四月に
四月になれば
桜がいい。
桜吹雪がよく似合う。
五月になれば
菖蒲がいい。
紫の高貴な花は嬢様をより嬢様にする。
六月になれば
紫陽花がいい。
暗い雨さえ力とする強さと凛とした清楚なたたずまいがよく通いあう。
七月になれば
百合がいい。
色も匂いも毒々しいが、
だからこそたまらない。
だからこそそれがいい。
小娘のような無邪気な答え。
八月になれば
向日葵がいい。
陽に向かい、咲く大輪は幸せに導く道標。
九月になれば
……。
菊は?萩は? と、誘いをかける。
小首を傾ぎ小さな声で、
菊かな。
してはいけない催促をした。
十月になれば
…………。
確かに思い浮かばない。
十一月になれば
何もない。
考えることさえ放棄の様。
ここから先に、答えはない。
もはや蚊帳の外にいる。
軽く頷き、私は黙る。
残照を惜しむ可憐な花も、耐えて咲く冬の花も、どこか悲哀と結びつく。
それがきっと嫌なのだ。
私たちは今、梅林の中にいる。
もし
三月になればと問えば
Qちゃんは
梅がいいと答えただろうか。
選ばれた華々達。
いっぱいの悲しみを経た人生。
だからこその選ばれた華々達。
Qちゃんの傍で咲き誇る。Qちゃんの傍で笑っている。
四月になれば
桜がいい。
五月になれば
菖蒲がいい。
六月になれば
紫陽花がいい。
七月になれば
百合がいい。
八月になれば
向日葵がいい。
Qちゃんとの問答はいつも楽しい。
そしていつも何かを教えてくれる。