決着
「ご主人様、大丈夫ですか!!」
復活したリーゼロッテが私の隣に転移してきた。
「丁度良かったわ、マリーを連れて逃げなさい」
「かしこまりました、安全な場所に転移させたらすぐに戻りますので」
「戻らなくていい」
「しかしご主人様をこのまま放ってはおけません」
「リーゼロッテ、貴女にはマリーの護衛を命じます、片時も離れないように」
「でも…… 了解しました」
リーゼロッテは渋々引き下がり、マリーの元へ向かう。
「能力向上」
振り返るとそこにはリリスが居た。
「言ったでしょ、私にできる事は補助ぐらいだって」
「ありがとう」
「死なないでね」
「うん、行ってくる」
そう言うとリリスの前に居る私の姿は揺らいで消えた。
「エリス、もう私の能力では貴女の動き、補足できなくなってるのね」
と残されたリリスは呟いた。
吹き飛ばされた魔王は立ち上がる、当然ダメージなと無い。
「おのれ、よくも許さんぞ」
烈火のごとく怒り狂っていた。
「こんな所に飛ばされていたのね」
声のした方向へ視線を移すと、そこにはエリス・バリスタが立っていた。
「わざわざ死にに来たかぁ」
魔王は拳をふりかぶり、エリスに襲いかかる。
ドンと言う大きな音、まるで爆発があったかのようだ。
魔王の拳の風圧で地面がめくれた。
だがエリスは片手の手の平を前に出して、ピタリと拳を打止めていた。
「片手だと!!」
エリスは無傷だった、魔王は信じられないと言う表情をする。
「じゃあ私の番ね」
エリスは魔王に向かって拳で攻撃をする。
魔王は甘く見ていた、避ける必要も無いと。
しかし、エリスの攻撃がヒットした瞬間、とてつもない衝撃が魔王を襲う。
魔王は水蒸気を纏ってものすごい速度で飛ばされた、バリバリバリと言う空気を引き裂く音が遅れて聞こえる。
魔王は音より早いスピードで吹き飛ばされたのである。
ドンと言う音と振動、魔王は地面にクレーターを作ってめり込んだ。
大量の土砂が舞い上がり、上から降って来る。
「これだけやってもノーダメージなんだから、その魔術刻印は反則よね」
落下地点には既にエリスが追いついていた。
魔王はエリスを睨みつける。
「化け物め!!」
「失礼ね! ちょっと拳に攻撃魔法を上乗せしただけなのに」
魔術刻印がある限り魔王にダメージは無い。
魔術刻印についてはある仮説を立てていた。
魔王が最初に魔術刻印を発動した時は両腕のみだった、何故最初から全身に魔術刻印を発動しなかったのだろう。
たぶん魔術刻印には制約がある、おそらく燃費が悪いのだ。全身に魔術刻印を発動すると長時間持たない、だから最初は両手で済まそうとしていた。
そして攻撃を受ければ受けるほど魔力を消費するから、更に持続時間が短くなるはずだ。
ならば攻撃あるのみ!!
「ガルツ・ヒュベインタール!!」
「エリス・バリスタ!!」
お互いの名を叫んで拳が交差する、結果は相打ちで両者吹き飛ぶ。
激しい攻防が幾度と無く繰り返され、ついに『その時』がやってくる。
私は腕で魔王の攻撃をガードしつつ脚を鳩尾に叩き込んだ。
「脚だとぉ」
ごめんね、脚にも攻撃魔法乗せられるんだ。
吹き飛ばされ、クレーターから立ち上がった魔王は体から煙が上がっていて、魔術刻印は消滅していた。
「勝機」
私は魔王との距離を詰めつつ時間を停止した。
「無駄だ」
「知ってるわ」
敵が時間停止を使った場合、カウンターとして同じ時間停止を消費して動けるようになる、要は強制的に時間停止が消費されるのだ。
「時間停止強制解除」
「貴様、何を……」
私の不可解な行動に魔王は首をかしげる。
「時間停止!!」
「バカなっ」
連続の時間停止、魔王の時間停止は使い切っているので動けない。
次に魔王が見た光景は、私が魔王の心臓にナイフを突き立てている姿だった。
「フッ……フハハハハ、馬鹿めそんな攻撃痛くも痒くもない」
そう体の再生機能を持ち、不老不死の化け物である魔王にナイフなんて通じるはずも無い。
私でさえマイラに心臓を貫かれて死ななかったからね。
◇ ◇ ◇
ある日私は夢を見ていた。
「力が欲しいか? 力が欲しければ……おごっ」
私は聖櫃を蹴り飛ばす。
「またこの夢なの、いい加減しつこい」
「お嬢ちゃん、年寄りは大切にするものじゃよ」
鼻血をふきながら老人の姿で再登場した。
「貴方、ビジュアルだけ年寄りで人間でもなんでも無いじゃない」
「お主にこれを授けよう」
銀色の装飾されたナイフを渡された。
「これは……見覚えがあるわ」
「さようこれは神器じゃ」
マリーに聖女の力を譲り渡した時に使った神器だった。
「お主の親友は成長して命の心配はもう無い、この神器を使えば聖女の力を再び取り戻せるであろう」
「嫌よ、親友の力を奪うなんてできないもの」
「聖女の道を捨てるのか、それもひとつの選択じゃな、だが神器はお主に託す、必要となった時に使うが良い」
目が覚めた時にはその神器を手に持っていた。
「いつの間に……」
その日を境にぱったりとその夢を見なくなった。
◇ ◇ ◇
「フッ……フハハハハ、馬鹿めそんな攻撃痛くも痒くもない」
私はナイフを引き抜くと数歩下がって魔王と対峙する。
「でしょうね、これは武器じゃないもの」
「何を言っているのだ?」
神器を私の胸に当てると、体が淡い光に包まれる。
「貴方の魂から不老不死の力を切り取ったわ、貴方はもう不老不死じゃない」
「何を突然、戯言を」
「貴方の力は私の中に取り込んだ、今は私が不老不死なのよ」
魔王と私を囲むように円状に30個の巨大な光球が出現、徐々に圧縮され行く。
「その光球、高位爆裂魔法か!! 貴様それだけの数一度に発動させたらどうなるかわかってるのか」
「貴方も私も消滅するでしょうね」
「死ぬなら貴様だけ死ね、俺はここから脱出する」
「させないわ」
魔王気が付いた時にはワイヤーでぐるぐる巻きにされていた。
エリスが時間停止を行使したのである。
「なんだこれは」
「『アトラク=ナクアの糸』です、それに加えて私が拘束を重ね掛けしました」
魔王はバインドをレジストしていくつか無効化しているものの、私がそれを上回るスピードで拘束を並列処理で重ね掛けしているから動けないのだ。
私がこの場から離れたら魔王を逃がしてしまう、だから逃げるわけにはいかなかった。
「貴様あああああ」
「終わりです、魔王、不死ではない貴方はここで消える」
(私も不死になったとは言え、復活するのは200年後ぐらいかな…… 人間とお友達とはここでお別れなのね……)
気が付いたら頬を涙が伝ってこぼれ落ちていた。
やがて光球は限界を迎え、爆発を起こし、巨大なキノコ雲が立ち上った。




