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Ep25.「世界のドア」


放課後、僕は屋上に向かう為渡り廊下を歩いていた。

教室のあるA棟には屋上へ続く階段がなく、渡り廊下を挟んだB棟の階段を使わないといけない。

この校舎を設計した人が何故こんな構造にしたのか、以前そう問われていた先生でさえもわからないらしい。


「で、ホントに心当たりないんだな?」

「もう、涼!なんで、そんなに巧くんのこと疑うのよ?っ」


僕の隣を並んで歩く二人、愛ちゃんと三上さん。

そう、あれはつい先ほど。ホームルームの終わった後すぐだった。


「さっ、行こう?巧くん!」

「園崎、お前がなにしたのか、しっかり見届けてやる」


僕の前に立ちふさがった二人。


あ、逃げられないんだ。


僕は、瞬間的に悟っていた。


「まぁまぁ、二人とも。でも、本当に行かなきゃ駄目かな?」


あったりまえだろ!と、揃って僕を睨む。

俯きため息しか出てこない。

問題を起こしたくない、それが僕の切実な願いだった。

……と、言ってももう起きてるとしたって過言じゃないのかも。


「でもさ、会ったこともないのにいきなりケンカ売る奴もいないよな。てか、相手女か」

「わかんないよ。後ろにゴツゴツの男の人いるかもしれないし」


えぇ……


「でも、ここ学校だぞ。部外者は入ってこれないだろ?」

「あ、それもそうだね。もしかして、恐喝とか!?」


もう勘弁して……


「それはあるかもな。やっぱ尚更、あたし達付いて行ってやらないと」

「うん。安心して巧くん!もしもの時は、すぐ先生呼んでくるからね!」


あぁ、もう終わった……


「うん……ありがとね、二人とも」


えへへ、と嬉しそうに微笑む愛ちゃんと、なぜかワクワクしている三上さん。

たとえ、誰であろうと女の子に呼ばれた先に女の子を連れて行くなんて、良いことじゃない。

でも、もうこの二人はどうやっても止められないだろうな。


この先に待ち受ける不安とどうしようもない罪悪感。

僕の描いた高校生活は、いろんな意味で崩れつつあった。



「でもさ、もしかしたらそいつ、意外と知ってるやつかもよ?」

「え?でも、あの人に全然思い当たるとこないよ。それに、正直言って苦手なんだ。ああいう 感じ の人って」


そうなんだ。僕は、あの手の人が苦手なんだ。

嫌いなわけじゃない。ただ、純粋に苦手なんだ。

例えるなら、住む世界が違うんだと思う。

派手できらびやかな世界に住んでる人達にとって僕は、異人。


いつでも、なにをするにも一歩引いてきた僕は、きっと快く思われないんだろう。

結局、どんな風な人達からしたって僕は、異端者。

どこにも馴染めない。八方美人を気取ってるだけ……

得意な 感じ の人なんて実際、いないのかもしれない。


でも、なんでかこの二人は違うような気がしてる。

素直に笑えて話すことができて、そして愛ちゃんに惹かれてる。

それに三上さんとは、不思議と会話に困らないし。


浮かれてるのかな?


きっと、良いことばかり最近多すぎるんだ。でも、今のこの幸せを大事にしようと思える。

短い間でもいい。僕が本当の僕でいられるこの人達、この時間を……



「そんなの見りゃわかるよな、愛?」

「え?さ、さぁ?」


軽く流した愛ちゃんは、気まずそうに笑った。



こらが最後の一段。

目の前にあるスチール製の扉。この先から なにか が始まるのかな。

ノブを握るのに戸惑っていた僕にささやくように三上さんが言った。


「いるんだよ。思わぬ所から自分を見てる他人やつって」

「え、それってかづぐわぁん……」


愛ちゃんがなにか言おうとしさのをすかさず手で塞ぎ、三上さんは薄い笑みを浮かべた。


「ほら、行くぞ?」


頷いた僕は、ノブに手を伸ばす。

ドアは、思っていた以上に軽々と開いた。



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