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不良少年と扶養少女  作者: 常闇末
第一章 扶養少女は守られる
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第十七話 決意


「あー。出席とるわよー。あら、野宮くんは……。サボりかな?坂本くん、知らなーい?」

「……知りませんよ、あんなやつ」

「そう……。もしや、野宮くんは他の男と付き合いはじめたとか!?すると坂本くんの不機嫌にも説明がつく!どうなの!?坂本くん!」

「だから知りませんって……!」


「遅れましたー!」


教室に駆け込む。

クラスメイトたちは俺の予想外の行動に目を丸くしている。もちろん、担任の藤吉もだ。

まあ、いつもは遅刻したら来ないからな。


「あらあら。こんなに遅れたら来ないと思ってた〜。で、他の男の子とはうまくいってるの?ねぇねぇ!」

「は?男の子?なんの話っすか?」


一番驚いているのは坂本陽だろう。

昨日まで腐っていた俺がいつもの調子に戻っている。

いや、いつもより良い調子になっている。

問題は解決していないはずなのに。


「まあ、席につきなさい。もう少しで二山先生に連絡がいってたわよ〜!」

「勘弁してくださいって!無実で捕らわれるのは御免っすよ」


そして、自分の席につく。


坂本はどう思っているだろう。


更正したのか、諦めたのか。

後者だと思われていたら、説明しなければならないが、果たして。


坂本の方を見ると、笑っている。


……どうやら、説明の手間は省けたらしい。


ホント、妙に鋭いところがあるから、バカは扱いに困る。




「さて、朝会は終わりよ〜!」


起立、気をつけ。礼。


瞬間、教室中はガヤガヤ騒ぎはじめ、勉強したり、お喋りしたりと、様々だ。


「なあ、野宮」


坂本は一番にこちらの席に来た。


「俺に言うこと、あるんじゃねぇか」


今度は答える言葉も勇気も、日常を壊す勇気も持っている。


「助けたい奴がいるんだ。手伝ってくれ!」


そして、俺の日常への反逆は始まった。




「神崎はいつも昼休みに旧校舎二階の女子トイレに連れ込まれるらしい」


まだ、クラスメイトはガヤガヤしていて、俺と坂本の作戦会議もその喧騒故に目立っていない。

まあ、いつも俺たちの会話に耳を傾けようとする奴はそうそういないのだが。

……イチジク以外は。

坂本と状況を確かめあう。


「やっているのは一年二組の佐々木野江、野原智子、番場妙子の三人が主犯格だ」


ちなみに他の人たちはそれを見ても見ぬふり、だろう。

それもいじめに変わりはない。

俺の言えた話ではないけど。


「呼びにくいな。一纏めにして……そうだな、頭文字をとってサノバビッチでどうだ!」


坂本が自慢気に言う。


やはり、どう転んでも坂本は坂本。


坂本には悪いが、そのアホさ加減が一層、俺を安心させてくれた。


「あのな……サノバビッチは男性に対する罵倒語だぞ……」


坂本が意外そうな顔をして、


「え、そうなの。いや、だってビッチて言ってんじゃん」


と言う。

まあ、常用語句じゃないから覚える必要はないんだけど……。


「son of a bitch。sonの意味は分かるよな」


すると坂本は当たり前だと言わんばかりに堂々と、


「太陽」


と言った。このバカが。


「はぁ。まあ、いいや。呼びやすいからそれでもいいよ」


坂本に英語を教えにきたわけではないので、妥協する。


「さて、呼称も決まったし、具体的にどうするか、だが」

「どうするも何も。言いにいきゃいいんじゃねぇの?先生に」


坂本が考えなしに提案する。

それで解決するようならもうやっているのだが。


「お前の頭にはカニミソでもつまってんのか?」

「なにおう!高級ウニくらいは詰まってるわ!」


それでいいのか。


「先生に言ったところでどうなる。その場は解決だろうがその後も先生は神崎の護衛にでもつくのか?」


まず先生から信用してもらえないような気もする。

俺たちがいじめを見た、よりもいじめをした、のほうが信じてもらえそうだ。

自業自得っぷりも否めない。


「まあ、そりゃないだろうけど……。じゃあ、どうすんだよ」


決まっている。


「二度とそんなことをしようだなんて思えないようにしてやるよ」


そのためには傷つけることも、いとわない。




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