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植物のある暮らしで

掲載日:2026/06/03

部屋のチャイムが鳴った。

とても嫌な予感は、すぐに的中することになりました。

「しばらくの間、うちの花々を預かってほしい。

中には、野菜の芽もあるんだけれど、もし実をつけたって、

それを食べてはいけないよ」


誰がそんな、得体のしれないことをするんだ、

という言葉を飲み込んで、仕方なく頷きました。

断り文句も理由も、なにも持ち合わせていなかったのです。

彼は口下手な人でしたから、嫌だ、

面倒なことを、なんて、そんな言葉を

他人に向かって吐くことが出来なかったのを、周囲もよく知っていました。

そして、そんな彼を都合よく扱おうとしている人たちのことを、

また彼もよく知っていたのです。


土が乾いたら、水を与えるだけでいい

それ以外は、君のベランダにでも置いておいてくれ、とのことだったので、

言われたとおりにしました。

彼は日が昇り、カーテンと窓を開けるついでに、鉢の様子を見て、

土の色が薄くなっていたら、適当に水を与えてやりました。

中には何も入っていないような、空っぽの土もありましたが、

特に気にも留めませんでした。


何日か経って、そんな生活にも、次第に慣れてきたころ、

彼を見つけた芽の葉たちが、ゆらゆらと揺れて、

自身の葉の模様や、色合いを見せてくれているようでした。

彼は驚いて、全体を見渡してみると、明らかに数が増えているのです。

後に聞いた話ですが、どうも、植えた種は芽を出さないものも多いので、

目安よりも多く蒔いていたそうで、大量に芽が出たとのことでした。

預けた人も、まさか、ほとんど全ての発芽を目の当たりにするなんて、

思ってもいなかったようなのでした。

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