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神の童  作者: 飛 雪兎
2章 異世界の平和な生活
9/9

第9話「空白と帰還」

 …幼少期の生活とはあまりにも早いもので、ミレイやトビ先生に会ってからもうすぐ1年半が経とうとしていた。

 つまりは、もうすぐ九歳ということだ。


 ミレイは、学問において圧倒的すぎる才能を見せ、今や15歳レベルのものをやっている。

 …俺は…まあ人には才能の差があるよねって感じだ。一応他の子供より遥か上のレベルではあるそうだが、隣でやってる人が凄すぎて全く実感できない。


 そして、今日はトビ先生が長期出張から帰ってくる日だ。

半年前くらいに政府からの要請で戦地を飛び回っていたそうで、面倒だと手紙でよく言っていた。

 なにより、先生がいなかったからここ暫く模擬戦をしていなかったので、恐らく感覚がとっても鈍っている気がする。


ーーーーーーーーーー


「たっだいま〜!」

「お帰り、トビ先生」

「おかえりなさいませ、トビ様」

「久しぶりだね2人とも、アル、僕がいない間ちゃんと勉強してた?ちゃんと戦えるようになった?アテナは2人の世話をありがとう」


「いいえ、これもメイドである私の役目ですので当然です」


「おー、凄い信頼できる、流石アテナだ。というか、アルはなんか変わったね、もしかしてまた強くなった?よしじゃあ…」

「無事でよかったです、トビ先生。とにかく今は疲れているでしょう?今日のところは休ん…」

「よしじゃあ戦おうか!」


 …なんとなく予想はしていた。話を遮ってでも避けようとした事態は、さらに遮られて強行された。この人には疲れとかいうのがないのか?


「というか、なんでこんな静かなの?この家」

「ああ、それなんですけど、今両親と長男のアルベルトは政治関係で王都に、次男のアノスは大学のままです。ミレイは…呼んだら降りてくるかと」


 多分、ミレイは寝ている。というかそもそも同じ家に住んでいてもほとんど会話はしない為、詳しい生活事情は知らない。


「あれ、先生帰ってきてたんだ。おかえり」

「おー、ただいま。ミレイ、早速だけどこの後模擬戦やるから準備しといてね」

「わかった、覚悟しといてね。アル」


 …なんで!?なんで俺は覚悟決めて挑まないといけないの?もしかして真級に行けるくらい強くなったんすか!?


「ほら、アルも早く準備する、時間大事に」

 …午後の授業をすっぽかして突然王の命とはいえ出張行った先生が何言ってるんだか。


ーーーーーーーーーー


「んじゃ、これから模擬戦やるけど今回はバトロワみたいな感じで、自由に持てる力を全て使って戦おう」


 ミレイが、俺のと同じくらいの長さの杖を持っていた。あれは確か去年の誕生日プレゼントでもらっていたものだが、実際に構えているのを見るのは初めてだ。


 …なんというか、絵になるな。

 転生前の世界なら絶世の美少女って言われそうな人が身の丈に合わない杖を持つ。だがそれに込められた魔素は恐らく常人の3倍はあるだろう。


「ちゃんと結界張っとくから死にはしないし、外界には影響出ないようにしとくから安心してね、じゃあ…始め!」


赤色閃光弾(レッドブラスト)


 …そう、それは一瞬の事だった。始めの合図の直後にトビ先生に向かって、赤い光線が飛んでいった。なんの魔術かすらもわからない上に、速すぎて目で追えなかった。


「ちょっと、血の気が多すぎるんじゃない?こんなん生身で受けたら死ぬって。でも、それだけ成長してるってことだもんね、良き良き」


「えー、怖。無理だってあんなん来たら」

 思わず口に出てしまった。俺もまあまあ頑張って勉強してるつもりではあったが、あれに勝てるようなものはなさそうだ。実戦で使ったことはないが。


地動赫玉(フォーススフィア)

 手元から見慣れた赤いブラックホールが飛んでいく。しかし、それを上回る防護壁が既に立っていた。

水氷領域(ウォーターフィールド)


「おーおー、こりゃ凄い進化だ。…アルー?もっと本気出してー」


「できたらやってますって」


 …そう、なんと俺はもう限界来そうな次元の戦いなのだこれは。さっきからずっとミレイの方から飛んできている『魔素砲(エスンスキャノン)』を耐えるだけで割と疲れる。

 本気と言っても、あとは新技使うくらいしか…あ、新技使えばいいのか。


 実は、この1年間で新技を7つ習得した。使えるかどうかはわからない。だが面白そうなのを選んで練習した。特に7番目に習得したのは使ってなくとも強いとわかるものだ。


「もしかして、先生は攻撃しないの?」

「へー、煽りも成長したわけか、いいね!ほらアルも負けてらんないよー?」


 …見下ろされている。いつもそうだ、先生とミレイは空を自由に飛べる。実は、俺は飛ぶ才能に関しては皆無だった。一応『浮遊(フォール)』で浮かぶことはできても姿勢は最悪、制御すらできかった。


 …だから、考えた。

 辿り着いた答えは…逆のことをするということだった。先生達が空を利用するならば、利用されるくらいなら…俺が奪ってしまえばいい。

反魔術域・改(リフュースマジック)


「あれ…?」

「あ…反魔術域か!」

 2人が空から落ちてきた。落とした時の優越感は、中々のものだった。


「アル、これはただの反魔術域か?だとしたらなぜこんなに広くできたんだ?多分、僕でもこんな広くはできないよ」


 先生の言うことはごもっともだ。恐らく世界レベルじゃないのかってレベルになるように発動させたからな。


「これは、反魔術域ですけど違うんです。先生がいない間に改良して、特定人物だけを対象にすることによって範囲の拡大に成功しました。後もう一つ、本来のものは内側にいるだけで魔術を全消ししますよね」

「そうだな、基本的に肉弾戦に持ち込んだり魔術で自分が不利になったときに使うものだからな」

「ですが、改良したこれは使えるんです、魔術。その内側では発動者だけが」


 ミレイがポカンとした顔で見ている。ちょっと面白いな、こういうのも。


「つまり、この空間の中に連れ込めば一方的な戦いができるように作り替えたと?」

「そういうことです、先生。これが今の全力技の一つです」


「一つってことは、まだ他にも持ってる感じか?」

「ええ、そうです。使いますか?」

「…いいね、最高の進化だアル!どんどん行こう!」


 …は?反魔術域が壊された??魔術使えないはずなのに?

「先生、今何しました?」

「これを破ったことか?簡単な話だ。さっきまで張られてた結界より強い結界で押し勝ったんだよ」


 …まじかよ。

 まあそりゃそうか、忘れてたけどこの人真級だしな。


「じゃあ、続きを始めようか。」


ーーーーーミレイ視点ーーーーー


 アル、本当にこれだけなのかな…

 さっきから自分の撃った魔素砲をただ防ぐだけで全く反撃してこないし…


 トビ先生とアルが何か話してるのはわかっていた。だが、内容までは聞き取れなかった。それを考えている時に、スッと足元が掬われた。


反魔術域・改(リフュースマジック)


「あれ…?」

 思わず口に出てしまった一言が飛んでいった時、魔素が一気に足りなくなった。

 気づいた時には、地面に落とされていた。アルの魔術によって。自由飛行はおろか、まともに飛べすらしない彼に。


 あー。

 先生も戦い始めた、これはもうきついかもしれないなー。

「…でも、よかった、アルも強くなってて」


 遠くで戦うアルークスを見ながら、ミレイは地面に寝そべった。

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