朝の学校
クラウディアからは学業優先を言い渡されているので、再び私は平凡な学校生活を送る日々に戻った。
そんなある日、自宅のベットで朝目が覚めると隣で全裸の美少女が寝ていた
「またなのね」
全裸で寝ていたのはリーゼロッテである。
リーゼロッテをベットから蹴り落とすと、床にゴロゴロと転がった。
「ご主人様、酷いじゃないですか!!」
リーゼロッテは不服そうに抗議する
「文句あるの?」
「どうして一回しか蹴ってくれないんですか!!」
「あっ、そっちの方面の抗議なんだ」
「好きなだけ蹴っていいんですよ」
と言いつつ、チラリチラリとこちらを見ている。
「貴女、古城に住んでたんじゃないの?」
私の自宅から古城まではかなり距離があるハズだ。
「この前、上位魔人を討伐したじゃないですかぁー」
「ええ、そうね」
「そいつの血を吸ったら、新しく空間転移のスキルをゲットしました」
「つまり上位魔人の能力を獲得したと?」
「そうだお」
どうやら古城から転移してきたらしい。
(このポンコツ、だんだん吸血鬼離れして行くわね)
「あとは抗魔力や魔力の総量も増えました」
「攻撃魔法が効きにくくなったって事?」
「その通りです、上位魔人の魔力と抗魔力を何割か上乗せできましたぁ」
上位魔人の抗魔力と言えば、私の魔法が直撃しても無傷で居られるレベルだ、私に上位魔人は倒せない。
(今のリーゼロッテに魅了は効かないだろうなぁ)
「血を吸ったと言うより上位魔人を取り込んだと言うのが正解みたいね」
「真祖の力です、劣化コピーの吸血鬼とは違いますから」
どうやら真祖特有の能力との事だった。
その時、突然ドアがバンと開いた。
「お姉様、どうしたのですか? またあの泥棒猫が侵入したのですか?」
妹のミリアはキョロキョロと部屋を見回す、しかし、部屋には私の姿しかなかったのだ。
「話し声が聞こえた気がしたのですが……」
「き……気のせいよ」
リーゼロッテはもう転移してしまったらしい。
「ならいいのですが」
ミリアはそう言うと素直に引き下がる。
(後でリーゼロッテにはマスター権限で私の部屋に転移禁止を命じよう)
と私はそう思うのであった。
朝、学校の校門の前まで歩いていくとリトが立っていた。
「おはよう!」
「おはようございます」
朝の挨拶を交わすと一緒に歩き出した。
「別に待っていなくてもいいのに」
「エリスは私の保護者だし、それに……」
「それに?」
その時、突風が吹いた。
私の周囲の女子高生のスカートが軒並みめくれあがる。
「きゃあ!」
あちこちで女の子の悲鳴が上がった。
「エリスと一緒に居ると良い事が起きるのよ」
(コイツ、ラッキースケベ目当てか!)
「貴女ねぇ、女子更衣室で女の子の下着は散々見てるでしょう!」
「パンチラは別腹よ!」
とリトが上機嫌で言ったその時
「ぴゃあっ!!」
突然リトが悲鳴をあげる。
後ろからマリーがおっぱいをワシ掴みにして揉んでいたのだ。
「いけない子はお仕置きだあー」
「ああん、マリーちゃん上手!」
(上手って何がだよ!!)
「だって最近、リトはエリスにベタベタしすぎなんだもん」
「私は保護者みたいなものって言ったじゃない」
「許嫁の私を差し置いて……」
「それは、子供の頃の話だって言ったでしょ」
「マリーその辺にしておきなさい、それ以上はリトが新しい扉を開くから」
マリーに胸を揉まれてうっとりしているリトを見ながらそう言った。
「も……もう……駄目ぇ」
(おっと、そろそろ引き離さないと!)
私は強引にマリーの手を引くと、校舎の入口へと向かった。
今日の最初の授業は歴史だった。
その内容は200年前、人類に降りかかった厄災、人類と魔王の戦いについてである。
教科書には聖女の名として『クラウディア・フリートベルク』と記載されていた。
そう言えば、教科書に載っているって自分で言ってたっけ。
魔王の圧倒的な軍勢に対し、各国が協調して連合軍を結成した。
人類は伝承の武器をかき集めて片っ端から投入し、やっと均衡が保てたらしい。
結局は消耗戦になり、双方大量の犠牲者を出したが、それでも人類はその”数”によって魔王の軍勢を跳ね返した。
最終的には魔王と勇者の直接対決によって終結した、結末はクラウディアの言っていた通りである。
残ったのは瓦礫の山と数百万と言う数の死体の山だった。
それが今、再び繰り返されるかもしれないのだ。
その時、突然私の膝の上にポフンとQちゃんが出現した。
(ちょ、見つかるから)
Qちゃんをあわてて机の中に押し込める。
『主人様終わりましたよ』
勿論、人間の可聴域外での会話だ。
『どうだった?』
『雑魚ばかりですね、なかなか当たりが引けません』
当たりとは上位魔人の討伐の事だ。
リーゼロッテには郊外の魔物の討伐を命令している。
有象無象を間引いても魔王軍には何のダメージも無いだろう。
それでも何かしなければと言う焦燥感に駆られるのだった。
『じゃあ次の拠点を潰したらまた報告してね』
『了解しましたぁ』
そう言うとQちゃんは姿を消した。
授業の終了を告げるチャイムが鳴り響き、授業から解放された私は大きく伸びをする。
前の席のマリーがくるりと向き直って話しかけて来た。
「ねぇねぇ聞いた?幽霊が出たって噂」