スライムと私
ここはレヴェラ・ミラ、いくつもの世界とつながる世界。
いろんな世界がくっついて、いろんな生き物が流れ着く。
そうして、流れてきたいろんな生き物が住んでいて、みな、種族や言語、宗教の違いなど関係なく一緒に住む世界。
みんな仲良く一緒に住んでいても争いは起こります。
みんな仲良く一緒に住んでいるから争いが起こります。
やれ、私の種族が優れているだの、やれ、この田舎者めちゃんと喋れだの、私の神様こそが本当の神様だの、
きっとそれはいつの時代も、どの世界でもきっとそう。
そしてこの世界に私はやってきました。
「やぁやぁ、迷子の君、美しいね。」
真っ暗な場所から声が聞こえてきたと思ったら、突然光る小さなお人形さんがふわふわ飛んできた。
まるで絵本の中の妖精さんみたいな子は私に優しく話しかけます。
「驚かせてごめんね、急にこんな場所に連れてこられて心配だね」
びっくりしたけど大丈夫、話をしてみます。
「私はおうちにかえりたいの」
「そっか、そうだよね。帰りたいよね。」
心配そうな目で私をみる妖精さん。
「安心して、僕は妖精ガイドのウィルだ!よろしくねお嬢さん」
ちいさいけど頼もしいお友達ができたみたい。
「うん、よろしくウィル」
「それじゃ、ここにくる前の事を少し教えてもらってもいいかな?」
「うん、私は川で遊んでて、それで、帽子が飛ばされて、それを追いかけてて、、あれ」
「そうかい、そうかい、もう大丈夫。心配ないよ、きっと川に流されてここについなのかな?」
「助かってよかったね?」
「うん!」
それじゃ元居た場所に戻ろうね。
「わかった!」
ふわふわ浮いているウィルはこの世界はレヴェラ・ミラという場所だと教えてくれました。
これから、3匹のモンスターを倒したら元居た場所に還れるみたいです。
「最初のモンスターはすらいむだよ、すらいむは知ってる?」
「あの、もちもちした触感のオモチャのこと?」
「へぇー君の世界ではスライムはオモチャになっているんだね。」
「そうだよ、青とか赤とか、ピンクとかいろんな色のスライムがあるんだよ」
「青とピンクはわかるけど、赤は確かデッドリースライムで致死毒もってたと思うんだけど。」
「ちしどく?赤のすらいむはね私ももっててね、びよーんて伸ばすと気持ちいいよ」
「そ、そうなんだ、それじゃ大丈夫だね。さっきあげたこんぼうでたたいてね」
「わかった。」
薄暗い洞穴みたいな所から、青空が広がる草原を歩いていくと半透明のボールのようなものが見えてきた。
半透明のボールはふるふるとなみうちながらこちらに転がってきている
「やあやぁ、待っていたよ、我が宿敵よ、私がこの世界に生れ落ちてはや2日、もはや誰も止めれぬ速さで育つ私を誰も止められない。
話が長いすらいむは放っておきます。
「すらいむって喋るの?ウィル?」
「ああ、君も知っているすらいむだろ?さぁ、倒すんだ!」
私のしっているスライムとはちがうんだ。
「何を話している。さぁどこからでもかかってこい」
半透明のふるふるは威嚇してきました。
「やだ、戦わない。」
「まさか、戦わないだと?」
半透明のふるふるは驚いています。
「貴様、すらいむの誇りをどうしてくれるのだ!!」
「誇りとかよくわかんないけど、あなたはやさしい目をしているもの!!」
半透明のふるふるが優しい目をしている気がしたから言ったんだけど。
「すらいむに目なんてあったっけ」
ガイド妖精のウィルには分からなかったみたい。
「まさか?!貴様は私の目を見ることができるというのか」
「すらいむに目なんてあったんだ。」
すらいむさんもウィルもとっても驚いてる。
「おいガイドの妖精よ、貴様契約の呪符は持っているか?」
「あるけど、」
「お嬢さん、その呪符の裏を少し舐めて私に貼り付けるのだ!!」
「え、ばっちぃからイヤだ」
なんか気持ち悪いこと頼まれたから断った。
「むむむ、そうか、ならばやはり戦いで決着をつけるしかあるまい。」
「ねぇ、ウィル!このスライムさんてこの棒で殴ったらどうなっちゃうの?」
「すらいむがケガをして、耐えれなかったらすらいむは死ぬよ」
「そうなの?だったら絶対戦わない。」
こんな棒で叩いたら痛いもんね。叩くのはよくないね。
「でもこのすらいむを倒さないと君はもとの世界に戻れないんだよ?」
「それは困る!!でも戦わない。」
はやく元の世界に帰りたいけど、すらいむさんは叩きたくない。
「そうか、困ったな、ここで足踏みしている時間はないのだけれど…君は生き物の命を奪いたくないんだね。」
「うん!当たり前」
ウィルが不思議な質問をしてきた。誰だって誰かの命を奪いたいなんて思っていないよ。
「でも君は生きている、生きるために必要なことは、食べること、寝ること、働くこと、これは君もしていることだね。」
私はちょっと考えながらうなずいた。
「そう、それじゃ、君は何を食べているの?」
「おい!」
「ごはん!それとお味噌汁!好きなおかずはね、ハンバーグ!」
「それはなにでできているか知っているかい?」
「こら妖精!!」
「ごはんはごはんでしょ?お味噌汁は、お味噌とお豆腐とわかめとお味噌!ハンバーグはお肉と玉ねぎで作った事があるよ!」
「そう、そのお肉ってなんの肉なの?」
「牛肉と豚肉?」
「その牛肉と豚肉はきっと動物の、生き物の肉だよね。」
「ふわふわ浮いてないで降りてこい卑怯者!」
すらいむさんがなんか言っている
「おなじようにごはんも植物だろ?君はそれらを食べて生きている。君は植物と動物も同じ生き物としてみているのに、それを食べるのはよくて殺すことはよくないというのかい?」
ウィルは肩をすくめて首を横にゆっくり振りながら続ける。
「それはあまりにもかわいそうだよ。この世界でも倒したモンスターは世界に取り込まれてまた生れてくる。君の世界でも食べたものは君の血肉になって生き続ける。」
確かに私は他の動物や植物から出来たごはんを食べている。食べなきゃ死んじゃうから。
「何がちがうの?君が倒して先に進まないのは、君の世界で言ったら、食べるのをやめて死んでいくことと同じことなんだよ、」
そんなのちがうと思った。私はべつに生き物の命を奪ってはいない。
「いままでさんざん他の生き物の命を奪ってきて、それはあんまりじゃないかい」
「私はそんなことして来てないよ!!わたしがお米さんやお魚さんやとりさんを殺してきたの?」
「それは違う、生きるために命を頂いていたんだ。」
「命をいただく?それって何が違うの?」
「生き物はみんな、自分以外の何かを食べて生きているんだ。」
「それはずっと昔から繰り返されてきた。」
「食物連鎖って言葉を知っている?例えばね、草を食べる虫がいて、虫を食べる動物がいて、その動物を食べる大きな動物がいて、動物が死ぬと土に還って、その栄養でまた草が育つんだ。」
ウィルは難しい事を言っているけど、きっとそれが世界の仕組みなんだなっていうのは、なんとなく分かった気がした。
「おおきな世界の仕組みの中で、命がぐるぐる回っているんだよ。」
「そっか、必要な事なんだね。」
「その通り、そして君はそのもらった命の分、しっかりと生きなければいけないんだよ」
「うん、わかった。」
「素直でいい子だね!」
「それじゃすらいむをたおそう!!」
「いつまで待たせとるんじゃ、ワレ!」
「なんかいつのまにか喋り方がかわってるけど、さっきのすらいむくんでいいのかな」
「なんじゃい、ワレ、ぶっとばすぞおら。」
「ウィル、なんか怖い。」
「怖くないっ、さあ戦うぞ娘っ子よ!」
「嫌っ!!」
「なん・・・だと。」
「ぜったいにいや」
なぜかすらいむさんはまるまったからだをくずして地面の上に伸びきってしまった。
「キミ…さっきの話聞いてた?」
「聞いてたっ、でもすらいむさんは喋るもん!」
「なんと心が優しい娘っ子じゃ」
「すらいむさん、さっきのおはなしなんだけど、じゅふがなんとか」
「おぉ、覚悟を決めたか、娘っ子よ」
「これはあまりおすすめしないけど。」
「これをすらいむさんに張り付けるとどうなるの?」
「要するに名前をつけて、飼うことになるんだよ」
「ぺっと?」
「みたいなものかな?」
「さー、さぁさぁ、我に新しい名前をつけるのだ!」
「使い方は血で張り付けて張り付けたモンスターに名前を伝えるだけだよ。」
「妖精!正式なやり方を教えてどうする!!」
「君の悪だくみはこの子にはまだ早いよ」
「おのれ妖精め、まぁいい。」
「それじゃあいくよ!!」
ウィルから小さいナイフと呪符を借りてすらいむさんに名前をつける。
「君の名前は…」
「まーる!!」
「えっ?!」
すらいむに張り付けた呪符は光をはなちながら半透明のふるふるに吸い込まれていった。
急激にすらいむの身体が小さくなっていき、スライムの中から呪符が出てきた。くるくると回りながら、私の目の前にゆっくりと飛んできた。
呪符の中にすらいむさんが吸い込まれたみたいだ。
もともと呪符だったものが一枚のカードになって手の中におさまっている。
「これでまーるを食べなくて済むね。」
「君はスライムを食べるつもりだったの?」
「だってウィルがそういってたでしょ?」
「君にはまだ難しかったかな」
「それじゃあ、その呪符を手にもって名前を読んであげて」
「まーる!!」
カード型の呪符が光を放ち、呪符からすらいむの”まーる”がとびだした。
「なぜそんな名前になってしまったんだー!!」
「え、可愛かったから?」
「あはははは、よかったねまーる!」
「うるさいを妖精め!やつ裂きにしてくれる。」
「ははっどうやってやつ裂きにするのさ!」
「よかったね。これで次のステージにいけるよ」
「よろしくね”まーる”っ!」
「我はそんなに可愛い名前ではなーい」
そんなこんなでまーるを仲間にした私は次の階にいくのでした。




