82話 宣戦布告
「――以前から話していた商店街の一大イベント桜まつりに備えて今日から働いてくれることになった3人で、右からエナ……さん。ルイくん、アヤミさん。ルイくん、アヤミさんはフロアの仕事もしてもらうからみんなフォロー頼むね」
「よ、よろしくお願いします。自分ルイって言います」
「はぁい。よろしく、私はアヤミ。ここに居る女性陣よりは年上だけどあんまり気を遣わず接してもらえると助かるわ」
「私はエナ。マスターの、ドラゴニュートの中でも一番の――」
「ちょっとエナ! あ、はは……。今のは気にしないでもらって。さ、仕事しようか」
ダンジョンから帰ってきて一日。
増えに増えたモンスターと亜人を何とか家で寝かしつけて、今日からこの大人数で経営開始。
イキリ爺やあーちゃんに比べて見た目がほとんど人間だからバイトさんもパートさんも受け入れは容易って感じだけど……。
思ったより、エナがポンコツというかプライド高い感じでちょっと怖い。
「いやぁ流石ですね竜居さん。まさかこの短い期間で3人も。しかも調理場に立てる人材を集めてくるなんて」
「でも、全員中華屋じゃないところから来てもらった感じだから彰君にはまた負担が……」
「今の負担は未来への投資、ですよね? これくらい全然大したことないで気にしないでください」
「彰君……。君は本当にできる子や」
実質個々のNO2の彰君には本当におんぶに抱っこだし、給料上げてあげようかな。
「あの、その3人も増えたのは驚いたんですけど。私、それよりそっちの方が気になってて……。その凄い上等なお肉ですよね? 入社祝いみたいな感じですか?」
「ああ、これは新メニューに使う食材で……。今日はまだ提供しないから、ちょっと食べてみる? 朝ご飯代わりに」
ちゃんとした小籠包を作るために用意していたミノタウロスの肉塊。
自己紹介中だっていうのにパートさんとバイトさんはずっとこれに視線を奪われていて……。
案の定それにツッコミが入った。
まぁ何となくそうなるって分かってたし、そのためにちょっと早めにみんな集めて、生地とかもろもろ用意してたわけだけど。
「あのお肉、もっと美味しくなるの? あ、別にあなたの素敵な料理をた、食べたいとか思ってないんだからね!」
「私は食べたいですよ。一体それがどれぐらいのものなのか、私の海鮮チャーハンと比較してどれだけのものなのか気になりますからね!」
「私も食べたい! 昨日はお預けだったから!」
「当然私も!」
「自分も!」
ぐいぐい来るダンジョン勢に若干押されるバイトさんとパートさん。
でも、控えめにうんうんと頷いてるところを見るとやっぱり食べたかったんだなって分かる。
「じゃ、早く作らないとだな」
全員の速く食べたいって言う顔に応えるため、俺は反応を見るためだけに、自慢するためだけにみんなの前に出していた肉を持って慌てて厨房へ。
肉はミノタウロスの肉をみじん切り。
ネギやショウガ、ニンニク、調味料で醤油、オイスターソース、それに酒を入れて、最後にぷるてんを使って固めたスープのゼラチンをほぐし入れる。
この餡をコム粉で作った生地で包み込んで、ここからがダンジョンで提供したものと違うところ。
フライパンにごま油をしいて、それを隙間なく詰め込む。
焼き色がついたら温めたミネラル汁を入れて蓋。
ダンジョンの素材は早く火が入るから短い時間でこれを開けて完成。
1回でかなりの量を作れるし、やっぱり小籠包でも店頭で売るならこっちがいいよな。
「よし……。喜々快々特性焼き小籠包完成! 熱いから気を付け――」
「ごがあっ!」
「やっぱりやると思ったよ、あんたは」
出来上がったばかりの焼き小籠包を配ると、早速イキリ爺が舌を爆撃された。
エナほどの規模じゃないけど、ざまぁって言いたい。
「ふふ。にしても評判は最高、かな?」
ハフハフと口を器用に使って食べるみんなの顔。
感想を喋れる感じじゃないみたいだけど、顔見るだけで何となく分かるのはすごく嬉しい。
やっぱり店をする限りは金銭が1番。
それは変わらないけど、余裕が出てくるとこういう時間も好きだったことを思い出すな。
そもそも俺が料理野郎ってなったのは親父が料理を作ってくれて、母さんが……。
「母さん……。あれ? 母さん……母さんってどんな顔、だっけ――」
――カラン。
「おはようみなさん! ちょっと早いが……答えは出たみたいね。まったく、残念だよ」
不意に開いた店の扉。
そこには楽しそうに売り子の格好をした真波の画像を見せつける商店街代表桜井さんの姿があった。
「あいつ……。まぁいいか、別に伝えるのが早くなっただけだからな。桜井さん……宣戦布告させてもらいますよ」
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