯一の希望だ、彼女にはなんとしても聖女になってもらいたい。

私は神様にお願いするのだった。


その姿を見たクラウディアは


「何を願っておるのかわからぬが、真剣に祈りを捧げる姿は聖女にふさわしいのう」


と言ってエリスの評価が更に上がったと言う。

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