フリードベルク近郊の森
山脈を越えたゾォぉ!
うぉぉぉぉおおお!
あれがフリードベルクだぁぁあ!!
進軍開始から16日目の昼
我々は冬のアルドー山脈をこえた。
兵力は軍団兵8000名、砲兵500名の8500名。
俺とエリゼ団長を含む将官級10名とその他冬国出身の荷物運びの行商人たちだ。
臼砲を3門峠道で落としたのは痛手だが残り17門あるから問題はない。
エリゼ団長は回復し、なぜかいつもより
元気(?)そうだった。
今いる小高い山の中腹から、ガルマニア帝国最東端の小都市フリードベルクが見える。
「みなよくやった!臨時の配給を行う!」
団長の号令で肉と酒が配給された。
火の使用は敵に位置を悟られるため、極力控えることになったが、やはり暖かい肉入りのスープは堪らない。
「これより、脱落した戦友たちに黙祷を行う。黙祷、、、」
食事前に団長が一本のワインを撒き、黙祷を行った。
わはははははは!飲め飲め!!
酒が振る舞われた事で、軍隊恒例のバカ騒ぎが所々で始まった。団長はこれを黙認。
聞けば捕虜のエルフからの情報で、神聖な山への立ち入りは11月ごろから禁止されるそう。多少のハメをはずして大声出してもバレなければいいのだ。
11月の入山禁止か、どこの世界もそー言うのあるんだなぁ。おそらく冬山での遭難防止を意図したものだろう。だが、そんな甘い想像はすぐにかき消された。
バキッ!バキバキバキ!!
グオオオオオー!!!
「うわぁああ!!!」
「ほ!報告します!ブラッティベアーの群れです!数は10!!」
(くそ!立ち入り禁止はこれが理由か!)
爆弾の使用や発砲は位置バレする!
だが、これ以上兵隊の数を減らすわけには?!
手榴弾の導火線に火をつけようとしたその時
ブ!フグッッオオオオオオオ!!!
(ブラッティベアが逃げていく??)
「うっ、クッさ!」
ブラッティベアーが逃げた原因。
それは、エリゼ団長の持つ瓶から漂う強烈なアンモニア臭だ!
「だ!団長!今すぐ蓋を!何ですかそれ!」
鼻がもげそうだ。人間でこれなら犬の300倍の嗅覚を持つ異世界の熊公どもには毒ガス兵器レベルだな。
聞けば、フェンリルの小便を煮詰めた貴重な魔獣避けだそうだ。
「ふふふ、いいだろー特注品だぞ!」フフン
(この人を知らない人が見たら、犬のションベン誇らしげに持ってる顔だけは良いヤバイやつだな)
何はともあれ、Aランク級の驚異を退けることに成功した。陣地のまわりには薄めたフェンリルのオシッコを浸した綿を巻き、夜営の準備が進められた。
俺は捕虜のエルフたちから得た地図をもとに、進攻ルートを再確認した。都市は正方形で周囲に城壁や堀はない。これは過去に山を越えた軍団による軍事侵略を受けたことがないからだろう。
「だが、あれは何だ??陸上に船?」
「あれは魔道戦艦ですよ。」
「あ、あなたは!!」
そこには遅れて到着したエルフのサルマト元長官の姿があった。周囲をエルゼの保安局員20名で固められ、暗殺と逃亡を防いでいた。
「あの時は、応急処置をしていただき。今回はわたくしの復讐にも協力をしていただき、何と感謝を申し上げれば」
「そんな、畏まらないでください。それで、魔道戦艦とは、、、」
サルマト元長官の説明によると、ガルマニア帝国にいる10人の強力な魔道師のみが操れる空飛ぶ戦艦。建造されたのは現段階で10隻。
南の精霊たちの国から技術支援を受け10年前から運用を開始。前回臨時要塞で戦ったエルフの大軍たちは途中まであれに乗り、山脈を越えてきたとのことだ。
空飛ぶ戦艦の存在は重要機密のため、ドワーフの国や人類はおろか、同盟国の国民もその存在を知りません。
(なるほど、だから前回の戦闘でも直接投入はなかったわけか。それにガルマニア帝国の東側は山脈に囲まれ陸の孤島、鎖国状態だから情報も出ないと)
(にしても恨みって恐いなぁー。)
背後で自分を裏切ったエルフの宰相を呪うサルマト氏が何かブツブツ唱えていた。
さーて、どうしたもんか。町の占領が最優先事項だが、魔道戦艦の存在がなぁ。空から攻撃されるのは厄介だし、あの規模の戦艦を臼砲で破壊するのは無理だし。
だからと言って、そのまま放置って訳にいかない。
「破壊できないなら、燃やせばいいじゃない!」
「エリゼ団長、そんなパンがなければお菓子食えばいいじゃん的なノリで言われて困る。あの船体は木造だがそう簡単には燃えないだろう。」
軍艦の事はひとまず保留にして、俺は都市制圧の準備に取り掛かる事にした。




