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勇者

私は前線の様子を見るためにQちゃんで視察中だ。


「報告を聞くわ」


「ご主人様、無事に敵を撃退して、前線を維持しましたぁ」


周囲に敵影は無い、地平線を埋め尽くすほどの敵が襲撃して来た場所とは思えないくらいだった。


たった2人で崩れかかった前線を維持してしまったのである、私の判断は間違ってなかったと言えよう。


「前線は平地だったはずだけど」


私はQちゃんでリーゼロッテに語り掛ける。


「平地でしたね」


リーゼロッテも同意する。


「でもあなた達、小高い丘の上に立っているわよね」

「そうですね」


前線に向かったリーゼロッテとウェンディは丘の上に立っていた。

事前に視察した場所とは違い、私にはその場所に見覚えが無かった。


「場所を移動したのかしら?」

「移動してませんよぉ」


「じゃあそこは何処なの?」

「ウェンディさんがちょと本気を出したので……平地が丘に変わっただけで」


「つまり地形が変わったと」

「そうなりますね」


私は理解した、伝承の武器(ネームドウェポン)の力を解放した結果、地形が変わる程の威力を発揮したのだ。


そう言えば以前、そんな噂を聞いた事がある、伝承の武器(ネームドウェポン)の中には地形が変わるレベルの威力を発揮するものがあると。


私は嫌な予感がしたのでQちゃんをキャサリンの元に飛ばした。


しばらくして映像が入ってくると……


(加減しろ!!)


私は思わずツッコミを入れた。


キャサリンは断崖絶壁の上に立っていたのだ。




私はリーゼロッテに撤収指示を出して街に戻ると、クラウディアと合流した。


「ご苦労じゃったな」

「いえ私は何もしていません、周りの皆に助けられました」


「それも含めて、お主の力じゃ」

「そうなのでしょうか」


「うむ、胸を張るが良い」

「わかりました」


「あれだけの敵の数じゃ、消耗戦となるとこちら側も甚大な被害を覚悟せねばならなかった、それを一方的に撃退できたのじゃからな、数万人の兵士の命を救ったのに等しい、感謝するぞ」


クラウディアは私達の活躍を褒めてくれた。


「それに引き換え……困ったのう」

「何がですか?」


「宮廷騎士団じゃ、国の宝物庫にあった伝承の武器(ネームドウェポン)を与えられているにも関わらず、戦線が崩壊するとはな」

「それは仕方の無い事かと」


ぶっちゃけ、キャサリンとウェンディが規格外なのだ、あのレベルの戦いを宮廷騎士団に期待する方が酷と言うものだろう。


「彼女達の働きは素晴らしいですね、この戦いが終わったら勇者の称号が与えられる事になるでしょう」


横からギルベルトがそう言った。


「うむ、武勲をたてたのならば、それに相応しい栄誉と褒美が与えられて当然じゃろう」

「今、勇者の称号を得ている人はどれくらい居るんですか?」


「ギルベルト一人じゃな」

「思ったより少ないですね、何か理由でも?」


「ハードルが高いだけじゃな、それこそ、今回みたいに一人で数十万の敵を撃破するような実績がなければ認められん、そのレベルの人物がひとつの時代に何人も現れるのは稀なのじゃ」


(と言う事は、既に勇者の称号を得ているギルベルトは、それだけの実績があるって事なのね)


私の視線に気付いたのか、ギルベルトが語りだす。


「僕が勇者を名乗っているのは、この聖剣のおかげさ」


聖剣エクスカリバー、彼が所有している伝承の武器(ネームドウェポン)である。


「勇者は伝承の武器(ネームドウェポン)の力が使えるのは知っているよね」

「はい」


「僕がこの聖剣の力、どれぐらい引き出せていると思う?」

「勇者なら聖剣の力をフルに引き出せるのではないのですか?」


「残念ながら半分程度だよ」

「え?」


「ちなみに歴代勇者の中でもトップクラスじゃぞ伝承の武器(ネームドウェポン)は人の手に余るのじゃ」


と隣のクラウディアが補足を入れた。


「それでも数十万の敵を撃破し、地形すら変えられる、君の話を聞いた限りではウェンディもおそらく同じだと思う、ただ……」


「ただ?」


「キャサリンは違う、彼女は伝承の武器(ネームドウェポン)のほぼ100%に近い力を引き出せるみたいだね」


「全く嫌になっちゃうよ、あの時、手加減していたのはあっちの方だったのか……」

「あの時?」


「学園に視察に行った時、キャサリンと模擬戦で戦った事があるだろう?」

「ああ、あの時ですか」


今でも覚えている、結果は引き分けだった。


「命のやり取りをしなかったから引き分けになったけど、その制約が無かったら、僕は地面ごと消滅してたよ」


確かキャサリンの神剣は聖剣を上回る威力だと言っていた、その神剣のフルパワーが出せるのだ、2人が戦えばどちらが勝つかは明白だろう。


「キャサリンなら魔王を倒せるかも……」


私がそう言いかけた時、後ろから声がした。


「甘いですよ、ご主人様」


いつの間にか前線から帰還したリーゼロッテである。


「何故?」

「魔王は停止した時間の中を動いていました、彼もまた時間が停止できるのです」


「と言う事は……」

「人間が戦えば抜刀する前に死にますよ? 私やご主人様なら体に穴が開いても再生できますけどぉ」


うう、私ってリーゼロッテに人外認定されてる……それはおいておいて。


「確かにそうね、どんなに強い武器でも使う前に死んだら使えないもの、魔王とキャサリンが戦う案はしばらく保留ね」


と私はため息をついた。

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