植物のある暮らしで
部屋のチャイムが鳴った。
とても嫌な予感は、すぐに的中することになりました。
「しばらくの間、うちの花々を預かってほしい。
中には、野菜の芽もあるんだけれど、もし実をつけたって、
それを食べてはいけないよ」
誰がそんな、得体のしれないことをするんだ、
という言葉を飲み込んで、仕方なく頷きました。
断り文句も理由も、なにも持ち合わせていなかったのです。
彼は口下手な人でしたから、嫌だ、
面倒なことを、なんて、そんな言葉を
他人に向かって吐くことが出来なかったのを、周囲もよく知っていました。
そして、そんな彼を都合よく扱おうとしている人たちのことを、
また彼もよく知っていたのです。
土が乾いたら、水を与えるだけでいい
それ以外は、君のベランダにでも置いておいてくれ、とのことだったので、
言われたとおりにしました。
彼は日が昇り、カーテンと窓を開けるついでに、鉢の様子を見て、
土の色が薄くなっていたら、適当に水を与えてやりました。
中には何も入っていないような、空っぽの土もありましたが、
特に気にも留めませんでした。
何日か経って、そんな生活にも、次第に慣れてきたころ、
彼を見つけた芽の葉たちが、ゆらゆらと揺れて、
自身の葉の模様や、色合いを見せてくれているようでした。
彼は驚いて、全体を見渡してみると、明らかに数が増えているのです。
後に聞いた話ですが、どうも、植えた種は芽を出さないものも多いので、
目安よりも多く蒔いていたそうで、大量に芽が出たとのことでした。
預けた人も、まさか、ほとんど全ての発芽を目の当たりにするなんて、
思ってもいなかったようなのでした。




