防衛
ついにその時がやってきた、もうすぐ正午を迎えるのである。
クラウディアとギルベルトが話しかけて来た。
「すまぬが、妾達は都市防衛のため首都の中心から動けぬ故、お主たちに前線を任せる事になるじゃろう」
「お気になさらず、そのための戦う力ですから」
と私は答えた。
首都は高い外壁で覆われており、そこにプロテクション魔法がかかっているのだ、魔物が簡単に侵入できないよう備えられている。
ブロテクションがかかっていると言っても、一般神官の魔法なので幹部クラスの魔人の攻撃魔法は防げないだろう。
幹部クラスの攻撃魔法を防ぐブロテクションが使えるのは聖女見習い以上か、マリーぐらいのものだ。
その時、一般兵から報告が入った。
「定刻になりました」
『定刻』つまり、聖女と勇者の引き渡し期限になったのである。
「敵の様子はどうじゃ?」
「進軍を始めたようです」
私は既にQちゃんを使って偵察していた。
地上では四足歩行の魔物の進軍速度が圧倒的に速い、二足歩行の魔物は到達までやや時間がかかるだろう。
それよりも一番最初に対処すべきは空を飛ぶ魔物だ、地上部隊の進軍速度の比ではない。
私はQちゃんの映像を確認する。
「雨雲? ……ちがう……敵なの?」
黒い雲のように見えるが、良く見ると空を飛ぶ魔物の大軍だった、その数は数万と言うレベルだろう。
前世で大量発生したバッタの大軍がこんな感じだった気がする。
その空飛ぶ魔物が向かう先にポツンと一人の人物が立っていた、キャサリンである。
私はQちゃんを通してキャサリンに話しかける。
「一人で大丈夫?」
「問題ありません、マスター」
「任せた」
「了解しました」
キャサリンはゆっくりと剣を引き抜くと、起動術式を発動する。
「神剣マルミアドワーズ起動!」
ビリビリと大気が振動して、刀身が発光し青白い光を放つ。
キャサリンは両手で剣を頭上に掲げた。
「断罪者を解放」
「汝、真の力を示せ! 神剣の裁き」
剣の力を解放した瞬間、空の隅々まで全て光で包まれ、黒い雲のような大軍は光に飲まれて次々に消滅して行く。
膨大なエネルギーにより空間が歪み、空に穴が開いていた。
上空に宇宙空間が見える穴がぽっかりと開いていたのだ。
やがて空間の歪みが徐々に収束して行くと、その穴は消え去っていた。
私はQちゃんでその光景を呆然と見ていたのだ。
(いやそうはならんやろ)
信じられない光景を目の当たりにして、一人でツッコミを入れていた。
私はクラウディアに報告する。
「敵の第一波、空飛ぶ魔物の軍勢を撃破しました」
「空が輝いておったから、だいたいの事は察しておるぞ」
キャサリンが剣の力を解放した時、都市の上空まで光り輝いていたのだった。
キャサリンが討ち漏らした場合を考慮して大量の弓兵を引き連れていたのだが、一匹の討ち漏らしも無かったと言う。
もともとキャサリンは弓兵は不要だと言っていたのだが、剣の力を知らなかったのなら無理もない。
キャサリンはそのまま防衛ラインとして、前線に留まる事になった。
やがて敵の地上部隊と接敵する事になるはずである。
ほっとしたのもつかの間だった。
「このプレッシャー!」
「お主も感じたのか」
「はい」
クラウディアと私は、突然出現した魔人の放つ強力な魔力を感じていた。
よりによって都市の外壁付近に突然現れた魔人は、とんでもない魔力量だった。
「魔王……ではないわね、アレよりはかなり劣るけど……、居たのね、魔王以外にも100万クラスが!」
魔王みたいに数百万とは行かないものの、100万は確実だろう。
「ご主人様!」
リーゼロッテが私の腕を掴む。
「行くわよ」
「了解しましたぁ」
私とリーゼロッテは城壁の前まで転移したのである。
私達が目にしたのは灰色のボロボロのローブを纏い、フードを深くかぶった怪しげな人物だった、表情は見えない。
私はスーパーな状態に変身して戦闘態勢を取る。
ふと相手の魔力にゆらぎを感じた。
何かに反応しているらしい、それが何かはわからないが。
「ここから先は通さないわ}
しかし相手は全くの無反応だった、一言も言葉を発しない。
「ねぇ聞いてるの?」
その時、その人物が何かを呟いた。
すると突然、真上に巨大な光球が出現して徐々に圧縮されて行く。
「まさか!!」
(マズイ、このプロセスは高位爆裂魔法だ!)
100万クラスの高位爆裂魔法ならば、この都市がまるごと消滅する。
「雷光神槍」
私は光球に向けて攻撃魔法を発動するも、膨大な魔力を貫通できずに砕け散った。
「駄目、止められない!!」
光球は徐々に圧縮され行く、もうすぐ臨界を迎えて爆発する寸前だろう。
その時、天空からひとすじの光が飛来して光球を貫いた。
そして、その光のすじが私のすぐ近くの地面に突き刺ささったのだ。
貫かれた光球は霧散して消えて行く。
地面に突き刺さった光のすじは『槍』だった、柄にルーン文字が刻まれている。
「槍よ戻れ」
その言葉に呼応し主の元に槍が飛ぶ。
パシッと槍をキャッチしたのはウェンディだった。
「その気になれば高位爆裂魔法だって無力化できる!」
「本当だったんだ……」




