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不良少年と扶養少女  作者: 常闇末
第一章 扶養少女は守られる
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第十話 坂本イジリ――完全版――


「あんたたち、今回は珍しく授業にでてたわね。なんかあったの?」

「……俺らそんなに授業サボってないんだが」


出ている回数のほうが多かった気がする。


「普通の生徒は毎回授業に出るものなの!」


授業が終わり、休み時間。

談笑、とまではいかないが俺はイチジク、坂本と話していた。


「ったく……、あんたたち何のために学校きてるのよ……!」

「学食が安くてうまいからな」

「実は俺もなんだ」

「……ホント、なんであんたたちみたいなのがこの学校に受かったのかしらね」


当の俺も合格については陰謀を感じずにはいられない。


「案外、裏口入学だったりして……」

「実は俺もなんだ」


冗談を言ったら坂本も乗っかってきた。

こいつに関しては本当に裏口入学をやってそうな知力だが……そんなコネもないだろう。


「あー、はいはい。そうですね。せいぜい落第しないように授業をサボらないよーに」


そんな台詞を吐いてイチジクが教室を出ていく。

行動に脈絡がない。と、なると目的は……。


「どうした?尿意でも湧いたか?」

「黙れ。デリカシーというものを教えてやろうか、体に」


どうやら図星だったらしい。


「じゃあ、ちょっとついていっていいか?」

「っ!?」


イチジクの顔が真っ赤になって、ずささっ、とあからさまに俺と距離をとる。


「変態っ!通報するわよ!」

「実は俺もなんだ!」

「あんたもついてくるの!?」


イチジクが顔を真っ赤どころか、涙目にすらなっている。

ここでようやく自分の失言に気づく。


「いや、違うからな。ただ教室の外までついていって、そこでちょっと用があるというか……」

「通報しますた」

「手際はやっ!」


冗談よ、とイチジクが言う。


「だけど、用って?」

「お前からの頼み事だよ。相談ならいつでも乗るつってただろ」


イチジクはしばらく宙を見つめていたが、思いあたったようでああ、と声を上げる。


「あの子ね。まあ、多少問題のある子だから……」

「実は俺もなん……」

「「知ってる」」

「だぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


いきなり坂本が髪をかきむしりながら叫んだ。


「どうした?お前に問題があることは知ってるっていう意味だったんだが……なんか違ったか?」

「違ぇよ!問題大アリだよ!」

「は?あんたに問題大アリなら何も違わないじゃない」

「そこじゃねぇんだよぉぉぉ!」


いまいち要領を得ない。


「つまり、どういうことが言いたいんだ?」


すると坂本は、


「元はお前の作った台詞が悪いんだよ!」


と俺に突っかかってきた。


「実は俺もなんだ、なんていう一つのニュアンスしか持たない言葉で会話なんてできるか!」


ふむ、一つのニュアンス……。


「ところで、俺の朝飯、ナンだったんだ」

「実は俺もナンだ」

「ほれ、二つ目のニュアンスが生まれたぞ」

「使い所が無さすぎるだろ!実は俺もナンだ、って何だよ!」


ナン、何、何、ナン、言い過ぎてわけがわからなくなってきた。


「それに俺が実は俺もなんだ、って言う度に俺自身の評価が下がってんじゃねぇか!」


坂本が必死に叫んでいる。周りの視線も気になりはじめた。


なんだ。そんなことか。


「じゃあ、使わなければいいじゃねぇか」

「へ?」


坂本が予想外、と言わんばかりの顔でこちらを見つめてくる。


「別に強制してるわけじゃないんだから」

「………………。」


しばらく沈黙が続く。


「ちっ!」

「ち?」

「ちっくしょぉぉぉ!!そうさせてもらうよ!!」


うわぁぁぁん、と絶叫しながら教室を飛び出る。

わけのわからんやつだ。


「……それはさておき。話、いいか?」


改めてイチジクの方を振り向くとイチジクは、


「あ……うん。その……」


足をモジモジさせながら、


「……トイレ……行ってからね」


羞恥心に耐え、顔を火照らせながらそう言った。



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