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遭遇

リーゼロッテには迎えに来るように言ってあるので、そのうち転移してくるだろう。


街まで走ってもいいのだが、今は一刻も早く戻りたい。


私は回収待ちのわずかな時間、ぼんやりと首の無い死体を見ていた。


(どうしてこんな事になったのだろう)


頭の中が真っ白で、何も考えられなかった。


その時、突然背後から背中に強烈なタックルを受けた。


「ハニー会いたかった!!」


私はそのまま数メートル吹き飛ばされてゴロゴロ地面を転がった。


高速道路で車にはねられたレベルの衝撃だ、通常の人間なら即死である。


「加減しなさい!! バカ!!」


私はこの状況でも背中にしがみついているファドセルに苦情を言う。


リーゼロッテがあわてて駆け寄って来た。


「すみませんご主人様、どうしてもついてくるって言って聞かなかったので」


「街の魔人はどうしたの?」


「高レベルの魔人はだいたい処理しました、残っているのは聖水をかければ、のたうちまわって死ぬような雑魚です」


「その表現、殺虫剤をかけられて死ぬ害虫を思い出したわ」


どうやら街の防衛はなんとかなったらしい、それでも念のため、急いで街に戻った方がいいだろう。


だが、ファドセルが背中から抱きついてスリスリしているので邪魔なのだ。


「ファドセル、離れなさい街に戻るから」


「あと少し、もう少し」


「さっきからそればっかりじゃない」


(よし、ファドセルはリーゼロッテにどこか遠い所にに飛ばしてもらおう)


そう思ってリーゼロッテの方を見るとマイラの死体を吸血していた。


マイラをエリート幹部クラスと想定すると魔力総量50万クラスのはずだ。リーゼロッテの魔力が急激に上昇しているのが私にもわかった。


気のせいか体が少しだるい、魔力値上昇の副作用だろうか。


「嘘……そんな……あり得ない……」


「どうしたの? ファドセル」


背中のファドセルの様子が変だ。


「このプレッシャーは……」


ファドセルがそう言いかけた時、突然ファドセルに突き飛ばされた。


私は再び地面をゴロゴロ転がった。


「何をする……」


と言いかけて目の前の光景に息をのむ。


貫手(ぬきて)がファドセルの胸を貫通していたのだ。


「敵襲!?」


迂闊だった、マイラの死体に気を取られて敵の接近に気付かなかった。


とりあえず、ファドセルはあれぐらいでは死なない、だけど、まだ死んでないだけだ。


目の前の敵はあきらかに『格』が違う。


ぶっちゃけると私でも勝てないだろう、本能的が逃げろと言っている。


生まれて初めて目にする100万(ミリオン)クラスの魔人なのだ。


「ハニー逃げて!!」


「駄目よ、貴女を置いて行けない」


「アタシはこの敵を食い止めます、だから早く逃げて!!」


『何を馬鹿な事を』と言いかけた時、リーゼロッテが駆け寄ってきて、私の腕を掴む。


「ご主人様、転移します!!」


「待ってリーゼロッテ、ファドセルがまだ……」


「行きなさい吸血鬼!! 後は任せた!!」


私はファドセルに向かって手を伸ばす、だけど遠すぎて届かない。


その光景を最後に視界が蜃気楼のようにゆらいで行った。





次の瞬間にはもう街の中だった。


「アレは魔力総量数百万の魔王ですよ」


「それならなおさら、ファドセルを置いていくなんて……どうして…」


「勘違いしないで下さい、アレと遭遇したら全滅が普通です、一人の犠牲で生き残れたなんて奇跡なんてレベルじゃありません」


「時間を止めれば助けられたんじゃないの?」


「止めましたよ!でも、駄目だった…… そこで一度殺されたんです、アレは停止した時間の中でも動けます」


「そんな……」


リーゼロッテは私と違って完全な不老不死と言う存在だ、だから殺されても死なない。真祖の吸血鬼の特徴である。


「魔王も200年前に消滅してからの復活、魔人の力を上乗せした魔力総量にスキルの取得等、特徴を考えるとアレも『真祖の吸血鬼』ですね」


つまり、魔王も完全な不老不死と言う存在だと言う事だ。


「理解しましたか? アレには勝てません」


「でも200年前に勝っているじゃない」


「結果を先送りしただけですよ、魔王は200年前に聖剣で肉体ごと消滅させられたんです、無からの復活は真祖といえども容易ではありません」


「つまり今回も聖剣で滅すれば、先送りはできると言う事ね」


「200年前の出来事は、偶然だと思ってください、狙ってできるかと言うとなんとも言えません。最悪、勇者だけが消滅して魔王がすぐ復活すると言う事も考えられます」


リーゼロッテは先送りを()が悪い賭けだと言う、200年前はたまたま当たりくじを引いただけだと、そう言った。


でも人類にはそれしか方法が無いのだ。

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