いきなりTS美少女
短い春休みが終わった頃、私は2年生に進級した。
その2年生の登校初日にいきなり担任に指導室へ呼び出されたのである。
「セシリア、また貴女が担任なのね」
「私のクラスは問題児が集められたのよ、貴女も含めてね」
2年生の新しいクラスの顔ぶれは私の知り合いを集結したようなものだった。
ローラやアリエルと言った見知った顔ぶれに加えて、前年は別なクラスだったマリーやキャサリン、ウェンディまでもが同じクラスである。
「それで何か用があるのでしょう?」
「貴女にこの娘の面倒を見て欲しいのよ」
さっきから気になっていたが、そこには可愛らしい美少女が立っていた。
女の子は嬉しそうに話しかけて来た。
「やぁエリス、久しぶりだね」
と言われたが、全く見覚えの無い顔だった。
黒くサラサラしたロングヘア、顔立ちはやや幼く、身長は私と同じぐらいの小柄な女の子だ。
真新しい制服を身に纏っている。
2年生ならば多少制服を使い込んでいるはずだが、その様子が無い。
(転校生かしら?)
私は不思議に思い、セシリアに尋ねる。
「それで、この女の子は誰なの?」
「この娘はタカポンよ」
「はいいぃぃーーー!?」
確かタカポンと言えば、春休み前まで男の子だったはずだ。
「10cm以上身長が縮んで、髪の毛が伸びて、小さいけど胸もあるし……」
どう見ても別人だった。
「サキュバスの秘薬を飲んだらこうなっちゃって……」
(お前が原因かー!)
「えーと、ついてないのかしら」
念のため完全に女の子になっているのか聞いてみた。
「ついてないわよ」
前作の主人公が性転換して今作のヒロインになりました。
(いいのかそれで!)
「元に戻す方法は?」
「あるわけ無いじゃない」
「どうするの?」
「これからは女の子として生きていく事になるわね」
(今わりと重要な事をあっさりと言わなかった?)
「家族がどう思うかしら……」
「家族の記憶は書き替えておいたわ」
「男の子だった記憶を女の子に書き替えたって事?」
「それだと現実と矛盾が出るわね、家族だけ記憶を改ざんしても、親戚や街の人の記憶は男の子のままよ」
「じゃあどうするの?」
「タカポンは病気で急死、息子を失った寂しさから養子をとった、それがこの女の子って筋書かしら」
「男の子が死亡したと家族の方から情報発信してもらえば、情報の改ざんを家族がやってくれるってわけ」
人を騙すためのシナリオと舞台を用意する、劇場型犯罪の手口だ。
「貴女、犯罪者の才能あるかも」
「人間よりは長く生きているもの、人と共存すための処世術よ」
「この娘の名前は? まさかタカポンのままじゃないでしょ?」
「今日からこの娘はリトよ」
そこで頭の中にプロフィールが流れてくる、この娘も攻略対象なのね。
前作で主人公の名前は特に変更しなければキリトだったので、ちょっと変えただけのような……
たぶん名前の繋がりに気付けるのは私だけだろう、この世界で主人公の名前はタカポンなのだから。
「それで面倒を見てほしいって言うのはどう言う事なの?」
「この娘、女の子の事がまだ良くわかってないのよ」
「と言うと?」
「女の子の下着の付け方とか……あとは生理の時ね」
「なる程ね、リトに"女の子"を教えてあげればいいのね」
「そう言う事よ」
「あと、元々男の子だったから、肌をさらすのに抵抗が無くって」
とセシリアが言うと、リトはスカートの前の部分を掴むと自分でめくりあげた。
スカートが全開になってパンツが全部見えている。
「やっぱり特に何も感じないなぁ」
「こんな調子なのよ……」
「なる程、これは指導が必要ね……」
と言うわけで厄介事を押し付けられたような気がしないでもないが、セシリアに頼まれてTS美少女を引き受ける事になったのだった。
あの夢を思い出す。
―― ゼットは前作から1年後の話でね、主人公にとんでもない事が ――
(確かにとんでもなかったわね)
私はリトの手を引き、教室に向かう。
「新しい教室なら俺知ってるから一人で行けるよ」
「まずは言葉使いを直しなさい、女の子の言葉使いをするのよ」
「アリエルだって僕って言ってるだろう! 不公平だ」
「アリエルは男よ」
「なっ……なんだってー!」
「誰かに喋ったら、貴女の身の安全は保障しないからね」
「ショックだ……俺、アリエルをオカズにして抜いてたのに」
「そう言う事言わないの!!」
「ちなみに一番回数が多いのがエリスで……」
リトの鳩尾に鈍い一撃が入った、リトはたまらずその場でしゃがみ込む。
「男ってどうしてこう無神経なのかしら」
18禁ゲームの主人公なので会話に全く躊躇がなかった。
この世界では仕方が無いとはわかってはいるものの、女の子になった以上は慎んでもらう。
「今の貴女は女の子なの、今度そんな話をしたらもっとキツイお仕置きをするわよ」
「痛たた……」
リトはしばらくうずくまっていたが、ようやく立ち上がった。
「俺……じゃなかった、私のお願いを聞いてくれたら言う事を聞くよ……わよ」
「既に言葉使いが怪しいんだけど何?」
「おっぱい揉ませて」
再びリトの鳩尾に鈍い一撃が入った、さっきの光景が再現される。
「マリーちゃんと良くやってだろ、それに今は女の子同士なんだから……」
「あれはマリーが一方的にやっている事だからね!」
「それに、貴女にもおっぱいあるでしょ、自分で自分のおっぱい揉んでなさいよ」
「それはもう女の子になった時にやったよ! 上も下も」
「本当に男って最低ー」
「俺……私の中の男の子の部分の望みを叶えてあげれば、女の子になれそうな気がするんだ」
見た目は可愛い女の子なので抵抗感は薄い。と言っても元男だし、そこだけは引っかかる。
でも、断ったらローラとかに突撃しそうだし、おっぱい揉ませて言う事を聞いてくれるなら……
「いいわよ、でも私にも条件があるわ」
私はリトに条件を提示して、リトはそれを承諾した。
そこで選択肢が出た。
- リトの要求に応じますか? -
1.承諾する
2.断る
私は、ためらいながらも1を選ぶ。
リトは正面から両手で私のおっぱいを包み込むように触れた。
「やっぱり、自分の胸とは感動の度合いが違うね……わね」
「し……正面からなの? ちょっと恥ずかしいわ……」
私は赤面しながらリトに告げる。
「じゃあ後ろから」
リトはそう言うと後ろにまわって、私を抱きかかえるように胸に手を伸ばした。
抱きしめられるような感覚に私は更に赤面したのだった、背中にリトの胸の膨らみを感じる。
しばらくはリトが成すがままに任せたが、ちょっと息が上がって来た、そろそろやめさせないとヤバイ……
「もういいでしょ?」
と言ってリトを振りほどく。
「えー、もう終わりー?」
「どれだけ時間が経ったと思ってるの」
「楽しい時間は一瞬で過ぎ去っちゃうんだね」
「何が楽しい時間よ!」
「満足したかしら?」
「うん、この手の感触は一生忘れない」
「忘れなさい!」
「だってエリスのおっぱいを揉めたんだもの、女の子になれてよかった」
何故か達成感に浸っているリトだった。
「約束は守ってもらうわ」
「はいはい」
私がリトと交わした約束、それはリトとの隷属魔法による主従契約だ。
1か月間の期間限定でリトを私の支配下に置く事にした。
本人が言う事を聞くと言った以上、男に二言はないはずだ、今は男じゃないけど。