ヴェルダン要塞攻防戦
~エルフ陣地~
昨日の奇襲で同志の大半が戦死した。指揮機能も喪失したに等しい。ここは撤退を!
何を言っている!あのような失態!本国に帰れば間違いなく火刑ものだぞ!
静まれ、私が臨時司令官に任命されたからには私の命令にしたがってもらうぞ!
エルフの臨時司令官が編み出した戦術、それは禁じ手でありながら、奥の手でもある。生きているエルフ一人一人から魔力を死なない程度の半分を抜き出し、集めた魔力を石に封印する。集められた魔力は強い衝撃に弱いため、ゴーレムで敵陣に石ごと投擲し着弾時の衝撃で大爆発を起こさせる。
人間どもの火薬兵器とやらと同じかそれ以上の威力じゃ。
だがそれは吸い取る魔力の加減を間違えれば命の危険性に関わるでしょう。
反対意見があるなら、代案を是非聞かせてほしい。
場は静まり返り、この案は可決となった。臨時司令官は疲弊したエルフたちを鼓舞するための演説を行い、こう述べた。
万全の準備を整えた反抗作戦は二週間後とし、ガルマニア本国からくる第二軍団が到着前に何としても川を渡り橋頭堡を確保するのだ!
オオオオオオオッッッ!!!!
~臨時要塞地下司令部~
あれから敵の動きは無い。
どうやら、エルフどもは近くの村を襲撃し家畜や農作物を粗方盗むことにせいを出しているらしい。
我々が丘を占拠してから10日が過ぎた。
丘の各所に簡易的な塹壕が掘られ、地下陣地と通路も造られた。無論火薬庫も五つの地下保管庫に分けて、湿気対策をしっかり施してから収納された。
ゴーレムによる投石対策は完璧。
今後のため、本格的な要塞化も検討され、近場の石切場から石材とコンクリートがツギツギと搬入され、王都から大工や工兵隊、2500名の派遣も始まった。
(あとは、ドワーフたちに頼んだ試作大砲が来るのを待つだけか。)
俺は搬入履歴等を含めた書類に目を通し、次々に判を押した。
「なぁ、ユーキ中佐。最近あまりにも静かだと思わないか?」
確かに。敵は2週間近く動かず、目立った動きと言えば近くの村への掠奪行為や大型草食獣を狩る大規模な狩猟を行っているぐらいだろうか。あとつい先日から謎の横断幕がこちらの視界を塞ぐよう、敵陣との間二キロ地点に五ケ所設置された事ぐらいだろうか。
「そうだ、そしてこれ死体の数があわない」
先の戦果報告書によれば、出現したゴーレムの数から術者は少なく見積もっても五人はいたはずだが、術者の死体は三つしか確認されていない。
(予備の術者も総動員して来る可能性が高いか、、)
「今日中にも仕掛けてくる可能性が高い。準備を怠るなよ。」
わかっておりますとも、全て考慮はしていた。だが、何だろう嫌な胸騒ぎがする。そして、この嫌な胸騒ぎは必ず当たるのだ。
~エルフの最前線陣地 横断幕内 ~
よし、準備完了!
了解、始めろッッ!
ゴーレム召還!!投擲開始!!!
~臨時要塞地上~
今日の夕飯何だろーなー
工兵たちが王都から食肉を運んできたらしいぜ!
おー!!今日は久しぶりの肉料理か!
胸が期待で熱くなるぜ!
ヒュルルルルルルルルヒュルルルル
敵襲ッッッ?!?!敵のゴーレムが投石ヲッ
ドドドドドーーーーーーーンンンッッ!!!
~臨時要塞地下司令部~
何事だ!!
ハッ!敵のゴーレムが爆発物を投てき!!
兵に多数の死傷者が出ております!
何てことだ。敵も火薬兵器を持っていたのか?!
いぇ、爆発の閃光が緑だったことから新型の魔道兵器かと思われます!!!
~後方のエルフ陣地司令部 ~
いいぞ!放てェェッ!!
次だ!もっと撃ち込め!!
ドーン!ドドーン!
作戦は順調でありますな。あぁ、魔力を超圧縮した魔石50発も喰らわせてやればただではすまないだろう。
エルフのゴーレムによる投石攻撃は、三日間かけて実施され、追加の急造分を合わせると約200発近い魔石が、臨時要塞に叩き込まれた。
~臨時要塞内~
臨時要塞内の人的被害は酷いものだった。王都から派遣された工兵や大工2500名のうち、四分の一が原形を止めぬ遺体になるか、爆風で圧死した。
エリゼ少将率いる大隊3000名の死者と負傷者は1296名、部隊の半分が事実上壊滅した。
地上の施設はほぼ全壊し、要塞を取り巻く壁に空いた小さな穴は木材で応急処置が可能だ。しかしすぐに修復できない大穴が三ヶ所。
目の前で戦友を一瞬にして失い、絶望に苛まれ吹き飛んだ片腕を抱きしめ泣き叫ぶものもいた。
俺の直属の部下アルトとエディンも例外ではなかった。地下の救護所には一命を取り留めたものの、アルトは工兵と大工を庇い意識不明の重体。エディンは地上で消火活動中落ちてきた魔石の爆発で右腕と視力を失った姿で簡易ベットの上に横たわっていた。
偵察兵からはエルフの前線基地からゴーレムの術師たちが一時エルフ本陣に後退するのが報告され、地上での早急な復旧作業を開始した。
「諸君!聞けぃ!」
声の先には髪をほどきドクロの連隊旗を掲げるジャンヌダルク、、、いやエリゼ少将がいた。
我々がこの要塞を退けばより多くの兵や市民に悲惨な死が訪れるだろう!たとえ神が我々を見捨て、死が避けられぬ運命であったとしても我々の死に際に必ず死神が訪れ、死を対価とした勝利が保証されるだろう!
さぁ、今こそ立ち上がり!
嵐を巻き起こすぞ!
ウぉぉぉぉぉおおおおっっっ!!!
エリゼ少将の鼓舞に兵達が奮い起つ。
不思議な力だ。勇気がみなぎってきた。
ここからは、10日以上に渡る死闘を繰り広げた。エルフの残党たちはゴーレムの投石後、騎兵と歩兵が突進してくる。我々は魔道歩兵と騎兵を前線にエリゼ少将の大隊が掩護射撃を実施。
一進一退の攻防戦は続き、両軍ともに日に千の死傷者がでることになる。大隊の消耗は少なく、肉弾戦を繰り広げる魔道歩兵と騎兵の消耗は激しかった。
途中からゴーレムの爆発する投石物の数が激減した。これは戦後に知った話だが、エルフ側の過剰な魔力抽出による魔力切れが要因だったとのこと。
丘上の要塞を巡る激しい死闘は、第一次世界大戦のヴぇルダン要塞戦のようだった。
開戦から26日目
後方から人員と物資の補給が行われた。ようやく試製の大砲六門と後方訓練を終えた砲兵50名が到着し、歩兵の半数を失ったエリゼ少将率いる大隊の総数は4000名へと拡充された。
要塞の各所には急増品の鉄板が装甲材として施され、特に砲台まわりには重点的な爆風、破片対策が行われた。
た、大変です中佐!
俺はエルフ軍陣地に追加の兵五万名が到着した報告を受けた。偵察兵によるとゴーレム術者や魔力保有量の多い人材がかなりの数集められたとのこと。
「エリゼ少将!」
「ああ、中佐あとは任せる思う存分やってこい」
総員配置につけ!!!




