#0-青と緑の転移地点
初投稿です。
毎日更新…できたらいいなぁ。
どこまでも続きそうな、雲一つない晴れ渡った青空。
そしてその下には、永遠に広がってそうな緑色のカーペットのような一面の草原が広がっている。
「ふあぁ…眠いや。ねえユミル、少し寝てから移動しない?こんなにお昼寝日和なのに勿体ない気がするんだ。」
その草原のど真ん中、ポツンとある大きな岩に寝そべりながら少年は隣に居る少女に声をかけた。
黒い髪に黄色い瞳、頭には猫耳がついた少年だ。
「ライったら少しは行動力を身に付けなさいよ!こんな所で寝てて、夜になって街が見つからずに『はい野宿しましょうねー』は嫌よ?」
ユミル、と呼ばれた少女はため息をついて横で寝ている少年を睨みつける。
少年とほぼ同じくらいの背丈に短くまとめ上げた茶色の髪。いかにも活発そうな女の子、という印象を受ける。
「そんな事を言ってもね、ここら一帯、他の人間の匂いはしないんだよ。という事は少なくともこの付近には村も街も無いって事になるんだけど。」
「なら先へ進めばいいじゃない!一歩も動かないよりかはマシでしょ?」
「地図もないのに動いて目的地に着ける自信あるの?それに、匂いが全くしないって事は、この付近には人間が立ち寄って来た形跡がないって事なんだよ。日が暮れるまでに歩いて行ける距離に村か街があるのかすら怪しいね。」
岩に寝そべったままライと呼ばれた少年は答える。
「はぁ…もっとマトモな場所に飛べなかったの?その『ゲート』とかいう魔法は…」
「無茶言わないでよ。魔力が不足してる状態で下手に起動しちゃえば、魔物のいる洞窟とか盗賊のアジトとかに転移しかねないんだから。最悪のパターンだと、海の底とかってのもあるよ?」
「うわ…。」
想像して、思わずユミルは顔を青ざめさせる。
転移した瞬間に水の圧力でペシャンコになる最期なんて迎えたくない。
「…まあ確かにこのまま寝て過ごすのも少し面白くないかな。行こうユミル。」
「でも、どっちへ進めばいいか分からないんでしょう?」
「ん?あっちでいいんじゃない。」
と、ライは一つの方角を指さす。
「何でそっちなの?」
「匂いがしたから。」
「え?だって、さっき人間の匂いがしないからって…」
「人間のは、ね。ここからまっすぐ向こう側に馬の匂いが続いてるから、最近商人か馬に乗った騎士か何かが通ったんじゃない?」
「アンタそれ最初に言わんかい!」
バシッとユミルはライの頭を引っ叩く。
結構な痛みに、思わずライは頭を押さえて涙目でユミルを見る。
「痛いよ?」
「やかましい!さっさと歩く!」
「痛い、痛いって、耳引っ張らないでー!」
まだどういう世界かも分からないのに、初日から野宿だなんて絶対に嫌。何としてでも人のいる場所に向かう!
そう決意したユミルは、暴れるライの猫耳を引っ張りながら強引にライが指さした方向へと歩みを進めるのであった。
空間転移魔法『ゲート』。
消費した魔力によって世界を超えて転移が可能な、究極とも言える転移魔法。
ただし魔力が足りなければ、安全に転移が出来るとは限らないという死に直結するデメリットもあるという、ハイリスクハイリターンな大魔法。
そんな転移魔法を使い、空間と時空を超えた旅をする。そして色んな世界で色んな国、街、そしてそこに住む人達と出会う。
それが、ライとユミルの旅の目的である。
―『ゲート』を使った二人の旅は、まだまだ続く。