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Ep03.「シルエット」
息を切らして校門の前に着いた時、あたりはもうじわじわと闇に染まりつつあった。
グランドで練習に励む生徒も見えない。
県立高校にしては真新しく大きな校舎からいくつかオレンジ色の光がこぼれてる。
校門から見えるA棟は、だいたいが教室で占める。
一年生の教室が並ぶ四階に明かりは無い。
三階の一番端から二番目、2-2の教室に明かりがある事に驚いた。
「まだ、だれかいるのかな?」
こうゆう時、わたしは一人ごとを言いやすい。
静かに、ゆっくり階段を昇る。
音の無い一、二階を過ぎる。
ひんやりと冷たいアルミ製の手すりが手にへばり付きそうで怖い。
すぐにそれが自分の手汗が引き起こしているんだとわかる。
……夜の学校は、どうも苦手。
細い光が半分閉じられたドアからこぼれてる。
ゆっくりと動く人影が見えた。
高く、細いシルエット。
女の子にしては大きすぎるし、こんな遅くまでたった一人で残っているとも思えない。
「クラスの男の子かな?」
胸の鼓動が高まる、緊張してるのかな?
わたしはそっとドアを開けた。