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神の童  作者: 飛 雪兎
1章 転生後と世界
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第1話「夢と彗星」

俺には夢があった。


 家は割と裕福な方だったが、両親を交通事故で失い、ゲームと研究に溺れ不登校になっているだけのただの17歳の持つ、昔からの夢。


 中学を卒業してから、高校に入ったまではいいものの、結局夢を追って研究し続けて不登校に、終いには休み過ぎで退学処分といったところだ。

 自分としては、様々な仮説やらを立てて検証していく時間ができて少し嬉しいな様な寂しいような感じがした。


 一応今の仮説を紹介しよう。

 結論から言うと、ほぼ不可能だ。


 トラックに撥ねられる?

 通り魔か何かに刺される?

 突然召喚される?

 神に呼び出されて連れてかれる?


 無理だ。


 こんなんじゃ夢は実現できない、まだ諦めるわけにはいけない、だから研究を続けた。

 天文学、医学、物理学、量子力学、地学、化学、宗教、神話、何から何まで調べたが、1ミリも希望は見出せない。


 果たして本当に成し遂げられるのだろうか。

 俺の、『異世界転生』という夢は。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「もう2月か」

 早いもので、退学させられてからもう半年が経ってしまった。


「修都、いるかー?」

 

 玄関の方から、久しぶりに自分の名前が呼ばれた。

 少し頭に響くが、懐かしい唯一の友の声だ。


 彼は小学生からの知り合いで、中学高校と同じで、決して成績が良いとは言えないが、その性格、顔、運動能力のおかげでクラスの中心にいる様な奴だ。


 名は、蒼山匠哉という。


「お前、まだアレやってんのか?」

 こいつは俺の唯一の友であり、唯一俺の夢を知っている人物だ。


「続けてて悪いかよ」

「いや、いつできんのかなーって思って。だって転生だろ?面白そうじゃん!」

「匠哉を連れてくとか以前に、転生自体がまあ無理だろうけどな」

 そう言うと、匠哉は少しシュンとしていた。


「そういや、最近高校はどうなんだよ」

「いつも通りかな〜常に楽しいからな〜」

 続けて匠哉は語る。

「あ! でも変わったことといえば、俺、彼女できた!あと、成績はもっと悪くなった!」


 この言葉を聞いて、何か見えない壁を感じた。

 え、彼女?匠哉に?到底信じられない。

 だが本人の口調からして本当だろうし、流石にリア充を責めるほど俺は心が狭い訳ではない。


「なあ、今から星見に行こうぜ!」

 急に話を変えられた。

 そういえば今日は朝からどっかの彗星が最接近するとかニュースが言っていた気がした。


「まだ午後四時なんだけど」

「いいじゃんいいじゃん、早く行って損することなんてないでしょ?」

 多少強引にでも連れて行くつもりらしい。

 まあここ2ヶ月はまともに外歩いてないし、たまにはノってやるか。


 外に出るまでは良かったものの、光が眩し過ぎた。

「太陽光ってこんな痛い光だったか?」

「修都が外でなさすぎなんだって」


 談笑しながら、もう30分は歩いただろうか。

 歩くだけでもだいぶ疲れた、匠哉によるとこれからちょっとした丘を登るらしい。


「なあ、これどこ向かってるんだ?」

「秘密の場所!」

 俺はどこに行くのかと匠哉に問いかけても、一向にはぐらかされるだけで特にちゃんとした答えは返ってこなかった。

 

 山道が続いている、本当に丘なのだろうか。

「・・・いつ着くんだよ、もう足限界だって」

「あとちょっとだから、ほら頑張れ!」


 地獄のような山を踏破した。

 俺は心に決めた、もう2度とこの山を登らないと。


「なあ修都、ここ、綺麗だろ?」

「……ああ、そうだな」

 その丘からは、電灯によって飾られた、俺たちの生まれ育った街が一望できた。

 綺麗だとは思ったが、特に思い入れがあるわけでもなく、ただ広いなと思っただけだった。


「・・・こんなに広かったんだな、この街って」

「ああ、でも世界はもっと広い」


 少しすると彗星がよく見えるようになってきた。


 その彗星は、まるで世界を平和にさせていくような、すべてを飲み込んで忘れさせるような、不思議で、とにかく美しい、この世のものではないような景色を見た。

 1分が、1秒が、永遠のように思えた。


 後から知ったことだが、この彗星は1024年周期で地球までやってくる、アルテミス彗星というものだったらしい。


「なあ匠哉、異世界って彗星見えるのかな」

「なんでこんな時も異世界なんだよ、少しくらい地球も好きになれこのファンタジーオタク」

「悪いかよ」

「とっとと地球様に謝れ」

 匠哉に言われ、少し驚いたが、こうして話しながら彗星を見れてるこの世界にも好感を持てそうだった。


 その瞬間、彗星に乗っ取られたかのように、俺は意識を失った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ・・・・・・は?

 自分の意識が戻った時には、俺はもう地球、いや現世にはいなかった。

 ただただ広がるのは何もなさそうで世界の全てがありそうな、白の世界だった。


 奥の方にうっすらと人影が見えるような気がする。

 誰なのだろうかあの人は。

 俺が見ていることに気がつくと、神だか天使だかのような歩き方でこちらに近づいてきた。


「やあ」

 その男は中性的な声で、ノイズのかかったような声で突然話しかけてきた。

 もう訳がわからない。

「なんですかここは、あんたは誰ですか」

「やだな〜そんな警戒しないでって」

 ここまでの会話でなんとなくわかった。

 この変な奴、多分馬鹿だ。


「僕は神だ。君には2つの権利がある。」

「1つは同じ世界に新しい子として生まれ変わること。まあ輪廻転生ってやつだね。もう一つは別の世界に記憶を持ったまま転生すること」

「え!?」

 なんだよそんなこと早く言ってくれよ。

 

「よし、詳しく話を聞こう」

「君急に態度変えるね、まあいいや、話そう」

 そう言って自称神は語り始めた。

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