Md06:過去と想い出こそ、今生きるすべて(前)
[医務室 / 広瀬賢 & ユメコ]
ユメコ:
会議室側の話を聞く限り。赤城さんと広瀬さんの関係が、ポイントになりそうね。なら。
「広瀬さん、あなたは赤城さんのことを、いつから、どの程度知ってる?」
GM/広瀬賢:
「最初に会ったのは、今の病院に入ってからのはずです。それ以前はまるで」
ユメコ:
(ころころ)本当なのね。
でもそれはおかしいわ。赤城さんが、写真や伝聞であそこまで入れ込んだことになっちゃう。
「あなたから見て、赤城さんはどんな風に接していたかしら? 戸籍上は親戚関係と聞いているし、同僚としてしばらく働いてたんでしょう?」
GM/広瀬賢:
「待ってください、僕と赤城さんが、親戚関係? アムリタ社員や幹部の方ではなく、親戚?」
と聞き返します。
ユメコ:
「書類上はそうなってるわ。会ったこともあるかもしれない。彼女はあなたより年上だから、彼女だけ覚えていることもあるかも」
GM/広瀬賢:
「うちは直系の兄弟しかいないはずです、それに、普段は普通の先輩後輩としてしか接してません。確かに、やたらと可愛がってはもらいましたが……そこまで気にされるほどの事は……」
ユメコ:
言いづらいけど……。
「今の暮らしぶりを詳しく聞かれたとか、援助を口に出されたとか、ないのかしら?」
GM/広瀬賢:
「……。彼女がお酒を飲まれた時に、援助を言われたことがありましたが。断りましたね。そもそもそこまでしてもらう義理がないですし」
ユメコ:
(ころころ)これも本当……らしいけど。
GM/広瀬賢:
「あとは、同じくお酒の席の冗談で『養ってあげる』とかいわれたことはありましたが」
ユメコ:
カッチン。
「いーじゃない、『ぜひお願いします』って答えちゃえば。渡りに船でしょ。案外本気かもしれないし?」
エリル:
やっぱり、めちゃくちゃ気にしてるじゃないですかー!
GM/広瀬賢:
「さすがに、そんな冗談は受けられませんよ。それに、二、三年程しか付き合いは無いですし」
ユメコ:
「そ、そうよねそーよね。酔った年上の美人に『養ってあげようか』って言われて、コロっといっちゃう人じゃない、もんね。うん」
「……ほんとは、プライベートだから聞きたくないけど。そうまでして、父親には頼れないの? そんなに溝が深い?」
GM/広瀬賢:
「祖父が、とある子供を引き取った事があるんです」
彼はポツリと語りだす。
「正直、顔も、一緒に何をしたかも覚えてませんが。その子とは数週間ほど、一緒に暮らしていたことがあります」
「けれど、あの人は……父は、その子の何かを見て強化人間系の薬を思いつきました」
「祖父は、父からその子を守るために隠しました。それ以降、どうなったのかは僕にも教えてくれませんでした」
ユメコ:
かなり大事な話が出たわね。とっかかりになるかも、と思いつつ。
「お父さんに頼ってはいけないと思った理由は、それで全部?」
GM/広瀬賢:
「他にもあります。あの人が社長になったとたんに、不明瞭な薬が増えたんです」
「明らかに、一部の個人……リンケージや強化人間に向けた調整が行われた薬などが、急激に増えました」
そう嫌悪感をあらわにする。
「もう、祖父の頃のアムリタではなくなってしまいました。だから、家を出たんです」
ユメコ:
「なるほど……さて」
会議室側の会話を聞きつつ。
「あなたは、赤城さんと会ったのは最近って言ったけど。赤城さんはしっかり面識があるみたいよ。子供の頃から、あなたを大事にしてた」
「ここまでの話だと、該当しそうな人は一人しかいないわ」
[つづく]