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6月 愛純・ヴィクトリア

「みへき様、隼人様がお越しです。」


「隼人?ずいぶん早いご到着で」


ここはアメリカの叶一家の別荘。

執務室と言っても小学時代からみへきが使っていた部屋で女の子らしいぬいぐるみも置いてある。


私はみへき様が小学生7歳の頃からの家庭教師で、英語ができなかったみへき様に英語を教えていた。


それから10年大学生だった私も無事大学院修了、ドクターの称号を手にした。


ひとえに叶家の皆さんからのサポートがあったからこそだと心から感謝している。


みへき様は英語は堪能になられ、勉学に励み飛び級で日本でいう小学生の年に大学に入った。


みへき様には不思議な力といっても魔法が使える訳ではないけど、人を魅了する優しさや温かさがあり、多くの教授や10歳も年の離れたスクールメイトとコミュニケーションを取っていった。


しかし、お家に帰られてからの努力は凄まじい者で夜通し分厚い研究論文と格闘する集中力は10歳のものとは思えなかった。


「天才っているんだな」


と思った。


私は家庭教師としてはみへき様に学力も英語力も追い抜かれ、意味を成さなかったが身の回りのことや研究について大学の先輩としてアドバイスをしていた。


みへき様の目的はただ一つ叶財閥の誰もが認める経営者になることだった。

そしてMBAを15歳の若さで取得し、日本へと戻ることになったのだ。


私はみへき様の秘書として日本に同行することになっている。


「みへき~、入るぞ」


引っ越しの最中、みへき様のいとこ早乙女隼人様がいらっしゃったところだ。

隼人様は小さい頃からみへき様が大好きで日本に帰るのを心待ちにされていたのだ。

みへき様と一緒にいたい一心で小学校をこちらのアメリカで過ごし、よくこの部屋にも遊びに来られたのがつい昨日のように思い出される。


「それで、日本はどうだった?」


みへき様は学校を卒業されて、早速叶家の一つの仕事を任された。

日本の私立高校の再建だ。


「それにしても亮子の名を使うなんてな」


「しょうがないでしょ。叶なんて名前が一人歩きしすぎる」


亮子様は二人の幼なじみでアメリカで小学校が一緒だった関係でずっと仲が良いのである。

日本では隼人様の婚約者と噂されてるそうだが、二人にはその気がなさそうだ。

隼人様は小さい頃からずっとみへき様一筋だから。


「まだ資料が足りない。」


みへき様は、日本から帰って来られてあまりの衝撃が大きかったのかずっと元気がなかった。


帰国された週の土日に隼人様が様子を見に来てくださった。


「勉強してきたものが使えるか自信がない。」


「あの学校は特殊だからな。」


みへき様と桜華学園を視察した1ヶ月。

同じ生徒でありながら堅固な身分制度があり、一番下のランクはまさに奴隷のような扱いだった。


「男女共学の許しはもらえたんだろ?」


名門として有名だった学園も生徒数が減り、女子だけではやっていけないだろうと判断してのことだった。


「俺が先に学園に入るから、みへきは9月頃だろ?」

「うん。隼人には迷惑かけるね」


隼人様は中学入学とともに日本に帰り私立の中学に受験して合格された。

幼稚舎から大学まである名門校だ。

みへき様と一緒にいたいとダダをこねたが、わがままも小学校時代までと日本に強制送還されたのだ。



「女子高に男子一人で、隼人ねらいで入学者殺到だよ」


みへき様が亮子様の名を借りたのもこの隼人バブルに乗じたもので、隼人様が学園に転入するという噂だけで転入希望者が次から次へと訪れたという。


「亮子は今頃、ヨーロッパだろうに。」


とうの亮子様はヨーロッパに留学中らしい。


隼人様とみへき様にとっては大切なご友人だ。



「お金で身分が決まるなんて、私は違うと思う」


みへき様は隼人様にまっすぐそう告げた。


でもお二人ともお金に苦労などされたことはない。


「私はお金に関係なく、みんなが楽しめるような生徒のための学校を作りたい」

お嬢様にお金のことは分からない。

皆がそういうだろう。


でもみへき様がここまでやって来られた努力で、この学園再建がうまく行くことを誰もが確信していた。


隼人様も協力したいということなのだろう。


「みへき、何かあったら俺が守るから」


みへき様はその言葉が嬉しそうだった。

でも、それに隼人様の一生の決意プロポーズの意味だったとは全く気づいていないようだった。

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