Md09:白薔薇はいまだ蕾のまま
GM:
次のシーン。
ユメコが、クライマックス前にやりたいシーンがあるとのことですが。
ユメコ:
ええ。ガーディアンに乗って、赤城さんを追っている最中。あやめに通信を送るわ。
個人通信だけど、小隊内では秘匿してないから他の人も登場自由、てことで。
あやめ:
「通信? ……はい、どうかしましたか、ユメコさん?」
ユメコ:
「……あやめ、追いつくまでの雑談として、話したいのだけど」
「さっき、どうして私を殴ろうとしたの?」
「エリルちゃんが守ってくれたけど。あなた、本気だったわよね」
あやめ:
「……申し訳ありません。教官が興奮のあまり周りが見えなくなっていたので。ああしないと、止まってくれないと思ったんです」
ユメコ:
「そう、よかったわ。突然怒鳴ったりして、ごめんなさいね」
「何も考えてなかったわけではないのよ。『今は圧をかけるべきだ』って考える冷静な自分がいて、言いたいことがある自分を止めなかった。そんな感じね」
「でも、結果はこれだしね。悪かったわ」
言葉と裏腹に、安心した様子で。
あやめ:
「何故殴ったと、思ったんですか?」
ユメコ:
「あたし、あやめとは、割と馴染みだと思っているわ」
「馴染みのあなたが、『赤城さんを守るためにあたしを殴った』なら……それはとても悲しいなって、思ったのよ」
―――夢見てきた出会いは他の誰かのもので、私のものじゃない。
あやめ:
「……大丈夫ですよ、ユメコさん」
「私は、あなたが誰よりも臆病な事を知っています。ですが、あなたが誰よりも頑張り屋さんな事も知っています。そして、誰よりも心の優しい人だという事も」
「だから私、例え大金積まれようとも、借金チャラにしてあげると言われようとも、あなたに最後まで味方しますわ」
カナ:
ああ……一つの物語を見れてる気分だ……とてもスッとする。
ユメコ:
「それはたとえ、広瀬さんがそばにいないと赤城さんが生きていられない、としても?」
―――王子様が助けにやって来て、結ばれて幸せな終わりを迎えるのは、囚われの可愛らしい少女や美しいお姫様、そんな特別な人たちのものだった。
あやめ:
「あの人は、確かに広瀬さんを愛していたのかもしれません。ですがおそらく、彼女はチャンスを棒に振って来た」
ユメコ:
「どうすればいいのか分からなかったのは、私も同じよ。だからあなたを頼った」
―――特別じゃない自分にそんな出会いや、王子さまは来ない。
―――そう思って諦めて……諦めたふりをして自分を騙してきたんだ。
―――そう思っていたんだ、あの時あの場所で変わろうと思うまでは。
あやめ:
「はい。そうして折角あったチャンスをユメコさんが掴みました。ユメコさんは必死に掴み取り、あの女は掴まなかった」
エリル:
その点は、アタシも同意するとこかな。
あやめ:
「それなのにあの女、あろうことかユメコさんを盗人呼ばわりしました。今の今まで掴まなかった自分が悪いクセに、ユメコさんを悪人呼ばわりしやがった……」
―――だから きっと 白蕾は 花を咲かせようとしたんだ。
でも。
ユメコ:
「それは、……『彼女のための広瀬さん』を奪う理由としては、あまりにワガママではないかしら」
「どこかから見ている『誰か』がいたとしたら……きっと、だれも納得しないわ」
リツカ:
「いや~なんか陰気臭い話をしているんだね」
唐突に、僕の声が通信で割りこむ。
「今そんなことを考えていても結論出せないじゃない? まずは赤城先生を見つけないとね」
「それに、赤城先生が悪いことをしてしまったのも事実だし。残念だけど、正義の味方として、僕もやるときはやるしかないでね~」
ユメコ:
「……。そうね。リツカちゃん、あなたが正しいわ」
「きっと、あなたはいつも『正しい』のでしょうね。これまでも、きっとこれからも」
――悪の侵略者に恋する奴なんかいる訳ないでしょうがぁ!
リツカ:
「そうだよね! 正義の味方だもの!」
へらへらと笑う。
エリル:
「いや、そこは笑うところなのですか……?」
そろそろ通信入れようか。
ユメコ:
「みんな、リツカちゃんの言う通りだわ。つまらない話をして、ごめんなさい。急ぎましょう」
カナ:
「うん、今はすることをするだけ」
あやめ:
「……そうですね。お話は後で、あのアマをとっ捕まえてからにしましょう」
エリル:
「……教官、その……えと……」
まだ赤城先生を悪く言えそうになくて、口ごもる。
――恋人がいないのを!! 妬んじゃだめだと思います!!!
ユメコ:
「エリルちゃん。だれが見ても、救え、助けろと求められているのは、赤城さんよ」
「だから、急ぎましょう。彼女を助けるためにね」
エリル:
「……はい!!」
カナ:
「広瀬先生も、でしょー? ユメコ教官」
ユメコ:
「もちろん、そうよ。当たり前だから言わなかっただけ」
カナ:
「わざわざ言うことでもなかったかな……うん、行こう」
GM:
では、急ぐ5人に対し、チトセが前方に強い奈落反応が多数あることを伝えてくる……というところで、シーン終了です。




