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4月 雨宮紗莉


「歌手になりたい」

小さい頃からの私の夢。


どうしても都会に出てきたかった。

でも、ここに私の居場所は無かったみたい。


学園への寄付金で金・銀・銅のランクが決まる身分制度で、銅ランクの私は地方組の最低ランクに位置づいている。


周りを見れば確かにキラキラしたお金持ちのお嬢様が多いようだ。


この学園に入れたのは今年から様々な生徒を募集するという経営方針が変わったためである。


生徒のための学園なんて聞き心地の良い売り文句でビンボー人でも学園に入ることが許されるようになったのだ。


しかも男子も入学可ということで、全国から入学希望者が殺到したらしい。



入学式では、ランクごとに席が決められてあからさまにセレブのお嬢様たちに圧倒されまくりましたが、夢を叶えるために私はここに来たと毎日強く思って耐えている次第です…。


この桜華学園は古くからの名門で財界のセレブの奥様たちのブランド学校として地方の私でも名前を聞いたことがあるくらい有名だったものだ。


もちろん校舎も立派で有名な建築家が作った音楽堂なんかもあったりする。


「ここで歌えたらなあ」


なんて思ってみたりできるようになったのも、「生徒のための学校」なんて素晴らしいキャッチフレーズのおかげだ。



合格通知が届いた時、大分の家族はみな騙されてるなんて言ったけど私はどうしても都会に行きたかった。


だから全寮制でもどんなにビンボーで馬鹿にされてもやっていこうと思った。


合格通知には、理事長直々に手紙が書かれていた。

あなたの中学校での合唱の活躍は聞いています。

この学園でもその力を伸ばし全国レベルになれるよう力を貸して下さい。



私が中学校で合唱部の部長として部をまとめていた情報は内申にあったかもしれない。

でも、全国レベルなんてありえない。


顧問と部員に恵まれて創立以来初めて県大会で金賞をとっただけだ。


しかも部員は5人。



でも誰にも負けないくらい練習した。



神様は努力を見ていてくれるんだなって思った。



慌ただしく引っ越しをして、初めて桜華学園の制服を着た日涙が止まらなかった。

世界的なブランド叶財閥の一流デザイナーの服なんて一生縁がないと思っていたから。


入学後、私は導かれるように合唱部に入学した。

寮の規則はアルバイト禁止、男女交際禁止、成績不振者は即退学なるものだった。


この寮は銅ランクだけで、いくらか気は楽だったけど馴染めないのは仕方ない。


導かれた合唱部で入部早々信じられない出来事が起きた。


私がソリストに抜擢されたのだ。


それからの毎日はイジメとも呼べない無視をされるだけの毎日だった。


クラスでも友達はできないし、何より目立つことは攻撃されると気づいたから毎日ランチタイムは作った弁当を持って屋上に逃げるようにして時間をつぶしてた。


そんな毎日に私の心は荒んできた気がする。



でも「歌手になりたい」


これだけは譲れなかった。


私を見守り助けてくれる人がいることにまだ気づいていなかった。


彼女は最後まで私たち生徒一人ひとりのことを考えていてくれたのだ。

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