ゴリラ?
自分でしてから、気づいたらまた異世界に戻っていた。あの時の感じ、何だかあの行為をしたこと自体が無くなったように感じる。おそらく、異世界だからかな。気づいたら、またクスと抱き合った場所に戻っていた。よく考えると、俺たちってよく密かに抱き合ってたよな。
そう考えて、少し顔が赤くなった。「ちょっと、俺って最近すごく弱くなったのか?」なんて思いながら、でもそんな自分を否定できない。俺は男らしい男なんだけど、こんな気持ち初めてだし、どうしようもないよな。まぁ、異世界に来たんだから、そっちに集中しよう。でも今は、異世界に一人きりだ。クスがいない。どうしよう。言葉もよく分からないし、何て言えばいいのか…。
そのことは後で考えよう。まずは、クスと最後にいた場所を思い出し、目印をつけておくことだ。俺はその場所に円を描き、名前を書いた。クスが来た時に、俺が来た証拠になるように。次に、俺は進むべき方向に歩き始めた。今、俺はオワシン国にいる。リアアの街を出て、まだ遠くはないけれど、この辺りは森と少しの村があるだけ。どうやら外れの町みたいだ。
歩いていると、何か動物の鳴き声が聞こえた。でも、それはどう聞いても苦しそうな声だった。その声は、森の左側から聞こえてきたので、俺はその方向に走り出した。
「@#@@##@#@@#~~」
倒れた木の残骸が見え、そこでようやくその声の元を見つけた。そこには、狼の耳と尾を持つ男が泣いていた。その男は何かを呟いているけれど、俺には理解できなかった。俺は少しずつその男に近づいていった。
その狼の男は、涙まみれの顔で俺を見上げ、血に染まった赤い服を着ていた。そして、彼の前には、血まみれの剣が刺さった老人の死体が横たわっていた。それを見た瞬間、俺は驚きで動けなくなった。「まさか、死体?本当に…?」
驚いている間に、その狼の男が歯をむき出しにして俺に牙を向け、だんだんと狼の姿に変わっていった。俺はすぐに逃げるべきか迷ったが、待てよ、俺は何もしていないじゃないか。どうして狼が俺を攻撃してくるんだ?
俺は手を差し出し、ゆっくりと狼の方に歩み寄った。少しずつ、一歩一歩歩いていく。そして、狼の頭をそっと撫でてみた。すると、狼は少しずつ姿を変え、再び男の姿に戻った。
どうやら、この狼の男は俺が敵ではないと分かったみたいだ。でも、問題は、その死体と壊れた木だ。どうしてこんなところに死体があり、木が壊れているんだ?
「@###@@@」
少年狼は何かを言っているが、私はその言葉が分からなかった。きっと助けを求めているのだろう。少年は老人の死体の近くに立ち、彼を抱きしめながら泣いていた。それを見た私も思わず涙がこぼれそうになった。そうか、アニメの力だ。ヒーリングの魔力。私は魔法の力を持っているはずだ。きっと、この力を使って老人を助けることができるはずだ。試してみる価値はあるだろう。何が起こるか分からないし、とりあえずやってみよう。
私は手を老人の死体に伸ばし、魔法陣を思い描いた。「清浄」「水の精霊」「谷間」その時、緑色の魔法陣が現れた。刺さっていた剣が少しずつ抜け、剣による傷も次第に癒えていく。でも、思ったよりも難しかった。腕に重みを感じ、まるで何かが私の体内を通過しているような感覚があった。それがじわじわと外へ出ていくのを感じながら、魔法陣は次第に黒くなり、何か強い気配を感じた。その時、私は魔力の使用を即座に止めた。
私は老人を癒すことができたが、命を蘇らせることはできなかった。謝りたかったけれど、言葉が出なかった。それが、私の力の限界だ。
自分を責めていると、涙にまみれた少年狼が近づき、私を軽くつついて何かを言った。
「@##@#@#」
少年狼は、まるで老人がもう目を覚ますことはないと分かっているかのように、泣きながら言った。私はその言葉が理解できなくても、なんとなく分かった。
「@###@#@」
少年狼がまた言うのを聞いて、私はそのまま何も分からずに聞いていることが耐えられなくなった。だから、魔法を使って言葉を理解しようと決めた。両手を合わせて、私は呪文を唱えた。「言葉を理解せよ」と。その瞬間、小さな魔法陣が現れ、私は言葉を理解できるようになった。そして、その時、私はついに言葉を発してみた。
「す、すみません、もう一度言ってもらえますか?耳が…わ、私、あまり得意じゃなくて…」
私はそんなことを言いながら、心の中では少し申し訳なく思っていた。
「ご主人様、助けてくれてありがとう。でも、これで十分です」
少年狼はそう言って、彼の声はとても柔らかくて、まるで少年というより、むしろ少女のようだった。
「そのことについても謝らなければならないけれど、命を蘇らせることはできなかった…」
「気にしないでください。だって、ご主人様が言っていた通り、すごい人に会えたんですから」
「すごい人? すごい人って何ですか?」
「それは、私が初めてご主人様に会った時のことです。動物の種族がたくさん住んでいる国で、私の両親もその国から来ました。ヘヴァーという国です。そこでは動物の種族と半獣人の種族が一緒に暮らしています。今、そこでは何が起きているのかは分かりませんが、あの時の出来事で私は両親と別れることになりました。というのも、騎士たちが国を侵略してきて、私を含む皆を捕まえて、強い者たちは処理してしまったんです。その後、私の仲間たちは、動物の半獣人を好む王族たちの性欲を発散させるための道具にされ、私のような男は捕まって拷問を受けました。ですが、その時に逃げ出して、オワの国に来て、ご主人様に出会ったんです。それからリアアの外れの町に住んでいます。あ、すみません、質問には答えられていませんね。すごい人とは、ご主人様が言った通り、魔法の力を持った人で、私が子供の頃にご主人様を助けたことがある人です」
少年狼がそう話し終わった後、私はしばらく驚いてしまった。ヘヴァーという国、そして半獣人たちが性欲のために扱われ、拷問されていたなんて…その話を聞いて、少年狼がどんな過酷な経験をしたのか、心が痛んだ。
「君が言う『すごい人』って、私と同じような力を持っている人なんですか?」
「はい、そうです。それにとても強いんです。ご主人様は、もし魔法使いに会ったら、それは信頼できる人に会ったことだと言っていました」
「そういうことか…じゃあ、私は君のご主人様が言ったように信頼されるような人になるよ。ところで、君の名前はなんて言うんだ?」
「き、き、き、ありがとうございます!本当の名前は覚えていませんが、ご主人様がつけてくれた名前は、サイビア・アーガーです!」
「サイビア・アーガーって、いい名前だね」
「そうでしょう?だって、ご主人様がつけてくれたから」
「それで、その『すごい人』って、名前は何ですか?」
「私の名前は、ビウです」
「ビウさん、よろしくね!」
「よ、よろしく。でも、名前の前に『すごい人』を付けなくてもいいよ」
少年狼の名前、サイビア・アーガー。それをしっかり覚えておこうと思った。ご主人様が言っていたように、信頼されるべき人になれるよう頑張る。そして、半獣人が人間と結婚して家族を作ることができるのか、少し気になった。
/これを見て、クス。私たちの初めての子供が生まれたよ。名前は何にしようかな…/
ば、ば、ば、馬鹿だな、なんでこんなこと考えてるんだろう…クスのことをどうしてこんな風に考えてしまったんだろう、なんでだろうな…
私は自分の考えに驚きながら、心の中で自分を責めていた。
その時、私はサイビアと一緒に、サイビアのご主人である老人の遺体を埋めていた。サイビアは大きな木の後ろに穴を掘り、ご主人に最後の別れを告げるために、唇を重ねて「さようなら、ご主人様、僕はすごい人に出会った」と言った。サイビアはその後、老人を埋めていた。そんな彼を見て、私は思わず胸が締め付けられ、涙が出そうになった。
遺体の処理が終わると、私はサイビアに服を脱がせて、近くの川で体を洗うように言った。サイビアの顔は一見普通の少年のようだったが、体つきは引き締まっていて、筋肉がしっかりしていた。どうやらもう子供の時期は過ぎて、大人に近い年齢なのだろう。
サイビアが体を洗い終わると、私はリアアの町に行って、彼に新しい服を買うために出発した。途中で、なんだかいつもより帰るのが遅く感じることに気づいた。どうしてだろう…話し相手もいないからかな…。
考えてみると、なんだか寂しい気持ちになってきた。私はぼんやりと歩き続け、道端の物売りの商人から目をそらしながらリアアの町にたどり着いた。今、私の手元にはクスと分け合った2セセンゴールドしかない。この世界では、衣服の値段が10セセンゴールドを超えることはないだろうと思う。準備を整えた後、私は町の中に入った。
だが、突然、周りの人々が私を見ているような気配を感じた。その視線がとても強く、言葉では表せないほどの圧力を感じた。どうやら、リアアの町では私が「召喚獣を一度で倒した魔法使い」だと知れ渡っているらしい。町の人々が私を注視しているのが感じられた。そして、そんな中で声が聞こえてきた。
「ねえ、あの子だよ。召喚獣を一撃で倒したって噂の子。」
「これが、あの騎士たちが言ってた女の子?」
「ええっ!?この小さな少女が?」
私はそんな声を耳にし、なんだか不思議な気持ちになった。まるで賞賛されているような気がしたけれど、ちょっと慣れない感じだ。実際、現実世界とは全然違うなと感じた…。
その時、ドン!ドン!ドン!ドン!という、まるで地面が揺れるような音が響き、何かが近づいてくるのを感じた。
そのとき、私は服を買うための店を探していたが、突然、私の後ろに巨大な何かが現れた。その物体の高さは、私の背丈よりも遥かに高く、その影が私をすっかり覆ってしまった。私は振り返ると、そこにはゴリラのような顔をした巨大な男が立っていた。彼の身長はクスよりも数百センチ高く、筋肉がしっかりとついていて、獣の強烈な匂いが漂っていた。そして、右手には棒のようなものを持っていた。
そのゴリラのような男は、自分の持っていた棒を地面に落とした。棒が地面に落ちた音は、まるで爆発が起きたように大きく響き渡った。しばらくして、そのゴリラ男が口を開いた。
「我が名はワードス。王の血を引くゴリラの種族で、次の王となるのはこの俺だ。しかし、今はそれは問題ではない。長い間、俺は伴侶を探している。強く美しい人間よ、俺と結婚して、俺の血を受け継ぐ子孫を残してくれ。」
ゴリラの男はそう言うと、地面に落ちた棒の音とともに、堂々とした声で告げた。
うーん、何を言っているのかよく分からなかった。爆発音みたいな音が耳に残っていて、少し耳がうるさくて、言っていることがよく聞き取れない。彼が何か言っていたようだけど、耳がまだうるさくて、どう返事をしていいのかもわからなかった…。
「どうだ?俺の妃になる気はないか?」
「あ…あ…えっ!!」
「妃になる?」って、な、何言ってるんだ? まさか、今俺に妃を提案してるのか?さっきの爆発音みたいな声で、俺の耳がまだボーっとしてるし、どういうことなんだ? それに、さっき言ってたのは、俺に一緒に住むことを勧めているのか?そんなの絶対に嫌だ! あんな場所、怖すぎるって! いや、まずはしっかり断って、さっさと服を買いに行かなきゃ!
「そ、そんな…答えられないよ。」
そう答えた瞬間、なんだか体が勝手に動き出して、私は必死にその場から走り去ることになった。
「答えられない?答えられないのか!!!」
ゴリラの男は怒声を上げて、私の断りを受け入れられない様子だった。そして、彼は床に落ちた棒を拾い上げ、私が走る道をふさいだ。
くそっ、めちゃくちゃ怖い!まるで暴れ回る巨人に遭遇したかのようだ! ゴリラの男は私の前に立ち、私を抱え上げようとしている。
「いやぁぁぁ!!」
私は恐怖と驚きで叫んだ。どうしていいかわからず、パニックになってしまった。でも、召喚獣を倒した時のことを思い出した。そうだ、あの時の力を使えば…
私は思い切って、そのゴリラの男の胴体に向かって指を差し、集中しようとした。指と男の体を合わせるように力を込めて…。その瞬間、全てが遅く見えた。ゴリラの男が腕を伸ばして私を抱えようとしているのが、まるでスローモーションのように感じられた。そして、汗が私の顔から滴り落ちていくのが見えた。
その時、指から何かが現れ、まるで針のように小さな物体が出現し、青紫の炎をまとっていた。それはゴリラの男の腹部に向かって一気に飛んでいった。
フッ!
矢のように飛んだ針が空気を切り裂き、時間が再び通常に戻った。針がまるで光のように飛び、ゴリラの体に直撃すると思ったが、それは予想外だった。ゴリラは木の棒でその攻撃を防ぎ、飛び退いた。なんだ、それはどういうことだ?どうして俺の力を防げるんだ?俺、絶対にゴリラに嫁にされるなんて嫌だし…!
「もうやめろ、ゴリラ!」突然、女性の声が響くと、ゴリラの足元に魔法のリングが現れた。
その声に反応して振り返ると、フードをかぶった人物が現れ、魔法を使ってゴリラを止めていた。リングが消えた瞬間、召喚獣が現れて、ゴリラは痛みの叫びをあげながら右足に大きな傷を負った。
ゴリラは苦しみながらも、街の外に飛び退いて叫んだ。「覚えてろ、この人間!俺は必ずお前を、あのブレスレットと一緒に仕留めてやる!」
ゴリラが去った後、俺は一息ついて地面に座り込んだ。あぶねぇ…一歩間違えば本当にあのゴリラの嫁にされるところだった。思わず大きなため息をつき、体をゆっくりと休めた。
「おい、あんた、もしかして異世界に来ちゃったのか?」フードをかぶった人物が近づいてきた。声を聞いた瞬間、俺はすぐにその人物が誰だか分かった。
「まさか…そんな、ちょっと寝ていただけだよ。あれ、でも、なんでここにいるのは…?それに、君も異世界に来ちゃったの?」
「うーん、まあね。学校が退屈で、タイラーはバスケして、メイは本を読んで、私は寝てたの。」
「そうか…ありがとう、ほんと助かったよ。あのゴリラの嫁にされるとこだった。」
「ふふ、あんなの嫁なんて怖すぎだろ。」
「ほんとだよ…だから怖かったんだよ。」
「それより、何しにこの街に来たの?」
「実は、ハーフビーストの部族であるサイベイ・アーガーに会いに来たんだ。彼からいろいろ話を聞いて、部族がどこかの王国に捕まってることも知った。それで、彼に服を買ってあげるためにこの街に来たんだ。」
「へぇ、面白い話だね。じゃあ、服のことなら、私が紹介してあげる。」
「ありがとうございます、でもその前に教えてほしいんですけど…」
「まず、聞いておいて欲しいんだけど、この世界では服が異常に高いんだ。素材が希少だからね。例えば、服一枚で40~50セーセン(お金単位)だよ。」
「えっ…そうなんですか。でも、僕は今2セーセン金を持ってるんです。」
「…。」
「まぁ、いいや、ついてきな。店の前で待ってるから、君は先に選んでくれ。」
「は、はい!」
その後、私は先輩に連れられて街の服屋に行った。外観は高級感があり、まるで豪華な服屋のようだった。
キン!キン!
店の扉を開けると、メイド服を着た女性が出てきて、私を迎え入れてくれた。思わず自分の胸に視線を落として、少しだけ残念に思う。だが、メイドの女性は優雅に微笑みながら、私に言った。
「いらっしゃいませ、冒険者様。何かお探しでしょうか?」
「ええ、服を一着買いたいんです。」
「かしこまりました。」 メイドはすぐに服を取りに行き、数分後、私の前に服を持ってきてくれた。「こちらがご希望の服です。お値段は60セーセンになります。」
先輩が言った通り、ここの服は武具や防具よりも高価だった。私は代金を支払い、店を後にした。その後、先輩に別れを告げ、再び街を出て、サイベイを探しに行くことにした。途中で母のことや、クスのことが頭をよぎり、少し寂しさを感じた。
道を歩いていると、急に一人の少女が私の前に現れ、何も言わずに何かが包まれた紙を差し出してきた。私はそれを受け取ると、少女はただ笑顔を浮かべて立ち去った。何も気にせず、そのまま歩き続けたが、心の中ではクスのことが気になっていた。
歩きながら、あたりを見回していると、以前クスと一緒に過ごした場所に近づいていた。そのとき、目の前に何かが見えた。
「誰だ、あれ?」
「おお、君か、ビウ。最近ゴリラが街から逃げたのを見たんだ。何かあったのか?」
サイベイはゴリラが街を飛び出したのを心配して追ってきた。だが、今、心配すべきなのはサイベイの方だ。彼は体がびしょ濡れになっていた。サイベイはまったく気にしていない様子だが、私の顔は真っ赤で、彼と目を合わせることができなかった。
その後、私はサイベイにシャツを渡し、彼を森に送り出した。だが、そこで重要なことを忘れていた。サイベイのシャツのサイズを考えずに買ってしまっていた!慌ててサイベイの元に戻ると、目の前には彼が裸で立っていた…。