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軍勢

ファドセルの事が心配だが、たぶん死んで無いと思う。


ファドセルとの繋がりは細く切れそうにはなっているが、生死の判別だけはつくのだ、それ以上の事は何もわからない。


ただその繋がりが消えそうなくらいに細くなっているのを感じる、正直、あと2日か3日ぐらいが限界だろう、その時が来ればファドセルとの繋がりは消える。



(それまでにはファドセルを探し出して会わなきゃ)



街に戻って皆と合流した時には既に魔人の討伐は終わっていた。


クラウディアとギルベルトが真剣な顔をしていた。


「どうしたのですか?」

と私が訪ねる。


クラウディアは私の姿を見て驚く。


「お主聖女の服をもっと大切にせんか!」


直前の戦いで聖女の服をミニスカートに改造したためだ。


「これには色々と事情がありまして……」


クラウディアからは後で新しい服を支給するから着替えるように言われた。


もっと怒られるかと思ったが、軽く流されたので驚いている。聖女の服は事実上最高ランクの魔道具と言っても過言ではない、それをズタズタに切り裂いたとなれば教皇が見たら卒倒するレベルなのだ。


「それよりどうしたのです? 魔人の討伐は終わっているのでしょう?」


「ご主人様、百聞は一見にしかずですよ、Qちゃんの情報を自分で見てもらった方が早いですぅ」


リーゼロッテに促され、Qちゃんと感覚共有をして空から地上の様子を見た。


そこには地平線全てが魔物の軍勢で埋め尽くされている様子が映っていたのだ。


あれはヤバイ、数十万レベルの大軍だろう、もしかしたら百万に届いているかもしれない。


「暴れた魔人は陽動だったみたいだね」

とギルベルト言う。


「なんにせよ、200年前と同じ事が起きるじゃろう」

クラウディアがそう言った。


「あの軍勢でさえ魔王軍のごく一部じゃ、もっと大規模な部隊が後方にいくつも控えておるじゃろう」


つまり魔物と人類の数による消耗戦と言う事になる。


敵は各国の要人が集まったこの都市をピンポイントで狙って来たのだ。


国の宝物庫から、伝承の武器(ネームドウェポン)が搬出され、宮廷騎士団に配られた。


だが圧倒的に数が足りない、おそらくあっと言う間に押し切られるだろう。


「他国に支援は望めないのですか?」


「まず知らせるのに数日かかり、他国の軍勢がこの国に到着するのに数週間と言う所じゃな」


とクラウディアから反論される。


そうこの世界には電気通信と言うものも便利な乗り物も無いのだ、現代人の感覚を基準にしちゃいけないんだった。


「魔王の軍勢に動きは?」


「今の所待機していると言う所じゃな、聖女と勇者の引き渡しを要求しておるので、しばらくは動かんじゃろう」


「要求に応じるのですか?」


「応じても結果は変わらんよ、そのまま素直に引き上げてくれるはずが無い、ならばこの時間を活用させてもらうまでじゃ」


「時間?」


「聖女と勇者の引き渡し期限は明日の正午までじゃ、その時刻を持って魔王軍は進軍するじゃろう」


「この都市の市民が避難するには時間が足りませんね」


「そうじゃな、市民の避難は既に始まっておるが、明日の正午までにどれだけ避難できるか…… それに、ここが戦場となるじゃろう、この都市を捨てねばなるまい」


国王陛下は都市を捨てると言う判断に難色を示していたがクラウディアが説得したらしい。


魔物単体では取るに足らない存在なはずだ、数が揃うとここまで厄介なものかと思い知った。


「妾とギルベルトは国王陛下の避難に同行するのでな、戻るまでは迂闊な行動を取るのではないぞ」


そう言い残してクラウディアは国王陛下の元へ向かった。


私はQちゃんを飛ばして都市の上空から現状把握をする。


市民の避難は遅々として進まない、聖女の式典やパレードを見ようと都市に人口が集中した結果でもある、正に最悪のタイミングで仕掛けられたのだ。


都市で魔人が暴れたため怪我人が発生したらしい、広場に野外病院が設置され、次々と怪我人が運び込まれていた。


そこでソフィーが治療に当たっていた、さすが聖女見習いである、他にも数名の神聖魔法の使い手が治療をする様子が見えていた。


(ソフィーに避難しろと言ってもしないだろうな)


彼女はそう言う性格だ、私よりも彼女の方が聖女の資格があると思う。


そして神聖魔法の使えない私には誰も救えないのだ、名ばかりの聖女なので自分で自分が嫌になる。


私はQちゃんを召喚するとリーゼロッテと通話をはじめた。


今頃リーゼロッテが魔王軍にちょっかい出している所である。


「同士撃ちはさせられないの?」


「何回かやってみましたが数で押し切られました、死体を動かしてもスライムや死肉を食物とする魔物に食われて消滅しましたし」


多少操った所であっと言う間に制圧されて終わりだった。


「わかったわ、引き揚げてちょうだい」


「了解しましたぁ」


気が付いた時にはリーゼロッテは隣に居た。


「ねぇリーゼロッテ魔王について知っている事を教えて」


少しでも情報が欲しいので、リーゼロッテに尋ねてみる。


「名前はガルツ・ヒュベインタール、魔力総量は推定でご主人様の10倍くらいですぅ」


「魔王ガルツ……」


推定魔力総量が私の10倍だとすると、私のどんな魔法も受け付けない事になる。


こんな私でもエリート幹部クラスの魔力総量があると言うのにだ。

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