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聖女様

新学期から1ヶ月が経った頃、リトの言葉使いもマトモになっていた。


既に隷属契約は解除済みだ。

朝の始業前、教室でリトと2人で立ち話をしている。


「ねぇ、エリス、私もちゃんと女の子できるようになったわ」

「言葉使いだけはね」


「最近は男の子の挑発もしてないわよ」

「最近はでしょう、まだ執行猶予期間中よ」


この1ヶ月、何回懲罰を発動した事か……

リトは最近になってやっと大人しくなったのだ。


ようやく私の努力が実ったらしい、最初の一週間は本当に苦労した。


「リト、貴女は男の子を誘惑するからサキュバスだって言われてるのよ」


「本物のサキュバスは別にいるのにね」


「サキュバスがどうかしたのかしら?」


突然後ろから声がした、振り返るとセシリアがそこに立っていた。


(いつの間に……噂をすればって奴かしら)


「ホームルームが始まるわよ、席に着きなさい」


セシリアに睨まれたので、私とリトはあわてて席に着く。

すぐにホームルームが始まった。


「今日は皆さんにとても重要な連絡事項があります」


「国からとても偉い人が学校の視察に来る予定です、くれぐれも粗相(そそう)のないようにお願いしますね」


セシリアがいくつかの連絡事項を伝えるとホームルームは終わった。


今日の最初の授業が始まる。

歴史専門の先生がこの国の歴史について解説を始めていた所だった。


隣の席のリトがツンツンと私の腕をつつく。

リトと小声で会話する。


『なに?』

『お腹が痛いの……』


(しょうがないなぁ……)


「先生! リトさんの体調が悪いので保健室に連れて行きます」


そう言って私は席を立つとリトの手を引き教室を出た。


「重そうね」

「エリスにボディブローされたレベルで痛いわ」

「前に鳩尾(みぞおち)に一撃入れたの、まだ根に持ってるの? あれは自業自得だからね」


リトに肩を貸し、ゆっくりと時間をかけつつ保健室にたどり着いた。


保健の先生に事情を話し、ベッドにリトを寝かせる。


リトの体調不良の原因は女の子の日だからである。


「私病気じゃなかったのね、さすが女の子の先輩だわ、頼りになる」

「まぁいつか来るとは思っていたけど」


「少し楽になったわ、付き添い有難う」

「しばらくそこで休んでなさい、私は教室に戻るから」

「うん」


保健室から教室に戻る途中、廊下で小学生ぐらいの女の子と出会った。

背中に赤いランドセルを背負っている。


見た目、10歳前後の女の子だった、妹と同じぐらいだろう。

私は違和感を覚える、この学校に小学生なんて居るはずがないのだ。


私の視線に気付いたのか、その女の子はトコトコと駆け寄ってきた


「そこの女子(おなご)(わらわ)は迷ってしまってのう、校長室まで案内せい」


可愛らしい外見の割に、やたら言葉使いが古めかしい。


「お嬢ちゃんは何歳かな?」

(よわい)210歳かの」


「そう10歳なんだ」

「その若さでもう耄碌(もうろく)しとるのか? 210歳と言っておろうが」


「え?だってランドセル背負ってるし」

「らんどせる? 何じゃそれは? 背負っているのは聖櫃(せいひつ)じゃぞ?」


(そうか、この世界にランドセルってなかったっけ)


箱型の形状のものに動物の皮が貼られており、リュックのように背負うためのベルトがついている。


真っ赤に着色されていて、どこからどう見てもランドセルだった。


聖櫃(せいひつ)は、契約の箱とも呼ばれておる聖遺物じゃ、聖女にしか所持が許されておらぬ故、触れてはならぬ」


「と言う事は、貴女は聖女様なのですか?」

「そうじゃ」


「210歳なのですか?」

「そうじゃ」


「合法ロリBBA(ババァ)キター」

「意味はわからぬが、失礼な事を言っておるのはわかるぞ」


「聖女様のお名前を伺っても宜しいでしょうか?」

「まずはお主から名乗るのが礼儀と言うものであろう」


「失礼しました聖女様、私はエリス・バリスタと申しますわ」

(わらわ)はクラウディア・フリートベルクじゃ、ちゃんとこの学校の教科書にも載っておるぞ」


そこで頭の中にプロフィールが流れ込む

(えっ? 攻略対象なの?)


「聖女様」

「なんじゃ?」


「年齢、サバ読んでません?」

「な…何でわかるのじゃ?」


プロフィールには230歳と書いてあるので、20歳ほど年齢を偽っている事になるのだ。


「まさかお主、ステータスが視えるのか?」

「いえそのような類のものでは……」


攻略キャラの年齢やスリーサイズがわかる程度だし、ステータスを視ると言うにはほど遠い。

それもごく限られた、数名の女の子限定なのだ。


「魔物の弱点とかわかったりせぬか?」

「さすがにそれは無理ですわ」


「そうか……魔物との戦闘に役立つスキル持ちなら、スカウトする所なのじゃが」


と残念そうに言う。

エロゲーの登場人物に戦闘向けのスキルを期待しても無理な話だ。


「校長室へ行きたいのでしたわね、こちらへどうぞ」


私は聖女様を校長室へと案内してあげだのだった。

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