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会談

エヴァと朝食を済ませ、二人でクラウディアの元へ向かった。


勇者ギルベルトと聖女クラウディアは稼働している軍の施設に宿泊している。


私はクラウディアの部屋の前まで行くとノックをした。


「エリスです」


「うむ入るが良い」


ガチャリとドアを開けて部屋に入ると、ソフィーと話をしている最中だった。


「すまんのう、ソフィーとの話もすぐ終わるのでな、そこに座って待っておれ」

「はい」


クラウディアは再びソフィーとの会話を続ける。


「私も避難しなければならないのですか」

「うむ、逃げ遅れた一般市民を第二都市ゴルシに移す事になったのじゃ、ソフィーお主も同行して欲しい」


「でも私が避難した後、残った方が怪我でもされたりしたら」

「何でも一人で背負い込む癖は直っておらんな、軍にも医療スタッフはおるぞ、それに妾もおる」


「ですが……」

「ソフィーには避難民の護衛及び救護の役割も持たせておる」


ソフィーはプロテクションや回復魔法が使える、避難民の保護や怪我の治療役としてはうってつけだろう。


「それとも避難民をそのまま行かせるつもりか?」


どうやらクラウディアはソフィーを危険から遠ざけたい意図があるようだ、勿論ソフィーもその事にも気付いている。


「かしこまりました第一聖女様、その役目お引き受けいたします」


「うむ、話はい以上じゃ下がってよいぞ」


ソフィーはクラウディアに一礼すると、くるりと向きを変えた。


私の前まで歩いてくるとソフィーは丁寧なお辞儀をする。


「第二聖女様を探しておられる方がおりましたのでお伝えしようかと」

「誰かしら」


「マリー・カトラリと名乗っておりました」

「マリーったらまだ避難してなかったのね」


「避難所に居るはずですので、後でお越しください」

「わかったわ」


「それにしても第二聖女様のご活躍は、皆から伺っております」


(んー何の事だろう)


変身して戦ったとか一般には知られていないはずだ。


「第二聖女様自ら避難所をお手伝いしたと評判でございました」


(あーあれか、炊き出しを手伝った時の)


「お礼を言われるほど手伝ってないのよ」


実際、エヴァとばったり会った時に手伝いを抜けている。


「食材まで寄付していただいたとか、皆が口々に感謝の言葉を述べています」


「アイテムボックスの備蓄を解放したのも、たまたま持ってた物を提供しただけだし」


「果実等の新鮮な食材は貴重なので皆喜んでおりました」


一般の人が使えるアイテムボックスは日数が経過すると鮮度が落ちるのだが、私のアイテムボックスは鮮度が落ちないのだ。


「私のアイテムボックスは時間が止まるから鮮度が落ちないだけなのよ」


その場に居た人たちが、えっと言う表情をする。


その時、横からクラウディアが話しかけて来た、


「エリスお主、時間操作系の魔法が使えたのじゃな」


「えっ?」


今度はこっちがえっとなった。




ソフィーが退出した後、エヴァと私はクラウディアと向い合せでソファーに座る。


「久しいのう、教皇殿」

「だ……誰かと勘違いしてませんか」


「何を言っておるのじゃ? 妾とは面識があるじゃろ」

「うう……」


「お主の(まと)っている法衣、金の刺繍(ししゅう)がはいっておるじゃろ、その意味も知らんで着ているとはな」

「えっこれて意味あったの?」


「私は教皇ですって書いてあるようなものじゃぞ」

「…… 私がここに居るのは内密にお願いします……」

「わかっておる」


私達はクラウディアに今までの経緯を説明した。


「なるほど、教会とは協力体制にあると思って良いのじゃな」

「これはあくまで一時的な処置です」


「なんにせよ、今は互いに相手を利用すれば良い、その方が都合が良いのじゃろ?」

「その通りです」


「さっそくだが人材を貸してはくれぬか?」

「どのような者をご希望ですか?」


「戦える者を貸してほしい、避難民の護衛につけたい」

「わかりました、暗部のカール・フィッシャーを派遣しましょう」


「感謝する」


名前が上がったのはカール神父と呼ばれていたあの人である。


「彼の正体は明かせませんが、奉仕活動をする神父と言う事で同行させれば、教会の評判も上がるでしょう」


「そう言う所は抜かりは無いのだな」


「後は…… お互いの情報共有もしましょう、前線の状況も知りたいので」


クラウディアは前線の様子を、エヴァは魔王の勢力圏や兵站について情報を提供した。


上位魔人は魔力供給だけで食事はしなくて良いのだが、格の低い魔物となると食事が必要になる。


主に人や家畜を襲っているとの事だった、街や村が次々と壊滅してるらしい。


それでも足りないので野生の動物等も襲う、それこそ動く物はなんでも食べていて、バッタの大軍でさえ食べられて全滅したと言う。


極めつけは戦闘で死んだら食料と言うルールだ、大量の死者を出しても食料が増えたと言う程度の認識らしい。


魔物は人間とは価値観が違うので、人間には理解できない側面を持っているのだ。


先日の戦闘でも大量の死者を出しているはずだ、つまり潤沢な食料を確保したと言う事になる。


「予想より早く立て直して来るかもしれませんね」


と私は呟く。


「そうじゃの、なんにせよ警戒を怠らぬ事じゃな」


エヴァとクラウディアは定期的に連絡を取るよう、取り決めをして会談は終了した。


「そう言えば第一聖女様」

「なんじゃエリス」


「私に時間操作系の魔法が使えると言う事は、時間停止能力があると言う事でしょうか?」

「実際にアイテムボックスの時間が止まっているじゃろ」


「そうなのですが、私が魔王やリーゼロッテのように時間停止を使えると?」

「そうなるな」


「やり方がわかりません」

「アイテムボックスの時間はどうやって停止させておるのじゃ」


「アイテムボックスってそう言うものじゃないんですか?」

「無意識でやっておるのか、そう言うものだと言う思い込みによる発動なのじゃな」


「そんな感じです」

「ならば時間を止められるのは当たり前と思い込めば良い」


「そう言われても……」

「お主の意識が邪魔をしておるからアイテムボックスの外で発動せんのじゃよ」


こればっかりはどうしようもない、現代知識が邪魔をしている。


時間を遅らせるにはとんでもない重力とか、とんでもないスピードが必要と言うのが定説だ、まして時間を止めるなどどう考えても無理だろう。


いや魔法をポンポン発動している私が現代知識を持ち出すのも変だけど。


「わかりました努力してみます」


そう言って私達はクラウディアの部屋を後にした。

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