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新学期

クラスに戻ってしばらくすると、担任のセシリアが入って来た。


「皆さんに悲しいお知らせがあります」


「この春休み中に、タカポン君が急病のため、お亡くなりになりました」


と悲しそうな表情をしつつ生徒に伝えた。


2年生になって新しく編成されたクラスなので、全員が彼を知っているわけでは無かった。


タカポンって誰?と言う反応と、マジか?と言う反応にわかれる。


「天に召された魂の平穏を祈り、皆で黙祷(もくとう)を捧げましょう」


クラスメイト死亡と言うショッキングなニュースでザワついていてた教室に静寂が訪れる。


「……」


「……」


「黙祷を終わります」


再びザワつき始めるが、セシリアが制止した。


「連絡事項はまだありますから静かに!」

「今日は転校生を紹介します、入りなさい」


私が入口を見ると、リトが入って来た。


「自己紹介をしなさい、まずは名前から」

()……」


懲罰(パニッシュ)!)

「はうっ」


私は隷属魔法により従者に懲罰を与える事ができる。

懲罰の効果は、冬にドアノブに触れた時に発生する静電気と言えばわかりやすいだろう。


()の名前はリトと言います」


クラスがどよめく。

黒髪ロングの美少女なので特に男子からは注目の的だった。


「この学校の事はまだ良く知らないので色々と教えて下さいね」


「席はエリスさんの隣が空いているわね、そこを使いなさい」


「はーい」


(何で前後左右の席が埋まっているのに私の隣の席だけ空くのよ! 不自然でしょう!)


アニメやゲームで転校生がやってくると、空くはずのない不自然な位置が空いているあの現象だ。


私の右隣の席にリトが座る。


「よろしくねエリス!」


「ヨ……ヨロシクオネガイシマス、リト=サン」


私は棒読みで不自然な返事を返してしまった。


初めてのクラスの初日と言う事もあって、一人ずつ簡単な自己紹介を流れ作業のように淡々とやって行く。


その中で一人、注目を浴びる人物が居た。

彼はイケメンで、前世のテレビに出てくる芸能人がこんな雰囲気だった。


彼の自己紹介の番になったのだ。


クラスがザワついている。

特に女子から熱い視線が集中していた、やはりイケメン効果だろうか。


その時、頭の中にリリスから説明が入った。


『彼がゼットの主人公よ、前作の主人公が女の子(ヒロイン)になったから、男の子の主人公が追加されたの』


彼は机から立ち上がると自分の名前を言った。


「俺の名前はタカCだ」


私とはブハッとむせかえる。


どうして前作と言い、今作と言い絶望的なネーミングセンスなのだろう……


『彼が主人公と言う事は、旧作の主人公を継承した私は、その役割から解放されたわけ?』

『答えはNOね』


『どうして?』

『主人公はプレイヤーだからよ』


『どう言う事?』

『この世界のプレイヤーはエリス、貴女に設定されている、つまり貴女が主人公なの』


『じゃあ、あのイケメンは?』

『彼に主人公のイベントは発生しないわ、NPC(脇役)として機能するだけ』


『でもあのイケメン、モテモテじゃない』

『うわべだけはね、好感度が上がらないから1週間もすれば今の反応も消えるわ……好感度を上げられるのは主人公の貴女だけよ』


『前作と同じ状況なのね』

『そうよ』


ふと気がつくと、タカCの自己紹介が終わっていた。


彼は窓際の後方の席に座っている。


(主人公って言ったら窓際よねぇ)


席の配置は私の右隣がリト、左隣がローラ、私の前の席がマリーである、マリーが後ろだったらおっぱいを揉まれていたに違いない。


ちなみに後ろはアリエルだった。

キャサリンとウェンディは前方の席でバラバラに配置されている。



ホームルームが終わり、休憩時間になると私は知り合いに囲まれた。

ローラ、マリー、キャサリン、ウェンディ、アリエルの5人だ。


「エリス、また同じクラスになれてとっても嬉しいわ」

とローラが感激したように言う


「私も同じ気持ちよ、ローラ」

嬉しそうなローラを見ていると私も嬉しくなってしまう。


「やっとマスターと同じクラスになれました、これでいつでもマスターのお(そば)にお仕えする事ができます」

とキャサリンも嬉しそうに言う。


「私はキャサリンと一緒なら特に不満は無い」

ウェンディはいつもの調子だ。


このメンバーに新しく問題児を加えなければならないのだ。

とりあえず皆に紹介する所から始める。


「それで、私の隣の席に居る女の子なのだけど……」


私はリトを見ると手招きで呼び寄せる、リトは何?と言う表情で寄って来た。


「皆に紹介しますわ、『リト』は私の知り合いで……」


そう言うとマリーが反応した

「こんな娘居たっけ?」


幼馴染で幼少からいつも一緒だったマリーは、私の交友関係を把握してると言っても良い。


私の知り合いイコール、マリーの知り合いである事が多いのだ。


「あら、マリーは知らなかったわね、マリーに紹介しようと思ってたんだけど引っ越してしまって、何年か会えなかったの」


「そうだったんだ」

マリーに嘘をつくのは心苦しいが仕方がない、マリーは欠片も私の事は疑わないのだ。


「お…私はリトです! よろしくね!」

(俺って言いそうになる癖まだ出るわね……)


「僕はアリエルって言うんだ、リトちゃんよろしくね」

何故かリトはジーっとアリエルを見ている。


「ど……どうしたのかな、僕の顔に何かついているかい?」


突然リトがスカートをめくりあげてアリエルにパンツを(さら)した。


「なっ!?」


(やめろ馬鹿ー! 懲罰(パニッシュ)!)


「あべしっ!」


私はリトにヘッドロックをかけ、まそのまま教室の窓際に連行して小声で話す。


『何やってるのよ!』

『だって、パンツを見れば男の子の部分が反応するかもしれないじゃん』


『そんな確認しなくても、アリエルは男だって言ったでしょ』

『アリエル美人すぎるからなー、まだ信じられない』


『今度やったら懲罰の出力上げるわよ』

『反省してます』


私はリトのヘッドロックを解除すると自分の席に戻った。


「リトは引きこもりで、他人とのコミュニケーションに慣れてないのですわ」

「みんなゴメンネ、パニック状態になっていたようだ……なの」


「そうだったんだ、困った事があったらいつでも相談にのるよ」


どうやらアリエルはその説明で納得してくれたらしい。


一通り皆がリトに自己紹介を済ませた後、授業が始まる時間になったので席に戻って行った。



いくつかの座学を学んだあと、次の授業は体育だった


「午前中に体育がある日は、だるいわよねー」

女子更衣室で不満を漏らす女子生徒の声が聞こえた。


ここは女子更衣室だ、私の隣にリトが居る。

リトは興味深そうにキョロキョロと周りを見回していた。


「リト、不審者みたいにキョロキョロするのはやめなさい」

「だって……下着姿の女の子がいっぱいで」


何て幸せそうな顔なのだろう……


「世界はなんて素晴らしいんだ!」

「世界はどうでもいいから早く着替えなさい!」


「あの娘、顔は地味なのに下着は派手だね」

「失礼な事言わないの!」


キョロキョロ見回していたリトだが、突然その挙動がピタリと止まる。


リトの視線の先に居たのはローラだった、ローラの胸に視線が釘付けになっていた。


ローラの胸の圧倒的な質量、無理もないか……


しばらくすると、リトは私の胸に視線を移した。


ちなみに私も下着姿である、リトはローラと私の胸を交互に見ると


「元気出せよ」

と言って私の肩をポンポンと叩く


懲罰(パニッシュ)!」



お昼休みになるとローラが私の席にやって来た。

「エリス、いつものように皆とランチをご一緒しましょう」

「わかりましたわ、リトとお話があるので先に行っていて下さい」


「じゃあ、いつもの場所で待ってるからね」

「後でリトも連れて行きますわ」


ローラと別れた後、リトを呼び寄せて説教をする。

「リト、男の子をからかっては駄目よ」


ついさっきの出来事なのだが……

リトは美少女なので、どうしても男の子を注目をあびる、その視線に本人も気付いたらしい。


そうするとリトは太ももまでスカートをたくしあげて、男の子を挑発するのだった。

まぁ即、懲罰だったんだけどね。


「いきなりビリビリは酷いと思うんだ」


「貴女、ちっとも反省してないじゃない」

「パンツまで見せてないからセーフだよ」


「そう言う問題じゃなくてね……」

「男の子の期待に答えてあげる事ができるのは、俺…私しかいないでしょ?」


「他人の期待より自分の体を大事にしなさい」

「別に見られても減るものじゃないし……」

「それ、男の子が言うセリフよ」


元々は男の子だったのだ、体は女の子でも心は男の子ままだった。


「とにかく、今後は軽率な行動を慎む事!」

「わかったよ…わよ」


「ランチの時間が無くなるわ、皆の所へ行きましょう」

「はーい」


私はリトの手を引いて、皆の所へ向かう。

学校の中庭にシートを広げて皆でランチをするのだ、場所はだいたい決まっている。


中庭へ向かう廊下を歩いていると


「トイレ行きたい」

とリトが訴えかけてきた。


「ここで待ってるから早く済ませてきなさい」

「はーい」


リトはそう言うとトイレの中へ入って行く、だがそれは『男子トイレ』だった。


(あの馬鹿!)


私は猛ダッシュでリトに駆け寄り、入口から中に入ろうとしているリトの手を掴み、ぐいっと引き寄せるとそのまま外に連れ出した。


まわりの男子生徒が、ざわめいていた。


私はとっさにごまかそうと思考を巡らせる


「あ、ここれは……そう、罰ゲームなの、罰ゲーム」


「え? あ、そうそう、そう言う事……なの?」

(なんで疑問形? そこは合わせなさいよ!)


私はリトを女子トイレに押し込んだ。

しばらくするとスッキリした顔でリトは帰って来た。


「いやぁ、女子トイレって初めて入ったよ」

「ちょっ、声が大きいから!」



クラスの男子が噂話をしている

「転校生が()()()()()に絡まれたらしいぜ」

「転校生にイジメをやっていたらしいぞ」

「うわっやべー奴じゃん」

(わー、また何か違う方向に誤解されてるー)

小ネタ

お気付きの方もいらっしゃるでしょうが、タカポンやタカCなど、このゲームの『主人公』の名付け親は前世で弟だったタカシ君です。

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