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不良少年と扶養少女  作者: 常闇末
第一章 扶養少女は守られる
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第四話 腐女子の藤吉

「さて、どうしたものか……」


翌朝、教室の自分の席で頭を抱える。

教室の中にはまだ人は少ない。

電車組より徒歩組のほうが速く着くので当然だ。

言わずもかな、察してくれた通り、俺は徒歩組だ。

では、そんな教室でなぜ俺が悩んでいるのか。もちろん昨日の頼みごとについてだった。


「話しかけるつってもな……」


自慢ではないがコミュ力はあいにく持ち合わせていない。少なくとも不良には不要だろう。

昨日のイチジクの言葉を思い出す。


じゃあ、明日から彼女の面倒を見るのよ


「話しかけるきっかけすらねぇじゃん……」


あー!いらいらする!なんであんなやつ相手にどぎまぎしなくちゃいけないんだ。


「……いや、きっかけといえば……」


同じく昨日の神崎の言葉を思い出す。


次にわたしに会ったときは話し相手になってください!


確かそんな感じのことを言っていたはずだ。


「なら、話しかけるタイミングは……」


リスクも負う場所だが……授業中の屋上。


「さっきからなにブツブツと話してるんだ?」


ちょうどいいところに坂本がやってくる。

坂本も徒歩組だから既に登校してきていた。


「よぅ!坂本、ちょっと話があるんだが……」


授業の脱走に付き合ってくれないか、と頼んでみる。


「珍しいな。お前から誘ってくるなんて」

「いや、ちょっと事情が、な」


不良とはいいながらも普段は俺からサボりを提案しているわけではない。

なぜなら面倒だし、坂本と逃げて二人とも逃げ切るよりはロイヤルストレートフラッシュをだすほうが簡単だからだ。


「……ふーん、まあいいけど……」


坂本は俺のお茶を濁す態度に多少疑いをもったようだったが、なんとか了承してくれた。

囮……もとい仲間が増えた。心強い。


「それよりも……」


坂本が教室の壁を指差す。


「さっきから藤吉先生が立ち聞きしてるんだが……」


俺も坂本も一応先生の前では先生づけで呼んでいる。

坂本曰く厄介事を無駄に起こしたくないかららしい。

俺もまったくの同意見だ。


「あら、バレた?」


壁の向こうから女性の声がして、しばらくすると扉から藤吉が入ってきた。


「何、立ち聞きしてんすか……」

「ちょっと、我がクラスに忘れ物してね。入ろうとしたら話が聞こえてきたのよ。要注意生徒同士の会話よ。先生として気を付けるのは当然だわ。それに……ビンゴだったみたいだし」


確かに聞かれたらまずい内容だった。けど、


「で、何がビンゴだったんですか……」

「もちろん!男同士の絡みが見れたからよ!」


この先生の重度の腐女子っぷりに俺たちは心配すらしていなかった。


「耳をすませば……付き合うとか……突き合うとか……!」


藤吉がはあはあ、と息を荒立たせながら熱弁する。

よくもそこまで自分に都合よく解釈できるものだ。

異様な光景。ついに彼女はネタ帳らしきものに何か―――ナニであろうもの―――を書き表しだした。

鼻息を荒くして、ペンを走らせるその姿は生徒たちには反面教師として映る。

あれも一つの教育の姿なのだろうか。

藤吉は授業開始の時間までペンを走らせ続けていた。




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