シ
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ちょっとだけ変更
視界を覆う光が徐々に収まりつつある中、心地よい風がそっと頬をくすぐる、そして周囲の明かりに目が慣れ始めて辺りを見るとそこは広い平原だった。
遠くには雲のかかる山峰が連なり目の前にはただただ草原が広がっていた。そんな景色を思わず眺めていると隣から声がかかった
「お前が今回連れてこられた奴だな?話は聞いているぞ!」
太く芯のある男らしい声だった、声の方へと視線を向けるとでかい男が腕を組んで暑苦しい笑顔を浮かべ立っていた。
タンクトップにも似たノースリーブの肌着のような上着にニッカポッカのようなやや動きづらそうなズボン、その身体はでかい、という言葉がぴったりで身長は190cmはあるだろうか、ほぼ剥き出しの上半身はまるで岩の如く隆々とした筋肉が盛り上がっており黒く焼けた肌に対して真っ白な綺麗な歯がやけに目立っている。
こちらには敵意どころか好意的な印象を抱いてるようにも見えるがその姿には威圧感を感じざるをえなかった
「あ、えっと…すいませんが誰ですか?」
そんなつもりはなかったのだが緊張のせいでわずかに声が震えた、いくら物語で似たような状況を知っていてもいざ体感するとなると緊張するものだ
「マスターから聞いてないのか?俺は威久志 宗矢、この世界ではイグシと名乗ってるがお前と同郷出身だ!あまり緊張しなくてもいいぞ!」
俺の言葉にわずかに疑問の表情を浮かべるがすぐに取り払って自己紹介を始める、そして握手を求めるように手を差し出してきた。その表情や声はとても真っ直ぐなもので警戒心はすぐに解けた
そして握手に応えて手を差し出しながら話す
「俺は…井坂 修、多分威久志さんと同じくマスターと名乗る女の子にここに連れてこられたんです。それで…なんで威久志さんはここにいるんですか?先程俺の事は聞いていると言っていましたが」
「やはり説明されてなかったのか、俺はお前の教育係を頼まれたんだ!この世界での戦い方、生活の仕方、金の稼ぎ方、国の常識やルールを教えるためにな!」
そう言いながら俺の手を力強く握り手を振る。わずかに手が痛んだが決して表情には出さなかった
しかし教育係、しかも俺と同じ世界から飛ばされて来たと来てる。大抵こういうのは住んで慣れるものだろうにこうして教えてもらえるとは、環境は相当恵まれているだろう
「なるほど、わかりました。今日から宜しくお願いします」
「なに、俺だって誰かがみすみす野垂れ死ぬのを見過ごすわけにはいかねぇからな!それと敬語は無しでいいぞ、名前もイグシさんじゃなくてイグシで構わんからな」
そう言いながら俺の背の方へと歩き出した、そちらへと振り向くと離れた場所に巨大な壁らしきものが見える、おそらく街か何かだろう。俺は彼の後を追うようについていった
「歩きながら説明するが、まず名前は偽名かなんかを使った方がいいぞ。ここでは名字を持ってる奴はあまりいない、余り目立ってもいい事はないからな」
彼は歩きながら話しかける、決して走ってるわけではないのに歩幅が大きいのかこちらはやや早足でなければついて行く事ができない
「そして仕事について、この世界はギルドがすべての仕事を管理しているんだ。畑仕事も冒険の仕事も魔法研究も服飾も建築も何もかもな。ただギルド内でも農業ギルド、冒険ギルド、商業ギルドといったように別れていたな。まぁ向こうの役所みたいなものだな
そしてその中でも細かく分かれてたりするんだがその辺は省いとこう、お前は主に冒険ギルド、魔法ギルド、魔術ギルド辺りに加入することになるだろうよ」
返事をしようとしたがわずかに息が弾んでいるせいで返事が遅れる、そしてこちらの返事を待たずして話は続いた
「そして金の稼ぎ方だが、手っ取り早いのは依頼を受け達成すること、そしてモンスターを退治してギルドに売ることだな。依頼は説明しなくてもわかるよな?モンスターは倒したらアイテムボックスにでも入れてそのまま渡せば大丈夫だ、あいつらは害獣だが素材は有用だからな
そしてこの世界の常識についてだが…まぁだいたいは慣れだ、そして一つ注意しなくてはいけないのはこの世界は丸ではない。この世界には『果て』が存在していてその先には無がひろがっているんだ、全くなにもが存在してなく何度も調査を試みたがなにも発見される事は無かった。形としてはまるで正方形の板のような世界だな、しかし広さは地球よりは広いぞ?過去に音速を超えて飛ぶことのできた魔術師が世界の端から端まで飛ぼうとしたが休み休みとは言え5年以上かけても到達できなかったほどだからな……って聞いてるか?」
彼が話し続けるなか、俺は汗だくで疲労困憊になりながら着いて行っていた、街までは後少し……だと思う
威久志 宗矢 Lv/58
生命力/198 筋力/204 技術/185
体力/188 防御力/176 知能/130
記憶力/181 魔力/203 ??/?
スキル/鑑定 神代の指導者 千手の技術 無手の技術
魔法/魔術基礎【極】 魔法基礎【極】
神代の指導者
指導者として類稀なる才能の証、一度弟子を指導すればそのものは十全以上に成長し、そして弟子からも学ぶことで自らの成長を続ける
弟子の人数、成長に応じてステータスにボーナスが加算される
千手の技術
ありとあらゆる武器を使用する事が可能となる。例え初めて見る武器でも豊富な経験から使い方を察知し使いこなす事が可能となる
無手の技術
武器を持たないあらゆる体術を使う事ができる、あらゆるものを穿ち砕くその肉体はそれそのものが武器である