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帰還

気がついた時には、私は一糸まとわぬ姿で立っていた。


「お迎えに上がりましたご主人様」


正面にリーゼロッテ、その隣にはリリスが立っている。


「会いたかったわよハニー」


空気の読めないファドセルが横から突っ込んできたので身を(かわ)して足を引っかけると、そのまま地面に顔面から突っ込んでスライディングして行く。


(ファドセル、あなた200年経っても額に肉って描いてあるのね)


長寿と言われる魔族の姿はあの時のまま変わらない、でもそこには人間の姿が無かった。


リリスの視線が少しキツイ。


「あのーリリス、怒ってます?」

「ええ怒っているわ、死ぬなって言ったでしょう」


リリスは少し涙ぐんでいた。


「約束守れなくてごめんなさい」

「もう心配かけちゃだめよ」


「わかってる……」


一体、どれくらいの年月が過ぎたのだろう、聞くのは怖いけど避けて通れない話題だ。


「ねぇリリリス、あれからどれくらいの年月が過ぎたの?」


私は少しとまどいながら聞いた。


「年月なんて経ってないわよ」

「え?」


「説明が必要かしら?」


私は無言で(うなず)く。


「マリーが貴女のバックアップなのよ」

「どういう事?」


リリスの説明によるとマリーの中にある聖女の力は、エリス・バリスタの魂の一部なので、私が消滅したとしてもエリス・バリスタの存在そのものは健在だと言う。


髪の毛1本すら残らなかったとしてもマリーの魂の方から肉体が再構成されると教えてくれた。


200年かかるどころか拡散した魔力を吸収してあっと言う間に肉体を再構成したらしい。


「よかった…… 本当によかった、また皆に会えるのね」


気が付くと私は涙を流していた。


「今回はたまたまなのよ、貴女が完全に消滅して肉体を得るまで200年かかる未来もあり得た、だから自分のやった事はちゃんと反省なさい」


そう言ってリリスは私を抱きしめてくれた。


私がひとしきり泣いて落ち着いた頃。


「ねぇ気がついてる? 貴女、前と比べて変わってるのよ」


とリリスが悪戯っぽく笑う。


「え何か変な所あった? 胸が小さくなったとか……」

「これを見せた方が早いわね」


リリスがそう言うと私のプロフィールを表示してくれた。


私は職業欄に釘付けになる


職業:聖魔王


「貴女は魔王の魂から魔王の称号と魔力を受け継いだみたいね」

「どうりで魔力総量が500万ほど増えていておかしいと思ったのよ」


今の私は魔力総量が853万になっているのだ。


「不老不死の力を取り込んだ時に、魔王の力の欠片(カケラ)まで取り込んだのね、そして魔王の魂が消滅した時、力の所有権が貴女に移ったと考えられるわ」


「じゃあ今の私は魔王なの?」

「魔王でもあり、そうでもないとも言えるわ、聖女と魔王の両方の力を併せ持っている」


「貴女の(クラス)も更新されてるから変身すると……」


「ご主人様、そろそろ戻りましょう、皆さんが心配しています」


話が長くなりそうなのでリーゼロッテが横やりを入れる。


「それもそうね、続きは戻ってからね」


全裸のまま戻るわけにはいかないので、リーゼロッテに服を持ってきてもらった。


「第一聖女様から新しい聖女の服だって言われて持って来たんですけど」


私は新しい聖女の服を着用して驚く、スカートはミニスカートになっていて上着はヘソ出しルックだ、どう考えても清らかな聖女とは、ほど遠いイメージの服である。


「どうせ切り裂くなら最初から短いの着ろって言ってましたぁ」


私は頭をかかえた、そう言えばこの世界に清楚な服装って言う概念なかったんだ、エロゲーだものね。



街に転移するとすぐにクラウディアの部屋を訪ねた。


「おお、無事じゃったか」


とクラウディアは喜びの表情を浮かべる。


「いえ、今まで死んでましたけど無事です」


クラウディアに今までの経緯を報告した。


「こちらに向かって侵攻していた軍勢はどうなりました?」

「ふむ、魔王が消滅してから、その動きはピタリと止まっておる」


チラリと私の方を見た。


「おそらく魔王(エリス)の命令待ちで待機しておるんじゃろうな」

「私の?」


「試しに命令してみてはどうじゃ?」

「どうやって!?」




『全軍撤退!!』


魔王軍の上空に待機しているQちゃん映像を確認すると前線や後方を含めて数百万の大軍は反転して引き潮のように撤退して行く。


無茶振りされてから30分ぐらい試行錯誤してやっと成功した。


「どうじゃった?」

「とりあえず撤退してくれました」


「ひとまずは安心してよさそうじゃな」


そんな時、夜通しの戦闘で空が白み始めていた。


「もうすぐ夜明けかぁ」


魔王討伐の知らせが届けば、第二都市に避難している人達も徐々に帰還するだろう。


その頃には再びこの街に活気が戻ってるはずだ。


翌日、前線で戦っていた軍の部隊が帰還した。その中にエヴァも混じっているので出迎える。


「お帰りなさい、エヴァちゃん」

「どうして私だけ置いて行かれたんですか?」


キャサリンやファドセル、ウェンディはリーゼロッテの転移によってすぐに帰還していたのである、そして前線に取り残されたのはエヴァだけだった。


「あ、その件につきまして色々と事情がありまして……」

「あー逃げる気だったんですね」


「いえいえ、そんな事は考えてま…… した、ごめんなさい」

「問答無用です!!!禁域(クラウズーラ)


「こんな人前でいきなり」

「さあ戦いましょう」


私は教会から討伐対象に指定されている、これから毎日教会から追い回される日々が続くかと思うと気が重い。


「ハァ」


とタメ息をつく。


「仕方ないわね、へ・ん・し・ん!!」


私が変身するとエヴァがその場に立ち尽くしていた。


変身によって薄紫の髪の色が金色の髪に変化し、瞳の色も金色の瞳になった。


以前のような銀色の髪に赤い目と言う魔族の外見的特徴は、きれいさっぱり消えている。


私はリリスの言葉を思い出す。


『貴女の(クラス)も更新されてるから変身すると……』


と言っていた。


つまり、(クラス)が更新されたからこの姿ってわけなのね。


それにしてもエヴァの反応が変だ。


「し……」


エヴァが何か言おうとしている。


「使徒様……」

「使徒って何?」


「神の使いよ」


(えーと前世で言う天使って事でいいのかな)


「困ったわ」

「何かお困りのようで」


「その姿の貴女を討伐するわけにはいかないもの」

「じゃあ、無罪放免と言う事にしてもらえると嬉しいな」


「かと言って野放しにはできないわ、討伐はしばらく保留、私が直々に貴女を監視します」


(それって今までと変わらないわよね)


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