むっつり
約2時間後、俺たちは門の前に着いた。その街は高い石壁で囲まれておりさらにその周りを水に満ちた堀で囲まれていた。
昼頃だが門前の人通りは多くその傍らに見張りのような兵士が立っていた、そして俺たちは少なからずその視線を受けていた事だろう
現在俺はイグシの肩の上に担がれていた
そして俺を担いだまま自慢げな顔で話す
「デカイ街だろ?ここは世界の中心だからな!文字通りの中心都市、果てから最も遠く最も安全と言われる街だ!だからこそ物も人も流通が多く世界有数に巨大な都市に発展したんだ」
「はぁ…どうして果てから遠かったら安全なんですか?」
「あぁ、果てからはよく分からん魔物みたいなのが攻めてくるんだよな。大抵の奴はさして強くも無いがその数が尋常じゃなくてな、倒しても塵みたいに消えちまって利益もねぇが…まぁ経験値だけはそこそこいいからレベル上げにはいいかもな」
やや困ったような表情で話し左肩だけを竦めてみせる
「そうなんですか、ところでいつ降ろしてくれるんですか?」
「あぁ、すまんな、忘れてた」
俺の言葉に軽く謝罪し地面に降ろす、その瞬間から周囲の視線も徐々に散り散りになっていった
「さて、さっさと街に入るか」
そう言うとイグシは門に向かい歩いていった、それに続くようにして俺も歩いていった
街に入ると石造りの建物の群れが視界に入ってきた、中央の通りはやはり門前と同じように人の往来が多くその多くは鎧やローブのようなものを身につけていて腰や背中に武器を携えていた。
周囲をキョロキョロと見ているとニッわずかに笑みを浮かべたイグシが説明するように話しかけて来た
「この街の構造は大きく分けて4つで出来ているんだ。外周はギルドのある冒険者区画、外敵が来た時に戦力となる冒険者が即座に対応できるようになってるんだ、一番人が住んでるのもここだな。その次が商業区画、職人区画と続いて中央が貴族区画だな、貴族区画の中央には王城があってこの国の王様が住んでんだ!」
「へぇー、そうなんですか…ところでこれからどこに?」
「まずはギルドだな、先に面倒事は済ましちまった方が楽だからな」
そう言いながらイグシはさっさと歩き出していく、その後をついていきながら周囲を思わずキョロキョロと見回してしまう。アニメやゲームでは見慣れていたとしてもリアルで見ると全然違うものだ。石造りの家も冒険者達の装備や服装の傷や汚れ、継ぎ直しなんかに生活感が滲み出ているし中には獣人のようなケモ耳も………ん?ホンモノ、作り物なんかじゃないホンモノのケモ耳…
「何ボーッとしてんだ?早く行くぞ」
「あ…あぁ、はい、すみません。初めて見たものでして」
イグシの催促に慌てていつの間にか止まっていた脚を動かす。そしてどこか面白いものでも見るような表情のイグシから声をかけられる
「やっぱ初めて見たら驚くよな、お前は好きなタイプなのか?」
「えぇ、いいですよねぇ…やっぱりファンタジーの世界なんですねぇ…」
思わず感慨に耽るような声が出る、リアルケモ耳…いいなぁ…もふもふしたい、きっといい匂いするんだろうなぁ………はっ、ダメだ、こういう思考は身を滅ぼす
「それでやっぱりあぁ言うのは獣人とか亜人とか言われてるんですか?」
「そうだな、人に近い形態をしたものは大抵亜人と言われててその中で獣の特徴を持ったのが獣人だな」
「なるほど、わかりました」
「そろそろ見えて来たぞ?ほら、あれがメインギルドだ」
そして一際大きな建物が見えてきた
獣人種
一般に獣人種と言われる者たちには血統付きと言われる者がいる、その者たちは同じ種族の中でも特に優れた才能を持っている事が多い