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血木樹(けつもくじゅ)

 庭から木の芽が出ていた。鳥の糞にでも混ざっていたのだろうか。

 木の芽はそれはそれは目を見張るほどの速さで成長した。竹の仲間なのかもしれない。

 ひと月も経つと背丈ほどの高さになった。少し成長が速すぎる気もするがこうなると愛着もわいてくる。木の肌を撫でたらささくれが刺さった。痛い。数滴血が滴るくらいには深傷を負った。ほんと、痛い。

 ますます成長の速度が速くなっている。今では見上げるくらいにはなっただろうか。雀が根元で死んでいた。かわいそうに、せめてもの供養だ、根元に埋めておいた。

 しばらくすると次はカラスが死んでいた。同じく埋めておいた。この辺にイタチでも住んでいるのかもしれない。乱闘の跡らしきものがあった。

 その次は鶏が死んでいた。おいおい、流石にこれはおかしい。近くの学校からでも逃げ出して来たのだろうか。またしてもイタチか何かに襲われたような跡があった。木の枝が数本折れていた。幹には血がついている。木も被害者か。苔も生えていたしせっかくなので綺麗に掃除しておいた。

 その次は犬だった。首輪がないのでおそらく野良だったのだろう。強いイタチがいるものだ。またしても木が汚れていたので掃除しておいた。

 木の根元から鹿の角が生えていた。誰かの悪戯か。そのままにしておいたら数日後深く埋まっており、先っぽしか確認できなかった。若干、木の肌が赤みを帯びてきた。花でも咲くのかもしれない。できれば木の実がつけば嬉しい。

 それからも度々、根元で動物が死んでいた。中には猿のようなものの骨まであって度肝をぬいた。ぱっと見、人と変わらないからな。そうして、この木は動物たちからすると神聖なものに見えるのかもしれないと結論付けた。死に場所的なものなのだろう。こちらからすると迷惑この上ないがすることもないので木の手入れをするにはもってこいなわけだ。

 花が咲いていた。真っ白い大きな、綺麗な花びらで雌しべから甘ったるい香りがした。あれだけ甘い香りを漂わせていたら虫が寄ってきそうなものなのに不思議と虫は見かけなかった。

 赤い実がなっていた。どこまでも深い深い、赤い、赤い色の実だった。食べれるのかは知らなかったし、そもそもこの木が何なのかは未だに全く分かっていない。しかし不思議と手を伸ばしてその実を手で包み込むようにしていた。軽く引っ張ると簡単に離れた。何のためらいも無く一口囓るとほのかな甘みのあとにほんのりと塩気がする、鉄っぽいと思った。囓ったところから真っ赤な果汁が指を伝い滴っていた。



ちょっぴりホラーを書こうとしてた時期がありました。

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