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10月 愛純・ヴィクトリア

みへき様の突飛な計画から早1ヶ月。

知景様もすっかりみへき様としての振るまいに慣れ、大きくは隼人様のサポートのあっての事だったけど。

学園の全てを知りたいと、みへき様は銅ランクの生徒と一緒に活動されていた。


そんな中、私にも驚くべき事が起こったのである。


私の母は離婚しており、妹と弟がいることは知っていたが、その妹がこの学園に転入してくると言うのだ。

腹違いの妹であり、直接的には血のつながりがない。


私は現在27歳で、妹はみへき様と同い年の16歳である。

名前は湊屋静琉。

学年は隼人様と同じ2年生。

このたび隼人様を追って、桜華学園に入学するという話だった。


このお嬢様たちの世間は狭い。

だいたい年頃のお嬢様たちは隼人様を好きになり、隼人様とご結婚することを夢みるようだ。

例外は、かねがね噂がありながら隼人様の思い人を知って留学されてしまった亮子様か、隼人様の好きな人の張本人か。


みへき様は今、それどころではないようで銅ランクの奉仕活動まで嫌な顔一つせず参加し、寮の門限までは理事長室で執務に従事されている。

隼人様とも今日の出来事やこれからの学校作りについてお話しをされていて、疲労もピークに来ているようだ。


理事長室に来られるときは、また変装してきて制服姿ではなくスーツを着てあくまで業者のヒトを装っているのも可笑しい。


静琉は12月ころに転入してくることが正式に決まった。

隼人様の追っかけなど情報の耳が早いお嬢様方によれば、早ければ早いほど本当は7月でも良かったそうだが、なかなかご家族の父上の許しがえなかったそうである。

父・・・そう、湊屋の父は私の父でもある。


弟、龍翔の噂はお嬢様の間では有名である。

静琉よりも有名で、ファンが多いと言うことも聞いたことがある。

実力で幼稚舎からある大学に合格し、ラグビーを続けているらしい。

ま、なぜこんなに彼らについて情報が少ないかというと母は離婚したと言っていたが要するに私は湊屋の妾の子。

2号さんと言っても当時は1号さんがいなかったから、不倫相手でもなく、私生児という扱いになるという所の話だ。


10年面倒を見てくださっている叶家のみなさんにも詳しい状況は話していないし、母はその後アメリカ人と再婚して私もヴィクトリアという姓に変わっている。

だいたい静琉や龍翔の二人が私の存在を知っているかと言うことすら分からない。


みへき様が大変なときに。

私はそんなことを思ってしまった。


「愛純さん大丈夫?」

隼人様にも心配をかけてしまっている。


そんなとき、みへき様に外出に誘われたのである。

学外に出たいというお申し出はこれが初めてなのではないだろうか。

SPもつけないでお忍びでなんてみへき様らしくない。

しかも隼人様にも内緒にしたいと言うことだった。


「だから愛純は、私のお姉ちゃんって設定ね」

本当に妹がいるなんて思っていないみへき様は私に無邪気にそう言った。


そして連れてこられたのは、商店街の路地にある「CLUB SAKURA」だった。

そこで歌っていたのはみへき様と同室の雨宮紗莉様だった。


「紗莉ちゃんの歌ってるところどうしても見にいきたくて。」

みへき様は笑顔でおっしゃっていた。


紗莉様はメイクしていらっしゃるのか、服装も大人っぽくとても高校生には見えなかった。

ピアノを弾いている女性とギターを弾いている男性と目配せをしながら、素晴らしい歌声でジャズを響かせていた。


「知景ちゃん、来てくれたんだ。ありがとう。」

みへき様は今、知景様である。


笑うと年相応の笑顔になる紗莉様。


「紹介するね。こちらこのクラブのご主人理子さん、あと理子さんの息子の透也くん。」

どうやら紗莉お嬢様はこの透也さんという少年に好意を持っているようだった。


「でドラムは明日見さん。透也くんのお兄さんの彼女さん。それからサックスの・・・・」

みへき様の目がくぎづけになった。

まだ練習中ではあるが、そのサックスの音色は今まで聞いた物と違うと感じさせるほどの物だった。


「サックスは勇樹くん。黒田勇樹くんです。」

みへき様は彼に何かを感じたらしい。それが何かは長年一緒にいる私にもそのときには分からなかった。



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