に
ずっと黒ばかり見ていたから少し眩しく感じたがそれほど強い明かりでは無かったのですぐに目は慣れた ていく。そこにあるのは部屋だった、ものが所狭しとと置いてあるが整頓されて散らかった印象は感じない。壁には全方位に本棚が置いてあり出入り口は無く天井にはぼんやりとオレンジの明かりを放つ球が2つ浮かんでいた、そしていくつかの机の上には薬草っぽい草や石から削り出したらしい色合いの乳鉢、砕けた鉱石、発光したり泡だったりしている液体の入った瓶などが並んでいてどこか錬金術師や魔法使いの部屋のような印象を覚えさせる、そしてその机とは別の、小さな丸いテーブルのそばで椅子に座った少女がいた。
彼女は流れるような青い髪を肩にかからない程度に切り揃えており、しわくちゃの大きなトンガリ帽子を被っていた、瞳は透き通った水色で肌はとても白いがその頬はほんのりと桃色に色付いている、服装は古ぼけた茶のローブを着ていて小柄な彼女にはやや大きすぎるように見える
そしてその少女は先程の暗闇で聞こえた甘やかな声で話しかけてきた
「こんにちは、井坂修くん♪ようこそ僕の部屋に♪」
少女は笑顔で芝居掛かったように手を差し出して話しかけてきた
「あぁっと…結論だけ、聞くけどさ、俺は何をすれば、いいの?」
緊張のせいで声が突っかかる、決して見とれていたわけではない、本当にそう言うわけではないのだ
「まぁ立ち話もなんだし座りなよ♪お茶ぐらいなら出すからさ♪」
彼女がそう言って軽く指を振ると丸いテーブルを挟んだ彼女の座る向かい側に椅子が現れた
「あ、うん。そうするよ」
突然の事に思わず妙な反応をしてしまった、わずかに訝しみながらも椅子に座る、学校の椅子のような造りだが完全に木製で表面は滑らかに整えられ丁寧に作られているのがわかる。
「さて、早速だけど君には君のいた世界とは異なる世界、つまり異世界で冒険してもらおうと思うんだよね♪」
彼女は再び軽く手を振りテーブルの上に銀のティーセットを出現させながら事投げもなく言った
「あぁ、うん。そうなんだ」
「あれ?あまり驚かないんだね、これまでの人達はわりと戸惑ってたのに」
わずかにつまらなそうな顔をして彼女が話す、その間ティーセットはひとりでに動き紅茶を淹れ、そしてティーカップが俺の前へと移動していた
彼女の話に俺はあまり驚くことは無かった、ある意味予想通りではあったからだ。異世界に連れられ冒険をさせられる、今時のライトノベルの定番だ。
紅茶のカップを握りながら日常の会話でも話すように問いかけた
「まぁね、それでいくつか質問していいかな?」
「もちろん構わないよ♪」
彼女は笑顔で快諾する、聞くべきことは多くある、なんて小説では思うのだろうか思考は意外とシンプルだった
「まず、どうして俺が呼ばれたの?そして俺を異世界に冒険させる目的は?」
「僕が君を選んだ理由かぁ、うーん…天気が良かったからかな♪そして君を異世界で冒険させる目的、それは強くするためだよ♪」
なんとも適当な答えだ、天気が良かったから選んだ、人を強くするために冒険させる、彼女の得はないだろう。
「それって君に得はないんじゃないの?俺が強くなっても君の役に立つとは限らないよ」
「もう一つ言うなら、娯楽かな♪君みたいな凡人が異世界で心ときめくような冒険をする、そう言うお話ってすっごく面白いじゃん♪」
俺の疑問に答えるかのように人差し指を立てて彼女は話し出す、そしてとびきりのプレゼントを貰った子供のように無邪気な笑顔で答えた
「なるほど、確かに元いた世界でもそう言う話は人気があったからね。別の質問だけど、これから行く世界はどう言う世界なんだ?」
「んーとね、人同士はあまり争ってないかな♪そしてゴブリンやスライムはもちろんゾンビみたいなアンデット、大きな虫やキメラみたいなモンスターがいっぱいでドラゴンだって飛んでるんだから♪それで人々は剣や魔法でバッタバッタとモンスターを倒すファンタジーな世界だよ♪」
俺の質問に彼女は少し考えて身振り手振り動かし、言葉に緩急をつけ躍動感を持たせようとして説明をしていた。
その度にローブの裾や袖はヒラヒラと揺れ動きづらそうだと思ったが、そんな様子は微塵も見せないので気にしないで質問を続けることにした
「なるほどね、それで俺はこのままその世界に行くの?流石にそれは無理だよ、それに現実に異世界なら大気の組成が違って息ができないとか言語が違って話が通じないとか、問題は結構あるよ?」
「その点は問題ないよ♪環境に関しては僕が向こうの世界に適応できるように君の身体を変化させてあげるからね♪そしてステータスに関して、これはいくつかのプレゼントをあげるよ♪」
彼女は嬉しそうに笑顔を浮かべそう言った
井坂 修
身長/174cm 体重/67kg
特徴/(元)高校生、一般に言うオタク寄りの人物だが友人は普通にいて健全な高校生活を送っていた
勉強はほぼ平均、英語はやや苦手、国語はわりと得意
スポーツは嫌いでは無いが意味なく動くのは嫌いでマラソンや持久走はただの地獄だと思っていた