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8/11

一瞬あればいい

■例文は一つ




■8

 雨音が次第に大きくなっていた。嵐になるかもしれない。痛んだ柱だらけの洋館で雨宿りはしたくなかった。

 家主は新しい血痕を残して消えたまま。生死不明で本体が見当たらないのが嫌らしい。

 トムは客間をグルグル回っていた。客間から出るなと私が指示したから退屈してるらしい。


「トム、スマホは使える?」

「ゲームやってたら電池切れたけど」


 このバカたれ。電池切れなのはアンタの頭だ。


「どうやって連絡とるつもり? ここで泊まるハメになったらとか考えてないの? 外は晴れに見える?」

「あ、そうだ。エミーのスマホ貸してくれない? ゲームの続きやるから」

「コンビニで充電器を買えばいいでしょ」

「雨降ってるじゃん。エミーが行ってよ」


 もう駄目だ。話がかみ合わないからトムはお荷物。ゴミのような何かと考えて乗り切るしかない。


「ちょっと電話するから、そこで大人しくして」

「はっはー。エミーは怖くて動けないのか。なるほどなあ」


 舌打ちして無視した。これ以上文句を垂れたら消してやる。

 私はポケットからスマホ取り出し、911を入力した。


「すみません、警察ですか?」



  ******



 傘は洋館の物を借りる。俺は持ってきてない。エミーは机で代用するから、傘は俺が借りる。

 玄関ホールは明かりがついていた。蜘蛛の巣がかかったシャンデリアは役目は果たしている。床はどこもかしこも軋んでいた。

 そもそも、エミーは行動が遅いし大袈裟だ。家主がどっか行ったぐらいでヤバイヤバイってバカらしい。案の定、俺がこっそり客室から抜け出しても気づかなかった。警察とのお喋りに忙しいのだろう。



 ――――キィ。



 俺は傘を手に取ろうとして固まった。

 金属が捻れるような、擦れる音。



 ――――キィ。



 まただ。

 物の影が動いた。

 シャンデリアが、揺れている。

 さっきまで動いていなかった(・・・・・・・・)



 ――――ギィィィ。



 何の動力もなくシャンデリアが回る。

 天井を繋ぐ金具がねじ切れていくのがわかった。

 咄嗟に体を伏せる。

 明かりが消え、シャンデリアが落下したのはその直後だった。






●トムの移動シーンを省略


視点:エミー → トム

舞台:客間 → 玄関ホール


「******」

という記号を挟んで場面を省略しています

「38話 トム」「17:38」など、タイトルにしてもOK


舞台描写も省略を作り出しています

客間と玄関ホールを区別しないと、トムの移動は表現できません

同じように、一人称が「私 → 俺」になっています


『俺がこっそり客間から抜け出しても気づかなかった。』

これはトムが玄関ホールに来る前に客間にいた説明

場面の前後関係の描写として入れました



『傘は洋館の物を借りる』

これは「場面省略の直前、または直後に場面と関係性の薄い物を挟んで意識を逸らせる」というギミック


客間のエミー → 玄関ホールのトム

とせずに

客間のエミー → 玄関ホールの傘 → 玄関ホールのトム


という感じで場面省略の直後に、エミーとトムから意識を傘に逸らします


文章だとわかりにくいですが、映像でやると本当に時空が飛びます

試しにアニメ、ドラマで、注意して見てください

かなりの頻度でやってるはずです






■まとめ

時空+人称を超える為には、大きく分けると二つあります


・タイトル(あるいはその派生)を挟む

・直前の場面との関係性が薄い物を挟む


後者はタイトル型に舞台装置を合体技

自然に物語に溶け込ませたりできます


明確に省略したい場合はタイトル型が便利



・何か挟めば省略可能

これに尽きます

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