Ep17.「オレンジ」
図書室での時間は、あっという間でわたし達は、鳴り響くチャイムを合図に立ち上がった。
「明日も来ていいかな?」
巧くんのお弁当箱をバックに入れながら聞く。
「うん。愛美ちゃんが良いなら喜んでっ」
子供みたいに笑う巧くんは、うそやお世辞を言っているようには見えなかった。
「ホントっ!?ありがとう」
この人の前だと自然と笑顔がでてくる……
それからわたし達は、並んで教室まで戻った。
「涼、帰ろっ?」
放課後、教室に残っていたのは、わたし達だけ。
涼は、静かに立ち上がり座っていた椅子を机の下に入れ頷いた。
下駄箱脇の販売機で、紙パックの紅茶を買うとわたし達は校舎を出た。
校門まで続く並木。
沈みかけた太陽、優しいオレンジ色の夕陽。
グランドを駆けるサッカー部と軽快な金属音を響かせる野球部。
トラックに並んでいるのは陸上部の1年生かな。
「背の高い、いいオトコだな」
吹く風のようにサラっと、でもどこか惜しそうに涼は言った。
「へぇー。涼、タイプ変わったの?」
覗き込んだわたしから逃げるように顔を背けると涼は、勢いよく紅茶を吸った。
「ヘンなのぉ。タコみたいだよ?」
口を尖らせる涼は、なんとも可愛いらしい。
こんな彼女を独り占めできるなんて……たまらないよ。
「涼の彼女も悪くないねっ」
微笑んだわたしに涼は、でこピンを見舞った。
「いったぁ……ちょっとは加減してよお!」
顔を上げた先、夕陽の色とは違う、頬を赤く染めた涼が笑った。
「ばか」
涼は、大きくゴホンとすると大股で歩きだした。
「ねぇ、怒ったぁ?」
背中に飛びついたわたしに涼は、真っ赤な顔を振った。