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ショートショートプラザ

僕のサンタクロース

作者: 手塚 英

童話的ショートショートです

僕が学校からの帰り道を暗い顔でトボトボ歩いていると、近所に住む従兄のお兄さんが遠くに見えた。

なんだか荷物をいくつも車に積み込んでいる途中のようだったので、僕は『何をしているんだろう・・』と思い声をかけようとしたとき、お兄さんの方も僕に気づいて先に話しかけてきた。


「どうしたの___君なんだか元気がないみたいだけど?」


僕はドキリとしてしまった、そして少し迷ったけど、今日学校であった事をお兄さんに話す事にしてみたんだ。


実は今日、友達ともうすぐクリスマスだね、プレゼントはなんだろうと話していたんだ、それで僕が「サンタさんが来るのが楽しみだ」って言ったんだ、そうしたら・・・

友達が「サンタなんていない、___君まだサンタなんて信じてるの?」「プレゼントはお父さんかお母さんが持って来てくれるんだぜ」って・・・、それで他の子もみんな「サンタなんていない」って言って・・・

僕、なんだか悔しくて悲しくて・・・

でも僕もサンタさんを実際に見たことはないし、何も言えなかったんだ・・・


僕はお兄さんに思い切って聞いてみた


「ねぇお兄さん、サンタさんはいないって本当なの?」


お兄さんは少し考えてから僕にやさしく答えた


「_______君、友達の言った事は半分正解で半分間違っているね」


そしてお兄さんは、これからする話は大人だけの秘密だけど、___君には特別に教えてあげる、その代わり___君も秘密にしてくれる?と言ったので、僕は絶対誰にも言わないからとお兄さんに約束してサンタの秘密を教えてもらう事になったんだ。


「いいかい___君、サンタクロースは絶対にいる、これは間違いない、でも___君へのプレゼントは友達の言うようにお父さんやお母さんが持ってきてくれるんだよ。」


僕はお兄さんの言葉に混乱してしまった、そして、サンタクロースがいるのにプレゼントは持ってきてくれないことに納得できなかった。


「どうしてサンタさんがいるのにプレゼントはお父さんやお母さんがもってくるの?なんでサンタさんはもってこないの?」


僕が少し強い口調で聞くと、お兄さんはまた僕にやさしく答えてくれた


「それはサンタさんが世界中全ての子供たちにプレゼントを配り切れないからさ、プレゼントはクリスマスの一晩のうちに配らなければいけないのに、世界中には何億人もの子供たちがいる、1分に1人配ったとしても、1時間で60人、10時間かけても600人、どんなにサンタさんが不思議な力をもっていてもこれは無理な話なんだ」

「そこで考えたのが、サンタさんの代わりにプレゼントを配ってもらう方法なんだ、___君の場合はお父さんやお母さんがサンタさんの代わりにプレゼントを持って来てくれるというわけなんだよ。」


僕はすごく驚いてしまった、そしてサンタさんがいる事をうれしく思う反面、プレゼントは直接もってきてくれないことに正直がっかりしてしまった。


「じゃあサンタさんはクリスマスには何をしているの、誰にもプレゼントを配っていないの?」


「いや、もちろん配っているよ」


「いったい誰に配っているのさ」


「お父さんもお母さんもいない子供たちにだよ」



少し間をおいて、お兄さんは僕の目を見て静かに話し出した


「___君、世界には災害や病気や戦争、他にもいろんな事情でお父さんもお母さんもいない子供たちがたくさんいるんだ、この町にもそんな子供たちがいてその施設もある、そういうところにサンタさんはプレゼントを届けに行くんだよ。」




僕はその夜、お兄さんの話を何度も思い返した、サンタクロースの事、自分にプレゼントを持って来てくれるお父さんお母さんの事、そしてお父さんもお母さんもいない子供たちの事を


サンタクロースが自分のところに来てくれないことはやっぱり残念だったけど、その何倍も本当に必要とされる子供たちの所へ行ってほしいと布団の中で何度も思った。














あれから十数年がたった


僕も大人になり、とっくの昔にサンタクロースがどういうものか、お兄さんがどういう気持ちであの話を僕にしてくれたのかも解るようになっていた。


そしてお兄さんがあの時話してくれたサンタクロース自身だったということも。


お兄さんがこの町の施設に毎年クリスマスプレゼントを届けている事を知ったのは、僕が高校生の頃だった。


でもこれからは少し違う、今年から新米サンタが増えたので明日のクリスマスには2人のサンタがプレゼントを届けることになる、最高の笑顔と共に。


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