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続2 西南工場編

「気まま天使 続2・西南工場 生産技術部」


 私の勤務する西南工場は、東北の○×県で東北新幹線が停車する地域にある。会社までは、ローカル線で次の駅まで行って徒歩二十分。また、新幹線の駅からタクシーを利用して二十分。会社までの選択肢が二つある。まあ、殆どの人達は後者を選択するようだ。

部署は、生産技術部。生産技術部の仕事の内容といえば、「ものつくりに対する機械の生産指導」である。

社員構成は、東北と関東に分散し西南工場生産技術部メンバーは、部長を含め男性八名と女性一名。関東本部メンバーは、男性五名と女性二名の合計七名総勢十六名となる。更に、平均年齢は南上工場生産技術部の方がはるかに上だ。平均年齢四十歳以上。気ままな中年の集まりである。

南上工場は、代表機種である多種多様の計量機を委託生産している。その中で生産技術部の役割は、日本生産工場や海外生産工場の生産指導の技術支援部隊である。生産に対する技術の指導、工程の改善、生産資料の作成、生産設備の提案や製作。「少ない人数で生産性を上げる」などが主の業務となる。

生産技術部の部署のドン、部長こと立花太郎さん。あと数か月で五十五歳を迎える。これで西南上工場生産技術部総勢九名中、五十五歳以上社員が一名増えて五名になる。我が部署も約55%が五十五歳、高齢化社会に進んでいることを実感する。

我社は、六十歳定年から六十五歳が定年延長された。

「六十五歳まで働くの?まだ先だね~」と何か気が遠くなる話であるが、これもあっという間に年は過ぎ去り近づいて来る。

この頃、熟年離婚の話をよく耳にする。私は、「関係ないから」と思っていたら、いきなり妻から六十五歳の誕生日に「これから、別々に自由に生きましょう。もう、疲れたし自由で・・」なんて言われたら、オロオロするばかりだ。その姿が目に浮かぶ。やばい、今からでも遅くない、妻に「常に感謝・ありがとう」を忘れずに生きようと思うが、直ぐに忘れてしまう私が情けない。

五十五歳をあと少しで迎える立花さんの体型は中肉中背、丸顔、頭の髪の毛も白髪と生え際も大分寂しくなってきている。「芸能界で言えば、誰に似ているの」と聞かれた場合、私はこう答える。女性漫才師で、丸顔で目もまん丸のポッチャリ体型の「モモちゃん」に似ていると答える事にしている。

更に、つい最近右目が悪くなって来ている様だ。夜は視野が狭くなると漏らしていた。

「やぱりわんねぇ(ダメだ)。夜になると目見えなぐなるもの(なくなる)。わんねぇ、俺帰るじゃ」

立花節が炸裂する。「わんねぇ・・」が口癖の立花さんだ。

「えっ、立花さん鳥目ですか?」

興味津々と目を見開き立花さんを振り返り聞いてみた。

「夜も見えないし、この頃右目いっこど(全く)カスレで見えねぐ(見えなく)なったのよ。年だじぇな」これで年齢が原因と決まってしまった。

笑いながら答える。その照れくさそうに笑う顔・何度見ても、やっぱり「モモちゃん」だ。もしかしたら親戚なのかとも疑ってしまう。いつかきっかけがあったら聞いてみよう「立花さん、漫才師の「モモちゃんと」親戚か何かですか?

多分、立花さんはきっとこう答えるだろ。

「モモちゃん?誰・はっぱど(全然)わがらねえ(分からない)な?」って。

そんなくだらないことを考えながらチラチラと横目で立花さんを観察する。

鳥目って・・鳥の目のように瞼が下から上に動く?かの観察だ。

「おお今、今、瞼が上から下がった。」この結果、「伝説の鳥目」ではないことがわかった。分かったことで全く興味も無くなった。切り替えも早い私だ。

せっかく「鳥人」・・鳥が人間の言葉を話す。「鳥と人間が結婚」と世の中から脚光を浴びる。是非ともマネージャになってガッポリと稼ぎたい・・と思ったのもつかの間に消えたのだった。

西南工場は、社内では製品を製造していない。社外協力工場に生産を委託している。昔から付き合いの長い社外協力工場が多くある。  

よくテレビドラマの下町工場のように、仕事を頼んだ場合でも一言えば二も三も分かるツーカーの仲だ。

設計変更の指示は、普通は資料を持って説明するのが基本と思いがちだが、時間も迫っており先行、実際やってみて作業指示を行う。

「じゃあ、この内容でお願いします、工場長。追加工数は、後で見積下さい。よろしくお願いします」

「リュウさん、後で資料頼みますよ。弊社もISO取得しているからうるさいんですよ。ほら、この前の変更あった、計量機PS5XX製品の追加作業指示書まだ出てませんから。お願いします。」

『うは、言われてしまった。まずいな・・・』

工場長から前回の資料提出をモロに指摘されてしまった。それを、ごまかすかのようにいかにも解ったよ!と、感じでついつい軽いノリで言ってしまう。

「解りました。後で出させますから大丈夫です」

なんて、後から資料を提出と言っても直ぐに出した試しが無い。

の事に甘え慣れ親しんだ仲から技術的な変更があった場合など、まず作業指示が先行される。ちょっと手間がかかる指示書資料は、後回しとなる。

 ちょうど一段落した時、休憩時間のベルが鳴る。

 この休憩時間には、お茶が出される。そのお茶を飲みながら恒例の世間話をする。ちょっとお年を召した女性社員から、

「はい、リュウさんせんべいでも食べで」と、出されたセンベイをかじる。

「おっ、この煎餅おいしいですね。どこのお菓子ですか。それにお菓子の中に何か入っていますよ」かじったお菓子の空洞から白とピンクの紐のようなものが見えた。何だろうと空洞をのぞき込む。

「これはね、山形のお菓子なのよ」お菓子を振って見せる。

カラン・カランとお菓子の中で何かがぶつかる合う音がした。更にお菓子をかじってみる。

「なにこれ?可愛い小さなアクセサリィですかね。ハイ、どうぞ」小さなアクセサリィを引張り目の前に掲げ掌にそっと渡した。これは、女性や子供受けするお菓子じゃないかと勝手に思った。

「いいの?ありがとうねリュウさん」

 ちょっと欲しかったような、心の残りがした。


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