舞台、小道具、キャラ
■セリフ
◆4.11
ミージン州最大の都市クエラス。
ショッピングセンターのKMD本店は、そこに陣取っていた。長期に渡る経営不振からの回復。他社を一切寄せ付けない驚異的な競争力を誇っている。年末の大感謝セールは毎年激安だし、ポイント還元も充実。リピーターも無限水源の如く湧いているから、無敵と言っても過言ではない。
「どいてー!」
男の子が満面の笑みで走ってきた。6歳くらいの金髪幼児である。
キーンズ学園の女子学生エミーは首を傾げた。全く面識が無い男の子が自分に向かって突進しているのだ。エミーは学問の成績は優れていたが、この状況を把握する能力は全くない。
咄嗟に、なんか口走っていた。
「あっ、後ろでお菓子の試食やってるじゃん」
「ホント!?」
エミーの目前でUターン。
あるはずのない試食コーナーへ、男の子は駆けていった。
◆
◆4.12
カニ缶か、ツナ缶か。
商品棚に並ぶ両者を見比べ、学校帰りのエミーは手を伸ばした。どちらもマヨネーズによく合う。
迷った挙げ句、伸ばした手を戻した。ショッピングカートには長持ちする冷凍食品や、スナック菓子が山積みにされている。
どうせ買い溜め。しばらく買い物はしないだろう。
そう思い再び手を伸ばしたときだった。
磨かれた床の上を、空のショッピングカートを押した金髪の男の子が走る。
コーナーは商品棚。
滑りながらL字にカーブを決め、直線に入る。
「どいてー!」
カニ缶を手にした女子高生エミーは冴えていた。
「あっ、後ろでお菓子の試食やってるじゃん」
「ホント!?」
エミーの目前で、空のショッピングカートがUターン。
あるはずのない試食コーナーへ、男の子は駆けていった。
◆
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4.11と4.12は同じ場面です
どちらが読みやすかったですか?
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■シナリオ
シナリオは次のパーツで作れます
①場所の名前と時間
②キャラの見た目、舞台の見た目、動きの指示
③セリフ
④記号(暗転など省略)
4.11と4.12の違いを知りたいので、シナリオにします
◆4.11冒頭
【 ミージン州最大の都市クエラス。
ショッピングセンターのKMD本店は、そこに陣取っていた。長期に渡る経営不振からの回復。他社を一切寄せ付けない驚異的な競争力を誇っている。年末の大感謝セールは毎年激安だし、ポイント還元も充実。リピーターも無限水源の如く湧いているから、無敵と言っても過言では無い。】
◆
カメラに映る情報は「ショッピングセンター」と分かります
それ以外で①~④に当てはまる情報が無いので除去すると、次のようになります
◆4.11S
○ショッピングセンター
笑みを浮かべた金髪の男の子が走ってくる
男の子「どいてー!」
エミー「あっ、後ろでお菓子の試食やってるじゃん」
男の子「ホント!?」
エミーの目前で男の子Uターンし、走り去る。
◆
4.12も同じようにシナリオにします
◆4.12S
○ショッピングセンターの商品棚の前
女子学生エミーが、食べ物が山積みにされたショッピングカートを止め、商品棚に並んだカニ缶とツナ缶に手を伸ばす
一度手を引き、カニ缶に手を伸ばす
空のショッピングカートを押した金髪の男の子が、エミーのいる商品棚の角を曲がり、エミーに向かって走る
男の子「どいてー!」
エミーはカニ缶を握り、男の子を見る
エミー「あっ、後ろでお菓子の試食やってるじゃん」
男の子「ホント!?」
エミーの目前で男の子がUターンし、走り去る
◆
●次のことが分かります
・視覚情報:4.12 > 4.11
言い換えれば、4.11が映像化しにくい
●4.12S
ショッピングセンターだからできることをしています
・ショッピングカートを押す
・キャラがカニ缶とツナ缶を選ぶ
さらに、キャラが舞台や小道具を使って重要な効果を得ています
・「キャラの感情や私生活」を表現
・「舞台や小道具の映像」を読み手に知らせる
●4.11S
舞台や小道具をあまり使ってません
なので、舞台や小道具を自然に映像化するのが困難になります
(男の子がエミーに突っ込むくらいの情報量)
■まとめ
・舞台、小道具、キャラはそれぞれの表現を強調し合う
※以下は危険な状態(わざと書かない場合は例外
・どこで話が進んでいるかハッキリしない
・小道具が全然出てこない