80話 エナの逆襲
「――門を開け! 食材が……。エナと神様が帰ってきたぞ!」
早々に激ヤバスキルをオフにすると、俺たちは疲れが残るその足で集落に戻ってきていた。
大分時間を食ったからなのか、門番の2人も疲れた表情を見せながら俺たちを食料呼ばわり。
他のドラゴニュートに比べて外で仕事をしている分、体型はまともだけど本質はあの長と変わらないらしい。
そういえばここを出たときにほどほどに食料を置いていったけど、この人たちは食えてないのかな?
「――おおっ! 無事に帰ってきたか! そ、それで、新しい食材、ぐふっ! 3階層はどう、ぐふっ!」
開門早々眼前に映ったのは縛り上げられた長とそれに腹パンするドラゴニュート、さらには俺の置いていった食料を奪い合って息を荒くするドラゴニュートたち。
地獄絵図じゃんこんなの。
米騒動でも起きてんのかってくらい荒れてるんだけど。
「エ、エナ! 良かった、帰ってきたか! もう俺1人じゃどうにも……。こいつら動けないとか散々言っておきながらこんな時ばっかりキレが良くて……ぐあっ!ま、待て! 俺はもう食料持ってないから!」
えーと。
なんでこうなった?
俺が持ち込んだ食料で一先ず危機は去ったんじゃないの?
「足りない……。足りない! ちょっと食ったら余計に……腹減ったんだけど!」
「俺も! だからその肉よこせごらあ!!」
「てめえはその草でも食ってろ、ボケが!」
なるほど、とまらないやめられない状態ってわけね。
ちょっと潤ったから奮発して食べ進めて挙げ句この様とか……滑稽にも程があるだろ。
そんでもって恐ろしいくらい尊厳がなくなっている長はなんであんな目に――
「変な条件なんて出さずにもっと食料巻き上げとけよ! この無能がよおっ!」
「いやいや、でも美味しいもの食べたいでしょ?」
「ふざけんな! 味が良いだけじゃ満足できねえ身体なんだよ、俺たちは!」
質より量はに捕まったと、それは至極真っ当な意見。
だからってこんなことするとか、でぶドラゴニュート恐ろしすぎだって。
ランクは俺の方が高いけど、この数の逆鱗に触れたらどうなるか本当に分からん。
さっきから何人かこっちに気づいて、寄って来てるのとか迫力ありすぎ、殺気ばら蒔きすぎ。
「――みんな落ち着いて聞いて!こほん。私たちは新しい食材、このミノタウロスの肉を大量に持ってき――」
エナがアイテム欄ではなく、卑猥ミサイルに担がせてあった生肉をその手に掴んで掲げて見せた。
するとドラゴニュートは涎を溢しながら一斉にこっちを見た。
そして……。
「それ、よこせえええええええええええっ!」
「じょ、上等な肉だああああああああああああ!」
「ひぃやっほおおおおおおおおおお!」
「エナ良くやった!」
1人が走り出し、後ろも一斉に駆け出す。
ヤバイ。
これ流石にヤバイ。
「……。エナ? お前ら、誰に口聞いてんの? エナじゃなくてエナ様、でしょ? これ、食べたくないの?」
ドスの聞いた声に立ち止まるドラゴニュートたち。
エナ……。ざまぁやるんだな?今、ここで!
「エナ、でもそれはお前がどうのこうのできるものじゃ――」
「私、もうテイムされたから。この肉も仲間としてある程度自由が利くのよ、長」
「なんと……。テイムなどドラゴニュートとしてのプライドはないのか?」
「プライドより大事なものってあるのよ、長。それでね、私が料理屋を手伝うことにもなってる。個人的に。だからこの集落からもうそれを出す必要はない。つまり……交換条件を飲む必要もない」
「……。エナ、お前……」
「気づいた? あなたたちはこのままだとこの肉を食べれないってことに」
……もうこれ悪役じゃん。
それでもってノリノリですね、エナさんは。
「そ、そんな……。馬鹿な! だ、だがなんのこれしき……」
「あはははははははははは! その顔おかしい! おかしいわ長! 食べたい? 食べたいでしょ、この肉。そ、れ、にこの食べ物、小籠包っていうんだけど……」
――じゅる。
「んー! 最高に美味しい! この肉のスープ! どう? 食べたいでしょ?」
「は、ふぁふあああああああ!」
「あはははははははははは! どうしても食べたいなら全員私の言うことを、私の仲間とマスターの言うことを何でも聞き入れなさい! 条件? あなたたちにそんなもの提示するほどの魅力はないんだから!!」
お読みいただきありがとうございます。
モチベーション維持のためブクマ、評価よろしくお願いします。




