野営
前線は都市から120キロぐらい離れていて、私達が到着したのは、ほぼ日没の頃だった。
それぞれ3つの部隊に分かれており、私達は中央の主力部隊に組み込まれる。
野営のベースキャンプで荷物を降ろして一息ついた。
「すっかり薄暗くなったわね、そろそろ夕飯にしましょうか」
「話が違うんですけど!!」
私の隣でエヴァが騒いでいる。
テントの隣には折り畳み式の木製のテーブルと椅子が並んでいた、私はアイテムボックスからランチセットを取り出してテーブルに並べる。
「私が前線に行くって行ったらついてきたのは貴女でしょ」
ちなみにエヴァは無理矢理連れてきたわけでは無い。
「当たり前でしょ、私には監視する役目があるよ、ついて行かないなんて選択肢は無いわ」
「だったら双方の合意じゃない」
「私が戦力に入っているのが想定外だって言ってるのよ」
「マスターお腹が空きました」
「そううね、みんな席に着いて」
「ちょっとー私の話聞いてます?」
「お腹が空くと怒りっぽくなるものよ、食べ終わってから話そうね」
「では頂きま……」
「待ちなさい!!」
食事を始めようとしたらエヴァに制止された。
「まずはお祈りでしょ」
(あ、そっちの方で制止したのね)
「そ…… そうだったわね、ねぇキャサリン、エヴァと一緒に食事をする時はお祈りを捧げるらしいのよ、終わるまで待っていて」
「了解しましたマスター」
「天にまします我が聖父よ……」
ここからだいたい2分半ぐらいかかるのよね。
よく覚えられるなぁと毎回関心している。
「主の御恵みに感謝し、この賜物を祝福し給え」
最後の一文を言い終わると、エヴァは『親指を立てて』地面に向ける。
前世だと『地獄に落ちろ!!』のサインなんだけど、ここでは信仰上感謝を表す動作なんだってさ。
エヴァに続いて私とキャサリンも同じ動作をする。
(なんか神様に対してこれやると、背徳感がすごいよね)
「さぁ食べましょう」
「貴女達、感謝しなさいよね」
「何が?」
「何がって、私が直々に祈りを捧げてるんだから」
「確か食事に祝福の効果があるんだっけ?」
「そうよ、毒が入っていても浄化して無毒化するし、疲労回復に加えてちょっぴりステータスアップ効果もあるのよ」
「さすが教会トップレベルの術者」
教会の神父も祈りを捧げる事はできるが、疲労回復程度で毒の無毒化までは至らない、エヴァの能力が突出しているのがわかる。
「いただきます」
そう言って皆、一斉に食べ始めた。
エヴァはさっきまでカリカリしてたが、食事をしたらだいぶ落ち着いたようだ。
「やっぱりお腹が空くと怒りっぽくなるのよ」
「そ……そうなのかしら」
と納得しかかってたけど、祝福された食事のせいで鎮静効果があらわれてるだけなのよねぇ、本人は気付いてないみたいだけど。
「それでさっきの話なんだけど、エヴァちゃんはどうしたい?」
「私は貴女を監視するだけ、それ以外の事に興味はありません」
「本当に?」
「ええそうよ」
ちなみにエヴァは結界だけじゃなく、プロテクションもヒールも使えるのだ。
さすがに聖女のように体の欠損までは再生できないが、盾としての役目は充分にできる。
「じゃあ、目の前で兵士が魔物に襲われそうになったらどうする?」
「プロテクションかけるわよ」
「兵士が傷ついたら?」
「ヒールするわよ」
「えーと私達に味方しないんじゃ……」
「エリスにだけ味方しないって言ってるの、兵士には罪が無いんだから放っておけるわけ無いでしょう」
(この娘、ツンデレなのかしら)
「わかったわ、エヴァちゃんの判断に任せるから、エヴァちゃんは好きなように動きなさい」
「言われなくてもそうします」
「ごちそうさまでした!!」
「「早っ」」
黙々と食べていたキャサリンが食べ終わった。
「体が軽いです」
腕をブンブンとふりまわして好調ぶりをアピールする、さっそく祝福の効果が出たようだ。
それからしばらくして、私とエヴァも食べ終わったのでお茶の時間にする。
アイテムボックスからティーセットを取り出し、お菓子をテーブルに並べた。
「マスターと一緒に居ると物資が豊富なので有難いですね」
キャサリンは学園の頃から一緒だったので驚かないが、エヴァは驚いている。
「エリス、貴女のアイテムボックスどうなってるのよ」
調理済みの温かい食事が出てきたり、熱々のティーセットがお菓子と一緒にまるごと出てきたり、通常では考えられない事だ。
「どうなってるといわれても、本人も良くわからないで使ってるので」
「貴女って規格外よね」
「良く言われます」
そんな会話をしなから、食後のお茶をゆっくりと楽しんでいる時だった。
「敵襲!!」
遠くで兵士の叫ぶ声がした。




