【ネタばれ注意】 おまけ:とある報告書
この章は、シナリオに関するネタバレを含みます。必ず、最後まで(できればクライマックスまでは)目を通してから閲覧をおすすめします。
この報告書は、事件の重要参考人「赤城 玲奈」が作成していた日記について、事件に関連の可能性がある箇所を抜粋の上報告するものである。
◇機甲歴42年×月×日(赤城玲奈、8歳)
きょう、おとうさんのまご?のこにあいましたとってもやさしいいいこでした
いっしょにてをつないで、あそびました。わたしがおよめさんであのこがおむこさん! とちゅうわたしがころんだら、いっしょにないてくれました。
なまえをおしえてくれました。けんだって!!わたしも、モルガだよ、っておしえました!
あしたもあそびます、たのしみだなぁ!!
◇機甲歴54年●月▼日(赤城玲奈、20歳)
賢に送ったお金が返ってきてしまった。「アムリタの人からもらう物なんてない」だそうだ。
どうして? たしかに宛名は別人だけど、ちゃんとあのときのクローバー、封筒に貼ったのに。私がもう前の名前は使えないって、賢ならわかるよね?
お義父さんにも怒られた、社長にばれたらどうする、って。どうして? 私は、あなたを助けることも許されないの?
賢の字で書かれた私の名前が書いてある封筒と手紙は、ずっと取っておこうと思う。会いたいよ、賢。賢賢賢賢賢。
◇機甲歴57年▼月◇日(赤城玲奈、23歳)
お義父さんが亡くなった、アムリタにはもう居る理由がない。ここには賢もいない。
だからお葬式が終わったら早々に退社した、でもお父さんが常日頃言っていた「人の為になる事をしなさい」という言葉を守る為に、何か人の役に立つ仕事を探さないと。
やはり医者だろうか? 私の医学的知識はお義父さんが教えてくれたものだし、人の役に立つことは間違いないはずだ。
私がんばるよ、賢。賢賢賢。
◇機甲歴59年◇月×日(赤城玲奈、25歳)
信じられない信じられない信じられない信じられない!
賢だ賢だ賢だ!! 私が働いてる病院に来てくれた!! これからは好きなだけ助けてあげられる! あぁ信じられない、これからはずっと一緒に居られるんだ、神様なんて信じてなかったけどこれからは信じられそうだ!
でも賢は恥ずかしいのかな? 昔の事を聞いても私の話題が出てこない。
でもでも大丈夫、私と賢は一緒だったもん。あの三週間と三日は私にとって(ここから先は判読不能なほど文字が乱れている)
◇機甲歴62年×月●日(赤城玲奈、28歳)
どうしよどうしよ、賢がフォーチュン出向だって! ずっと一緒に居られると思ったのに。フォーチュンっていったら、若い子とか美人さんが一杯だよ、そいつらに騙されたらどうしよう、賢を守らなきゃ。
そうだ私も出向すればいいんだ、そうだよだって賢は内科医だ、外科医の私も行けば怪我だって怖くなくなるよ。そうと決まれば早速上長に言おう。賢と一緒の時間も増えるよね、だって同じ患者さんたちを診るんだから。
大丈夫、これからも一緒だよ、賢。
◇機甲歴63年●月◇日(赤城玲奈、29歳)
ユメコ教導隊診察メモ
エリル:
ケガが多すぎる、スペックを見るに民生系の義体だから多分フルスロットルに耐えられないんだろう。
可愛くて良い子だし、あの頃の賢を思い出す優しい子だ、何とかしてあげたい。(☆10)
カナ:
どこかぼーっとしてる、この子が見ているものはどこだろう? 必要以上に踏み込んでこない、死亡経歴有りってのが良く解らないし。
でも、いつもエリルちゃんと楽しそうにしていて、私にも明るく話してくれる。それはうれしい。(☆8)
花都ユメコ:
他の機体より負荷は少ないみたい、やっぱりたたき上げの軍人さんは違うなぁ。
最近よく賢と話してる、お仕事の話ばかりだけどなんで笑顔なの? 賢もなんでその人と話すの? 私は? ねぇ私も……こっちをみてよ賢賢賢。(☆1)
唐草あやめ:
この人の機体も、乗る人の事を考えてないというより部品としてみてる感じがする、正直乗る方もどうかと思うよ。
しかもこの人、賢とタイチョーさんを二人にしようとしてる。気づいてんだからね。敵の仲間。(☆2)
雪村リツカ:
良く解らない、人と融合する機体なんて正直初めて見るけど、それ以上に本人の方が気になるな。目がとても深い。本音が読めない。正義とやたらと口にする、なんだか怖いな。精神が歪?(☆3)
◇機甲歴63年▼月◇日(赤城玲奈、29歳)
なんでなんでなんで、おくすりてにはいらない、いつものわたしにならないと賢にきらわれる
アムリタが、ほしければエリルちゃんたちのことおしえろっていってきた
やだよ、あのこたちをうらぎりたくない、エリルちゃんたちはいいこだもん
でもでもでも賢にきらわれたくないの、それだけはいやだ、いっしょにいられなくなるどうしようどうしよう賢賢賢けんけんけんけんけん
◇機甲歴63年▼月×日(オープニングの数日前)
結局断れなかった、薬がないと些細な事で感情が激発しそうになる、
賢が盗られそうになってる、タイチョーさんを見る目が明らかに違うの、段々と笑顔が変わってきた。
それはダメだ、賢は私と――だってだって子供の頃に守ってあげるって決めたんだ。守ってくれたんだ、あの子は賢は私を守ろうとしてくれたんだ。私より小さいのに私の前に出てくれたんだ。
だから今度は私が守るんだ、アムリタからも、あの泥棒からも私が私が。
エリルちゃんの笑顔が眩しい、直視したくない、ごめんね裏切ってごめんね。
カナっちが見透かしてるように感じる、ごめんね。
リツカちゃんが怖い、あの瞳が怖い、私を見てるようで観てない、私の奥をのぞき込んでくるあの瞳が。全部知ってるんじゃないかって思わせる目が。
泥棒を後押しするあの女が憎い、隣にいるのは私なんだ邪魔をするんじゃない。
泥棒泥棒詐欺女、賢は渡さない絶対に。
(以降は謝罪と暴言と恐怖が、めちゃめちゃな順でつづられている。その中で、広瀬賢との思い出と現在の様子については、正確に、事細かく、綴られていた。)