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ちょっとは疑ってみましょうよ。  作者: ハシドイ リラ


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9/9

そして幸せに暮らしましたとさ。

「お父様。お父様はご存知だったんですね。セリンかかさま、いえセリン様の出自も何もかも。」


「すまないね、クリスティーネ。ポリソルベ公爵から頼まれていたのだよ。表立って名乗り出ることはできないが出来るだけのサポートをしたい、とね。だから身の上に同情したことにして働き口として名乗り出たんだ。ハウスメイドなら、贅沢はできなくても、最低限の安全は保障できるからね。セリン殿があの娘を手放さない限り公爵家に呼び戻せない。だからあの娘の成人までは安全に暮らせることくらいしか手伝ってやれなかったんだよ。」

相変わらず食えない御仁である。

ただ今なら少し分かる。食えないだけではなかったってこと。


セリン様は元公爵令嬢だ。ハウスメイドとはいえ礼儀作法はバッチリだし、人当たりも良い。母を亡くした幼子への配慮ができる使用人としては最適の人材だったのだろう。家庭教師が本格的につくまでは令嬢としてのマナーをさりげなく教えてくれる、乳母とも違う存在だったのだ。


「お母様は亡くなったお母様ひとりだ。これは父様は絶対譲れないんだ。ごめんね。そしてセリンはエステルのお母様だからセリンのことをお母様って呼んでいいのもエステルだけなんだ。

…でもね、優しくしてくれるセリンを使用人として呼び捨てにするのが悲しいのもわかってるよ。だからセリンのことはセリンかかさまって呼んではどうかな?一度そう呼んでも嫌じゃないかセリンに聞いてごらん。」

エステルのお母様呼びを羨ましそうに見ているわたくしにそう言ってくれたお父様。

本当ならハウスメイドのことを母のように慕うなんてあってはならないこと。

それでも認めてくれたのはかかさまの身分を知っていたこともあるだろうけど、父なりの愛情でもあったんだろう。




※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


あの大騒ぎの後日談だが。


最後の盛大なる自爆でエステルを庇うものはいなくなった。なんせ侯爵令嬢を突き飛ばしながら罵ったからね。処刑待った無しか?という状態だった。

でもね、庇ってくれた人がいたのよ。たった1人だけ。


そう、セリンが庇ったのだ。彼女の爵位への執着を上手く諌めてやれなかったのだと。どこまでお人よしなんだか。…けれど私もまたその愚直とも思える人の良さに救われた人間なのだ。そんなセリンかかさまがどうしてもっていうなら反対できないよね。


とはいえ無罪放免とはいかない。兄であるポリソルベ公爵に相談して一旦男爵位を継がせる。その後で簒奪に対する罰ということですぐ剥奪し、戒律の厳しい修道院に送り込んだのだ。

やらかしたことに対して若干罰が軽いのではないかとも思うが、公爵様にまで頭を下げられたらもう、ね。そのかわり、今まで苦労したセリンかかさまを幸せにしてあげて欲しい。



そして元入婿のソルビタンは。

意外や意外。別の入婿先を得て子爵位を賜ることになった。

とはいえものすごく限定的な物で、若くしてお亡くなりになった子爵のピンチヒッターなんだとか。正当な後継者である3歳の息子が成人するまでの繋ぎなので、今回のポンコツ具合も都合が良かったらしい。滅多なことではもう婚家に楯突こうなんて思わんだろう、ということで。

それでもあのやらかしの後、平民にならずに済み短期間とはいえ子爵を名乗れることになったのだ。

そして勤め上げた後は、それなりの資産を譲り受けた上での隠居らしいからね。簒奪疑惑があった元入婿の余生としては上々でしょう。


ーー-実態は先代入婿である子爵の死亡理由がね。過労といばりんぼうの家つき娘によるストレスらしく。彼くらいしか引き受け手はなかったのだとか。

まあなんだ、がんばれ!




そして適齢期の真っ只中に入婿を失うという大ピンチだった私だけれど。


「私も婿入り先を探していたんだよ。ちょうど良くないかい?」


「おお!我が家も大歓迎ですよ!第二王子。」


どうやら第二王子がやってくるらしい。


「私が婚約の打診をしようとしてたのに!アイツに掻っ攫われたんだよ」


我が家的には多少腹黒い婿殿の方がありがたいのかもな。

この人だったらあんな稚拙なハニトラもどきに引っ掛かることもないだろう。だがしかし。


「私が侯爵になるんですが、その点には思うところはないんですか?おそらくソルビタンはその辺りもコンプレックスで、侯爵夫人として支えたいと言ったエステルの言葉を信じたかったみたいですよ」


「私は第二と呼ばれて久しいんだよ。いつでも二番目。誰かの予備。産まれてからずっとそうだったんだよ。今更1番前に立て、と言われるよりも支えに回る方が性に合うんだ」


ふーん。なら、まあいっか。


末長く、よろしくお願いします。


私は第二王子の手を取ったのだった。



ーーendーー

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