イキリオタクが黙った話
どの分野にでもいるだろうがオタクの中には苦々しい者もいる。
「見ろ。警棒だぜ!」
学校に護身用具や盾を持ってくる佐藤という奴がいた。
何だが、意味不明なことを言う。
「CQCを習っているんだ。護身を意識したガンハンドリングだよ」
どうやら軍隊格闘技を学んでいるらしい。わざと難しい事をいって頭が良いように見せかけている傾向がある。
日本では銃の所持はハードルが高いが・・・それは謎だ。
そこまでなら良かった。
だけど・・・
「佐藤君、銃だったら過剰防衛になるよ。護身なら合気道や柔道、空手が良いんじゃない?」
すると。
「クスクスッ、あ~、分かっていないな。それは所詮、競技だよ。過剰防衛は裁判官が決めるんだぜ」
とにかく馬鹿にする。佐藤自身はガリガリだ。
こいつの話に付き合う者は少なくなっていった。
そんな中、佐藤に話しかける女子がいた。
「佐藤君、法律違反になるけど、やってもらいたい事があるわ。CQC?が生かせるかもよ」
「え、法律違反はダメだよ」
「あら、正当防衛よ。頭をかち割って欲しい奴がいるの。皆、迷惑しているわ。ハウスが荒らされているのよ」
「マジかよ・・・」
ハウスとはビニールハウスの事だ。ここら辺にはイチゴや野菜を冬作る農家さんがいる。
「外国人の集団かな。それとも半グレかもしれないわ。警察も見回りをしてくれているけど不十分だわ」
すると、途端に及び腰になった。
「いや、塾があるし」
「知っているわ。帰宅部で行っていないでしょう」
「でもな・・・・」
「佐藤君にしか頼めないわ」
佐藤は無言になり席に戻ってソッポを向いた。
俺は話しけた。
「佐々木・・・それ本当か?」
「本当よ。今日、来る?」
「うん」
俺は行くことにした。
小学生以来久しぶりに佐々木の家に行った。
田舎の有力者で家がまるで銭湯みたいだ。
「おう、山田君かのう。久しぶりじゃ」
「お久しぶりです」
佐々木のお爺さんはワナ籠を持っていた。
「ギャ!ギャ!ギャ!」
「こいつは、アナグマ?」
「ええ、そうよ。穴を掘ってハウスの中に入り込むのよ」
佐々木の説明はこうだ。
いくら害獣でも野生動物をむやみに殺してはいけない動物愛護の法律や鳥獣保護法があるわ。最悪、懲役刑もあるの。殺すのなら狩猟許可が必要なのよ。
捕まえたら市役所に持って行って、希望すればジビエにしてもらえるわ。
オモチャの銃で猿を追い払う地域もあるけど、直接あててはダメだそうよ。
これが限界なの。
もし、野生動物を殺したら、罰金、懲役刑ね。
「何だ。動物だったのか・・・」
「もしかして、本当に頭をかち割ってくれるかもしれないと思ったの」
「これ、梓や。それはダメじゃ」
それから、俺は軽トラに乗りワナ籠を仕掛ける作業を手伝った。
「知っていて損はないぞ」
「はい」
農家さんにとって作物は大事な収入源だ。給料を横取りされた感覚に等しいらしい。
佐々木が害獣を殺害したいと思ったのも無理はない。
「ファミレスに行こうかのう。親に連絡するのじゃ」
「はい・・・」
夕飯をごちそうになった。
その後、佐藤は自衛隊の試験を受けたが。
「急に腹が痛くなってさ」
「フ~ン」
落ちたのだろう。まあ、どうでも良い話だ。




