ある正義の世界の怪人とヒーロー
ギャグです。思い付きの産物です。
自分としてはなかなかいい感じに仕上がったなんて浮かれています。
「きゃーぁぁああ!」
「ぎゃはっはっはっはっ!」
嫌な声と共に現れた怪人ゼッタン。
「助けてー! 誰か助けて〜!」
「無駄だ、無駄だ、ぎゃははっ!」
ここは公共の公園。
無能な警察は描写される事も無く雑魚怪人ゼッタンにやられ、当の本人は何が目的なのかわからないまま物語は進む。
「ぎゃはっはー! 目的は世界征服だー!」
夢を大きく持つのはいいが、その怪人はそれが夢幻に過ぎないことを知らないらしい。
まるで少年のような無垢な心を持ったまま育ったばかりに、こんな変人になるとは……、世の中はおそろしいな。
そもそも、何故ゼッタンなどと、雑魚一号のような名前をつけたのだろう、きっと特撮戦隊ものの最終回を見ていないせいであろう。
悪は栄えないとかなんとかリーダーのレッドが言ってるだろう。
「助けて〜、そろそろ本当に助けて〜」
なぁにそのうちヒーローが来るさ、ここはそうゆう世界である。
最近廃れてきた世界征服以外の目的を持たない怪人が絶え間なく生まれ、戦隊ではなく単騎で現れるヒーローがどこからともなく駆けつけ、やっつける。
これが世界の大原則である。
「とう!」
ほら来た
「大丈夫ですかお嬢さん。怪人バッタンめ! いたいけな少女をかどわかすとは卑怯な!」
「ぎゃっはっはー! 正義のヒーローめ! お前には世界征服の礎となってもらうぞ!」
なんで怪人に曲がりなりにも名前があって、ヒーローに無いんだろうと思った方、正解だ。
「必殺! マシンガン乱射! ひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ!」
――これが主人公だと書く気が失せるぜ、絶対。
そんな事考えてたら、怪人にはマシンガンの弾が一発も当たらなかった
「そんな馬鹿なぁっ!」
「ぎゃっはっはー! 無駄だ無駄だ! 近代兵器に頼るヒーローに作者の加護は得られない! それどころかこんなキャラ早く退場させなければ、という著者の思いが我輩に新たなる必殺技を生み出させるのだ!」
おお、意外に分かってるじゃないかバルタン君、てか一人称、我輩だったのね知らなかったよ。
「必っ殺ぁあっつ!! こんなキャラ跡形も残さないぜビィィィーム!」
「俺のぉぉ野望がぁぁあっこんな奴にぃぃぃいいいい!!」
かくしてヒーローはやられ、世界に平和が戻った。てかヒーローが野望とか使っちゃいかんだろ普通は。
「ぎゃっはっはっはっは! 必殺技も手に入れ、我輩の夢に大きく前進した、ぎゃはっははっはは!!」
この笑い方が無ければ、息の長い悪役にするのに……。この世界からヒーローが消えた――怪人とヒーローそれは鏡像のように対になっている、次はいったいどんな奴が出て来るのだろう。
「そこまでだ! 怪人め! 正義のヒーローの仇、この正仁 正義が討つ!」
新しいヒーローが出てきた。今度は情に厚いやつみたいだ。でも、まさに正義って安直だな、こいつもやられキャラなのか、それとも主役の座に居座るのか、見ものだな。
「ぎゃっはっは! 返り討ちにしてくれようぞ! 必っ殺ぁあっつ!! どんなキャラでも跡形も残さないぜビィィィーム!」
……なに必殺技名勝手に変えてんだ。フッ! ここがお前の限界か。
「俺には作者がお風呂に入っている時に閃き、『このキャラ面白いなぁ』と言われた実績がある! 十秒で考えられたお前なんぞに負けるものかぁ!」
それ自体は否定しないが、後にでもこれ使い捨てキャラだなぁとか思ったぞ? まあ、一、二回は持つだろケド……。
「そうだったのかぁぁあああ!!」
だがやはりというか、さっきの怪人のビームは、正仁正義に届く前に霧散した。
「ぐはっ、……だがまあいい。お前は三つの間違いを犯した。ひとつ! 世界征服を企んだこと。ふたつ! 作者の作った技名を勝手に変えたこと。そしてみっつめだ、……俺がここにいることだ」
「そうだったとしても……、我輩にはまだ野望――」
「超必殺! 問答無用パーンチ!!」
彼はパンチを繰り出した。
だが、超必殺でそれはないんじゃないか?
「グブァアアァァア!! 我輩は、こんなところでエェェエエ!!!」
パンチなのに、ウルトラマンのスペシュウム光線を受けた怪獣のように、悪は光でおおわれ、消え去っていった。
やっと、世界に平和が訪れた。だがまだ怪人は出てくる、戦え、まさに正義! 完全な平和を取り戻すのだ!
……続く、かもしれない……。
万が一、好評だったら長編にしてもいいかも知れなかったりしないような……。