ザマァ!軍師の誤算とカーリナの失敗
東エルフ共和国領内から、魔道歩兵と騎兵の先遣隊5000名が西へと進軍を開始した。領内を出るとまず先遣隊の行く手を阻むのがアルデンの森。東西に50キロはある深い森だ。
先遣隊は遭難するのを避けるため、街道を通り進軍した。アルデンの森を西方に20キロほど進むと先遣隊の前に三つの分かれ道が出現。左の道は南部の都市へ、中央の道はガルマニア帝都へ、右の道はガルマニア北部へ伸びていた。
この時のガルマニア帝国の内乱の情勢は、帝都を占領する軍事政権が優勢なものの北部の王家側が持つ魔道兵器に苦戦していた。
先遣隊は内乱で中立の姿勢をとる南部都市への道を進んだ。先遣隊は森を南下し、五日ほどで深い森を抜けた。
森を抜け、南の都市まで残り100キロほど。先遣隊が整備された石畳のアダン街道に差し掛かったその時。
スドドドドン!!!!
待ち伏せしていたエルフたちが一斉射撃を先遣隊に浴びせた。先遣隊は応戦するも完全に不意を突かれた。エルフの魔法攻撃も始まり、炎で体を焼かれる者が続出した。
敵は少ないが岩や木の影から撃ちまくってくる。狭い街道では騎兵も動けず格好の的だ。
「そして、隊の半数を失い後退したのが昨日か」
俺は執務室でバドゥーからの報告を受けた。襲撃してきたものたちは鉄砲を持っていた事から帝都の軍事政権が送ってきたものだろう。
~ ガルマニア帝都長官室 ~
兵士A「報告は以上になります!」
カーリナ「ご苦労様、下がってください」
ふふふ、中々我々の味方をしない南都市を脅すために街道沿いに配置した小隊。まさか、南の商人たちではなく人間たちがかかるとはね。「ザマァと言って差し上げますわ」ただ、今後も増援がくることでしょうし、我々も南部に兵を割くか、、、、たが兵が足りない。あの手を使うか。
ドーーーーーーンッッ!!!
うわぁぁ!地雷だぁぁ!!
~ フリードベルク執務室 ~
「なに?先遣隊が壊滅?!」
俺は驚きを隠せなかった。報告によると間違いなく地雷原が敷設されていた。敵方の新兵器だ。俺はエルフの魔道技術を完全に舐めていた。「まさか、センサーや機械の代わりに魔道技術を使うとはな」
地雷という兵器は相手を殺傷するだけでなく、設置すれば誰もその場にいなくても敵兵の動きを封じることができる。
現在、生き残った先遣隊の兵は立ち往生か。
「仕方ない。全軍出動!新兵器全車投入!急げ!」
~先遣隊生き残り413名~
「おい!やっと分かれ道だ!本国に戻れるぞ!」
4日間の後退戦の末、先遣隊はようやく例の分かれ道に辿り着いた。しかし、後ろからは敵兵が執拗に追ってくる。先遣隊の魔力と弾薬は底をつき、全滅を覚悟したその時だった。
「おい!何か変な音がするぞ!」
耳の良いエルフたちが何かを察知した。
森の中から響く異音、エルフたちの動きが止まる。
「おい!あれは何だ!」
「怪物だ!怪物が突っ込んで来るぞ!」
ミシミシミシッバキバキッ、キュルキュルキュルキュル
森の木々をなぎ倒し、エルフたちの前に突如として現れたのは戦車だ。いや、魔動戦車と呼ぶべきか。我々人類は魔力量でエルフに劣るため、長時間空中戦艦のような航空兵器を運用することはできない。なら、より少ない魔力でも地面を転がし、長時間動かせる戦車のような乗り物に技術転用する方のが合理的だ。
戦車はエルフたちに砲撃と銃撃を加えながら突っ込んでいく。エルフたちは果敢にも立ち向かってきたが、戦車に魔法も鉄砲も通用しない。
戦車砲は新型を使用。エルフたちは戦車砲の砲火で次々と吹き飛ばされ、キャタピラに押し潰されていった。
俺は戦車内から顔を出す。
「諸君!よく頑張った。」
エルフの掃討を完了し残存兵の回収を始めた頃、戦車が木々をなぎ倒してできた道を進む大軍団の姿が見えた。
「作戦を変更!
我々はガルマニア帝都に侵攻する!」
この頃、革命軍の軍事長官カリーナは南部諸都市への侵攻を計画していた。
帝都ガルマニアへ続く街道には数千もの大型地雷が埋められていた。迂回するにも森は深く一度入ったら出られず帝都侵攻はほぼ不可能。仮に街道をバカ正直に進んできたとしても、地雷除去に手間取り半年は以上掛かるだろう。
そう踏んでいたカーリナや軍事政権の幹部たちはこの地形と技術的優位性を過信し、早期に南部併合を行い、潤沢な人的資源の回収にのりだそうとしていた。
だが、カーリナの計画は魔動戦車の登場により早くも崩れ始めていた。
エルゼとドワーフ、東エルフの連合軍は戦車隊を先頭に森の中を進んだ。戦車の動力源は人間の魔力のため給油や油の輸送も必要ない。魔力が少なくなれば次の魔力持ちと交替する。
戦車隊の進撃は夜通し続いた。
東エルフ共和国を出発し4日目の昼過ぎ、ようやく20両の戦車隊が森を抜けた。地平線の彼方に帝国の帝都がうっすらと見える。
この時、帝都ではカーリナ率いる魔道戦艦3隻と配下の軍勢10万が南の諸都市に向けて出発。我々の軍団には気づかず、南の諸都市へと飛び去っていったことを、俺は全てが終わった後に聞いた。
帝都侵攻を妨げるものはもはやない。
後方から大軍団も到着、本格的な攻勢は翌朝とした。
~ガルマニア帝都 軍事政権~
「なに?!人間の軍団が?!早くカーリナの軍勢を呼び戻せ!」
「いや、奴らは高速艦で南部へ飛翔。通常艦艇では追い付けんぞ!?」
カーリナの率いる軍勢は電撃的な南部併合が目的だったため、足の早い高速艦を使った。仮に、引き戻すため高速艦を追いかけたとしても追いついた頃には、遥か遠くの南の都市上空だろう。
帝都全体に戒厳令が敷かれ、街の至るところに急造の陣地がつくられ、野戦砲が置かれた。
「これより、武器を配る!!」
帝都の若いエルフは全て動員され、弓矢や鉄砲、爆薬がそれぞれに支給された。
~王都近郊の高台~
「どうおもいます?」
「当然待ち構えているだろう」
エリゼ中将はまとめていた髪をほどき答えた。広大な牧草地帯、黄金の夕陽が沈み、帝都のあかりがまるで宝石のように輝いていた。
「あれを破壊するのはもったいないですね」
「同感だ」
夜空に輝く彗星が旧体制崩壊の前兆を表しているようだった。




