73話 ミノタウロス
「――それでなんで私が……許されたんじゃなかったの?」
「別にいいじゃない。だって私たち強いくて、危険なんてないんだから! よろしくね、エナ! あ、だからってまだあなたのこと仲間だなんて思ってないんだからね!」
「ぷぺ」
準備を整えると俺たちは1度集落を後にして3階層へ向かうことにしていた。
その際長がエナを同行させたのだが、この意図はなんとなく分かる。
万が一俺たちがお陀仏になったとしても、少しでも食材を持ち帰れるようにってことだろう。
エナが選ばれた理由は、優秀な側近と天秤に掛けられた結果……かな?
現在3階層階段前。
俺たちとしてはここに来るまで率先して戦ってくれたエナが強力な戦力だって分かって、単純に強力な戦力が増えてくれて嬉しいけど……本人は微妙な気持ちだろうな。
「たまには家でゆっくり料理でもしたかったのに」
「エナは料理できるの?」
「ぷぺ?」
「それなりにね。食べるのはそんなに自信ないけど作るのは得意なの。作る度親が喜んでくれた……から?」
「どうしたの? 変な言い方だったけど」
「な、なんでもない。大丈夫大丈夫。たまにこうなるの、私」
「そう。あ、別にあなたのことなんて心配してないんだからね」
気になる会話だけど、とにかく女性陣たちは仲良くなってるみたいだな。
こっちは……。
「ごが、はぁはぁはぁはぁ……。くっ!」
「だ、大丈夫ですか?」
「ぶも……」
スキルスクロールで抑制されたはずの欲とどうしても煙草を吸いたいという身体の反応の狭間に立たされたイキリ爺がさっきから煙草を咥えては止め、咥えては止めを繰り返している。
涎も溢れ始めて……。
すまん。強制禁煙がこんな拷問になるなんて思わなかったんや。
というかお前まだ煙草止めてなかったの?
「なんか不安だけど……3階層侵入行くぞ。全員このスクロールを使っておけ。……よし。侵入者開始だ」
俺は取りあえず汎用性のありそうなスクロールを全員に使わせると3階層へ。
どれだけモンスターが強かろうが、初めて2階層に踏み入れた時ほどの緊張感はない。
だって今の俺たちは自慢じゃないけど強いから――
「ぶるおおぉぉぉ……」
『ミノタウロス【C-】』
うーん。
今までのギャグテイストとちょっと違いすぎない?
知ってるモンスターだし、目がいっちゃってるよこいつ。
武器とか持ってないからまだ殺意低めっぽいけど、いくらなんでも雰囲気変わりすぎだって。
「ぶるおおっ!」
「ぼさっとしてたらまずいですよ!」
ミノタウロスは血走った目で俺目掛けてまっしぐら。
どうしよ、正面から殴りあうか?
でも絶対あれ痛いし……本気度の高いモンスターにこんなのが効くか分からないけど……。
「『イエロートラップ』」
ミノタウロスが進む道、そこに俺の新しく手に入れたスキルが炸裂。
なんとこのスキル……指定の場所にバナナの皮を発生させられるスキルなんです。
子供騙し? そんなことはない。絶対に転ぶ、引っ掛かる……と思う!
こけろこけろこけろこけろこけろこけろこけろ……。
「ぶるおっ!?」
「おっしゃかかった!! 全員でリンチや!」
「ひぃっやほおおおおおおおおおお!!!」
ミノタウロスが転んだのを確認すると真っ先にイキリ爺が飛び出してスキルを発動。
イキリ爺に渡したスキルスクロールは汗疹のスクロール。
ミノタウロスの身体中に汗疹を作り、陰湿に苦しめる。
そしてついに禁欲の効果が途絶えたのか、そんなミノタウロスを蹴り飛ばしてイキリ爺は煙草に火をつける。
これは屈辱。
別に俺がされたわけじゃないけどすごい腹立つなこれ。
「まだ殺したわけじゃないんだから油断しちゃ駄目! えい!」
可愛い声を発しながら行われるイセの無情な金的。
イセに渡したスキルスクロールは恥部ダメージ増加。
ちょっとご褒美要素あるなとかそんなこと別に思っていたわけじゃないけど、勝手にそれを渡してて……他意はないんだよ、本当に。
「ぶ、ぐあ……」
「まだまだまだまだまだまだまだまだまだまだ――。あ、死んじゃった」
連続で行われる金的に耐えれなくなったのか、ミノタウロスは昇天。
確かに、今までと雰囲気は違う。
違うけど、こっちのコミカル要素のせいでなんかもう台無しだよ。
まぁ勝てるからいいんだけどね。
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